連載第100回記念なので、百式にちなんで選んでみた(笑)。
最初の遭遇から途中の変奏で、如何にもZが出て来そうな対MS戦に入るパートが好きですね。途中でピンチなる曲がかかる辺りは、ジェリドが「死ね。カミーユ!」と迫ってくるシーンで使われてた気がする。惜しい、あそこでカツの妨害さえ無ければ…。
ようやくハツメ以下、俺の護衛が追いついたのとフリード星の王子が神殿より出て行ってしまったのが、ほぼ同時であった。
ハツメは「勝手に行動しないで下さい」と文句を言う。
ま、この機会に乗じて再び誘拐でもされたら、彼女ら護衛陣は大黒星になりそうだから、その批判も分からぬ訳では無いんだけどさ。
「テイルは?」
だが、俺はその陣容の中に侍女長が入っていないのに気付く。
「侍女長はテロンナ様を落ち着かせる為に残りました」
バンダー少尉が答える。
「姉上の為か、なら仕方ないか」
「上空で待機していた主力艦隊が壊滅したので、兄者……いえ、アラーノ中尉も情報収集のために、向こうに留まっております」
追加の報告に、俺は「え?」と我が耳を疑う。
主力艦隊。つまり大王が率いてきた大艦隊が壊滅したって、どう言う訳だ?
「主力艦隊って、ヤーバン軍のそれだよね」
「はい。大王直属の親衛艦隊とブーチン殿下の艦隊、計22隻です」
「となると、フリード星の上空は丸裸じゃないか!」
大型艦は一隻でも凄まじい力を持つ。無防備な星一つなら滅ぼせる程度の戦力を有している。
マザーバーン一隻建造するのに、掛かった費用と労力を考えりゃ分かるけど、上に待機していた艦隊は全てが大型艦では無いにせよ、その損害は天文学的になる。
瞬時に壊滅って、何が起きたんだ?
「とにかく、父上と合流しよう。全てはそれからだ」
取って返した会場ではまだ混乱が収まっていない。
身分の低い招待客は強制的に解散させられ、中庭から追い出されてはいるが、ある程度高身分の者達が「助けてくれ」と王族に泣きついて喚き散らしているからである。
「お願いします。安全な宮殿へと……いいや、脱出宇宙船があるなら用意して欲しい」
あらん限りの財産を手に「お願いだから、自分達だけ特別扱いをしてくれ」と叫ぶが、これは衛兵に銃を向けられて阻止されている。
貴族同士で言い争いも起こっている。
「黙れ、俺の嘆願が先だ。貴様は伯爵。俺は侯爵だぞ」
「血筋から見れば、わしの方が王家に近いぞ。貴様は外様ではないか!」
ふふん、と勝ち誇る伯爵。
フリード星は同族社会であり、確かに身分よりも血縁が優先される傾向があり、身内が良い地位に就くと「身内だからと、何か甘い汁を吸わせてくれ」とばかりにハイエナの様に血縁が集まってくる悪習がある。
血は水よりも濃いのが、優先される社会なのだ。
「ふん、所詮は身内の方が偉いのだよ。わしの言葉一つで、お前の爵位を剥奪するのだって可能なんだぞ」
「な、何だと」
殴り合いも始まった。
同様にフリード王家では無く、大王へと嘆願する奴も居る。
高圧的に要求を述べる者。地面に寝転がって手足を振り回しながら泣き喚き、如何にも自分が哀れなのかをアピールして同情を得んとする者。
いずれも他人なんぞ眼中に無く、自分と身内だけ利益を得ればそれで良いと考える、私利私欲の権化であった。
彼らには公なんぞ存在しない。身勝手な私があるのみだ。
『こいつは拙いな』
外から眺めているだけでもパニック状態であり、万が一、連中が俺の、ベガ王子の存在に気が付いたら、その矛先がこっちに向きかねない。
数の暴力で取り囲まれ、脅迫されるのが目に見えている。
「殿下、こちらへ」
「機転が利くね」
気を利かせたハツメが神殿の奥へと案内する。
逆戻りではあるが、この神像を悪神とフリード星人が忌み嫌うだけあって、群衆が押しかけて来ないとの判断であるらしい。
取りあえず無線を取り出し、迎えを寄越す様に連絡すると同時に情報収集も開始する。
「艦隊全滅の原因ですが……何か、巨大な物体が実体化しかけたそうです」
「巨大?」
石造りの神殿内で、俺はバンダーからの報告を聞いて首を傾げる。
「はい、惑星クラスの物が」
「惑星クラスの物がフリード星の近傍に姿を現す、だって?」
そんな事態になったら、二つの惑星の持つ巨大な質量同士が干渉し合い、ロシュの限界によって砕け散ってしまうだろう。
そうか、先程の地震は『ゴットマジンガー』が起こした物では無く、上空で起こった異変の余波だ。魔神はそれをフリード星の王子に伝える為に……。
「ぼくは君にとっては他人なんだね」
黄金色に輝く巨像に俺は独り言を呟く。
まぁ、彼はフリード星の守護神なんだから当たり前なんだけど、ほら、転生物の物語では転生者って特別な力を持つとか、神の助力があるなんかのチートじゃないか。
俺はそんな物、未だ頂いた覚えが無いから、愚痴の一つもこぼしたくなるんだよ。
「殿下」
「あ、続けてくれ、少尉」
情報を総合すると空間転移して来た巨大質量の何かが、上空の艦隊と重なって物体重合を起こしたらしい。
艦隊は瞬時に壊滅したが、一瞬、姿を現した相手の物体も大ダメージを受けて弾き飛ばされ、この空間に実体化出来なかったのだろう。
実体化していたら、勿論、俺達は地獄への愉快な道中を進んでいた筈である。
惑星壊滅で生きちゃいないだろうからね。
「で、そいつを行った相手は誰かな?」
当然、単なる超自然的な災害の可能性もあったが、先程、魔神がデュークに告げた事実を鑑みると、これは誰かが人為的に起こした物だと思われた。
「大型の母艦が確認されているらしいです」
「ゲルモスか?」
俺は現在の主敵、ガイラー星軍の飛行要塞かと推測する。
しかし、その答えは別物であった。
ようやく、中継用の偵察ドローンか何かがフリード星上空に到達したらしく、生中継で敵の映像が入って来た為である。
「さぁ……何とも」
バンダー少尉が口を濁らせるのは、爬虫類的な頭部を艦首に持った形態は、ガイラー軍の飛行要塞に似ていると言えば似ているからだ。
ゲルモスの姉妹艦か、改良型と行っても通じるデザインラインであるが、規模は向こうの方が大きく、船体が全体的に円盤型をしているので、航空機然としたガイラー軍の物とは少しセンスが異なる様だ。
「敵、機動兵器を射出しました」
「ん……何だか、生物的な奴だな」
そいつはガイラーの空爆ロボとは別系統の兵器に見えた。
機械と言うより生物なのだ。ばかばかしい程、馬鹿でっかいけど。
大気圏を離脱したガッタイガーがそれらと戦闘を開始した時、ようやく神殿の前に迎えのミニフォーか到着し、その戦闘映像を見るのを中断して慌ただしく移動する。
「そうだ。デューク・フリードは?」
「無事です」
返事を返すハツメ。
「マザーバーンの緊急出港準備をさせろ。宇宙港へ急行して彼を支援する!」
デュークは敵らしき存在が放った機動兵器と闘っている。
こっちの援護が間に合うかは分からないけど、孤立無援で闘うよりは、少しでも負担を軽くさせてやりたかったならな。
『しかし、天使か?』
俺はデュークが呟いた言葉を思い出し、頭の中で反芻する。
天使。そんな奴ってダイナミック・プロ系の敵だとしたら、とんでもない存在に決まっているからだ。
いよいよ『デビルマン』辺りが出て来るのでは、と身震いを感じてしまったのは内緒だ。
〈続く〉
約2,800文字。
ベガ王子参戦は次回になります。
でも、デスクこと天使との直接対決はあるのかなぁ?
その前に司令官の黒武者、ではなかったドラグ君との戦いがありそうだ。
フリード星人達の精神が卑しいのは、次回、その理由が開かされるのかも知れません。
ああ、心優しい姫様の慈悲が逆効果に……。