ベガ大王ですが、何か?   作:ないしのかみ

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今回の作業用BGMは『超時空要塞マクロス』から「ドッグ・ファイター」です。
空戦の時に使われた代表曲ですね。如何にも羽田節でノリが良いテンポで「だだだっ」、と旋律が奏でられます。

やっぱり自分としては『マクロス』は最初のTV版なんですよね。作画崩壊とかもあって出来は酷いし、ストーリー面や考証は後番組の方が好きだけど、インパクトって点では「おおっ、やってくれたなぁ」と認めざる得ない。
なお、一番好きなキャラは木下久美子…じゃなかった、シャミーでしたね(笑)。



103(閑話)

「デュークの運命は……」

 

 大気圏外へようやく到着したクインバーンの中で、テロンナ姫の言葉は途中で途切れた。

 一番最後の出撃となったのは、父である大王が身重の身体を心配して「夫と弟たちに任してお前はフリード星に留まれ」と制止した為である。

 しかし、ドン・ランダムから詳細を聞いていた王女は気が気ではなく、遂にデュークを追うべく自分の旗艦を出動させてしまったのだった。

 

「運命は恐らく的中するでしょう」

「言いますね。ドン・ランダム」

 

 テロンナは振り返ると自分の後ろに控える大柄の武官、オストマルク様式の奇妙な衣装に身を包んだ男に冷ややかな視線を向けた。

 

「それがワルガスダーが、いや、正確にはワルガスダーを操る意志とも言える存在から、この私に伝えられた話なのですから」

「今、目の前にある敵の正体が太古の昔、惑星テーラのムー文明を滅ぼした者達と同種の敵である、との話は確かに本当でしたが……」

 

 それは黒衣の武者が話す以前に、目の前のオストマルク人が語った内容だった。

 曰く、この世の中には想像も付かないスケールの二つの勢力があり、互いに宇宙の、いや、次元の覇権を賭けて争っている。

 その勢力は光と闇。白と黒。或いは正義と悪とでも言うべき、互いに共存不可能な物であるらしい。

 数千年前、惑星テーラで起きたムーとドラゴニアの争いもその代理戦争に過ぎず、その元凶である勢力の一つが再び、ムーの後裔たるフリード星人を滅ぼしに現れると。

 

「運命が的中したならば、姫様には準備が必要になるでしょう」

「貴方は、恐魔軍と敵対する側の勢力なのですか?」

 

 その問いを発するのはテイル・テール。ベガ王子付きの侍女長だが、今は成り行きでテロンナの側に居る金髪縦ロールにメイド服の女性だ。

 

「貴女の予想とは違っている」

 

 彼女は〝ワルガスダー〟と呼ばれる集団が、それではないかと疑っているのだ。

 だが、ランダムはそれを否定した。

 

「ワルガスダーはどちらの勢力にも属さず、また、基本的にどちらか一方へ助力もしない」

「では?」

「だから力を貸すのだ。二大勢力とは関わりの無い、貴女方にな」

 

 しかし、ランダムも全てを話す気は無さそうである。

 それ以上、自分達の事については口をつぐみ、何を質問されても曖昧な笑みを浮かべるだけだ。

 

「我らに力を貸すのは、ワルガスダーにメリットがあるからなのですね?」

「それについては是だ。姫君」

 

 ランダムは最後に発せられたテロンナの言葉に頷く。彼が答えたのはそれだけであった。

 

              ◆       ◆       ◆ 

 

 恐魔要塞は進む。

 前司令官の名を取ったマザープラネットと同じく〝ゴルゴス〟との名が付いているが、将軍ドラグはその名を好まなかった。

 同名の前司令を、あの勇敢な武人の姿を思い出してしまうからだ。

 

「恐魔竜〈ベルド〉発進させます!」

「これで八体目か。質を上げたのに容易く破られるな」

 

 足留めの為、使い捨て前提で恐魔竜を母艦から放ってはいるものの、損害が大きすぎるのがドラグにとって不満だった。

 最初の三体で敵の強さを見極め、次からは質を高めた強力なモデルを投入しているのであるが、それでも苦戦しつつ、敵は恐魔竜を打ち破って行く。

 特にあの黄色い敵円盤が強いのが意外であった。

 

「エネルギー反応が桁違いじゃの」

 

 ふひひひと押し殺した様な乾いた笑いと共に、将軍の隣に現れたのは白衣を着た異様な男である。

 

「ノア博士。判るのか」

「計測データから見た数値じゃよ。アズテクの技術を応用して居るのかも知れん」

 

 コブダイの様に異様に頭部の膨らんだ男は「なぁに、心配は要らぬ。いざとなったら、我ら魔竜戦士が相手をしてやるまでよ」と、答えて安心させる。

 

「将軍、間もなく照射空域です」

「おう!」

 

 部下の報告に前を向く将軍。

 スクリーンに映る恒星の姿を見て、ドラグは思わず声を張り上げる。

 

「恐魔竜は?」

「上手く足留めをしています」

「作業の邪魔をさせられては叶わん。追加の戦力を出しておけ」

 

 船体から巨大な照射装置が立ち上がるのを見て、ドラグが命令する。

 

「了解。恐魔竜〈ジグレ〉発進!」

「さて、反陽子爆弾でもあればてっとり早かったのだがのぅ」

 

 進みつつある作業を眺めつつ、博士が頭に差し込んだゼンマイをギリギリと回す。

 

「古代兵器か。しかし、無い物ねだりをしても仕方あるまい?」

「博士、それは我らに対する不満かね?」

 

 ドラグの声に重なった音声はデスクの物であった。

 振り向くと、後方スクリーンに腕を組んだ銀河帝王が立っている。

 

「とんでもない。銀河帝王様」

「この長距離に支援が完璧で無いのは理解しております」

 

 ブリッジに位置する二人の返答を聞き、銀河帝王と呼ばれた天使が鷹揚に頷く。

 もう一人の天使、エンゼは「戦士の存在もあります。急いては事をし損じるのでは……」とも抗議するが、男達はそれを無視した様子である。

 

「戦士か。ゴッドマジンガーと同調しそうな存在は、今のムーにはおるまい」

 

 テーラでの過去は苦い思い出であったが、この宇宙では既に数千年の時が流れている様子であり、ヒノ・ヤマトに匹敵する様な戦士はムーには居ないとの報告が入っている。

 同調する相手が存在しなければ、魔神だって単なる石の巨像に過ぎないのである。

 

「自立的に動けぬ。或いは動けても僅かな力しか有さない魔神など恐るるに足らず」

「戦士は魔神を動かす者とは、限らないのですが……」

  

 諦めた様な表情でエンゼは不安そうに彼らを見詰める。  

 そして、展開の終わったソーラーバスターが作動を開始した。

 

 

〈続く〉 




閑話のベガ以外視点です。
ノア博士は『マシンザウラー』出身だけど、特撮の某コンドル男と戦う化け物一族の博士を混ぜてしまった。

全然関係ないけど『放課後×アサルトガ○ルズ』を読んでたら、新キャラに「葉月ルーペ」って名の少女を作ってみようかなと思い付いた。
勿論、吊り目でストレートロングのばっつん黒髪(笑)。
どんな作品に出るかは判らないけど、名前から日本がある世界だよなぁ。いや、「ルーペ・ハズキ」とか表記したらファンタジー辺りにも出られるかな?

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