ベガ大王ですが、何か?   作:ないしのかみ

104 / 173
今回の作業用BGMは『科学忍者隊ガッチャマンF』から「エゴボスラー伯爵のテーマ」です。本当は『Ⅱ』じゃなくてはならないんだれど、ここはエルン推しで(笑)。
エゴボスラー伯爵が登場するシーンに使われています。しかし、自分は自前のCDを持ってないので、CDサンプルの45秒を繰り返し聴くしか無い(笑)。

世間では『F』ってあんまりシリーズで評価されないけど、作画崩壊は許せないにしろストーリーそのものはハードで好きなんですよ。エゴボスラーファミリーも強いですしね。忍者隊を翻弄する隊員なんかザラに居るし(特にレスラーコマンドが!)。


104

「敵の動きに変化があると?」

 

 最初に異変に気が付いたのは、ギルギルを回収して少し経った頃だった。

 敵母艦から、何やら強烈なエネルギー放射があるとの報告からである。

 

「太陽へ向けて強烈なエネルギーを放ってます」

「探査、急げ!」

「恒星に対する反陽子ビームの放射を確認!」

 

 事務的に飛び交う報告に、俺は『まるで、ソーラーシフターだな』と思わず、昔の某アニメで行われた作戦を想起してしまう。

 

 五人組の忍者が世界の悪魔と戦うアレの、確か第二部だったな。

 太陽に外部からビームを照射するする事で核融合反応を起こさせて、恒星自体を移動させ、敵対星系(記憶が定かではないけど、プロキオンだか何処か)へ恒星爆弾としてぶつける作戦だった。

 まさかそれの再現じゃあるまいと思いつつ、「影響は?」とオペレーターに尋ねた。

 

「恐らく、恒星肥大化です」

「恒星を超新星にでもする気なのかな?」

 

 ぼそりと呟いたが「有り得ますね」との返答があった為、予測を計算させてみた。

 

「中尉、どう思う?」

「昔、恒星破壊砲なる兵器が研究されたと聞いた事がありますが、それに近い物かも知れません」

 

 予測を出すための計算が進む中、俺はアラーノ中尉に問いかけた。

 中尉は随分大昔の事例を出して、その経過を語り出した。

 

「恒星を破壊するだけなら、禁断の反陽子爆弾でもあれば簡単なんです。要は太陽の核融合反応を異常に加速、増進させて恒星の寿命を減らせれば良いんですからね」

「でも、禁じ手だろ?」

「はい殿下」

 

 そう。恒星をぶち壊すと言うのは、つまり太陽とその周りにある星系その物を破壊する事である。敵を丸ごと綺麗さっぱり消す事は出来るけど、幾らヤーバンみたいな征服系の軍勢だって普通はやらない。

 どう考えても不経済だからだ。

 戦争の目的って敵を滅ぼす事では無く、敵の持つ価値ある物を奪う為にあるからね。

 それは土地、資源、インフラや人的資源なんかである。

 

「滅ぼして消し去ったら、元も子もないからな」

「はい。しかし、そう考えぬ大王も過去に居たのです」

「狂王、か」

 

 狂王と言うのはヤーバンでも黒歴史に近い存在である。

 ヤーバンが宇宙を征服、いや統一しようと試みているのはどの時代でも変わりは無いが、その中でもこの狂王と呼ばれた大王は、その正式な名前さえ歴史の上から抹殺された存在であった。

 彼がそう呼ばれたのには、無論、訳がある。

 狂王の目的は宇宙統一では無く、宇宙消滅であったからだ。

 

「知っての通り、狂王は己の意に従わぬ者は全て抹殺しました。

 資源的に有用な存在であろうが、位置的に重要な地政学的星系でもお構いなくです」

「で、恒星破壊砲とは?」

「文字通り、恒星に異常反応を起こさせて、肥大化させて自己崩壊を起こさせる兵器です」

 

 反陽子爆弾を大量に恒星に撃ち込めば、似た効果を起こせるのは判明しているが、その反応は緩やかで星系が居住不能になるまでの時間は最低一年。超新星化するまでは十年単位を必要とする。

 星系は住めなくなるが、それでも猶予時間はある事はあるので、最悪、星系を捨てる犠牲は払うけど、住民は移住による避難だって出来る。

 星系の民を全て移すのには、膨大な恒星間宇宙船が必要になるけどな。

 

「しかし、恒星破壊砲は理論的には使用して短時間で異常核融合を促進させ、敵対星系に時間を与えずに滅ぼせる兵器であったらしいのです」

「脱出する暇も無く、大爆発か」

 

 中尉は頷いたが、続けて中尉の言によれば、それは完成前に開発中止となったのを話す。

 狂王自体が宮廷革命、まぁ、反乱だな、によって王の座を奪われたからである。

 

「恒星破壊砲自体も全ての資料が焼き払われ、存在が無い物とされました」

「そりゃそうだ。関係者も全て処分だろう」

「流石に殺されはしませんでしたが、一生監獄入りです」

 

 ソ連のスターリン時代みたいだな。

 あの時代の科学者が片っ端から収監され、国家の為に研究を強いられていたのは有名だ。

 ツボレフとかペトリャコフみたいな、著名な航空機設計技術者が冤罪で投獄され、獄中で軍用機を設計していたので有名だけど、そのヤーバン版なのかも知れない。

 

「ま、反ヤーバンの誰かに奪われて、その砲口がこっちに向いたら一大事だからな」

「それはそうと、もし、敵が使っているのが恒星破壊砲だとしたら……」

「不味いね。ギルギルの点検は終わったのかな?」

 

 まだ暫く掛かるとの報告が上がり、そして「異常に核融合反応が促進されています」との報告が届く。

 余り当たって欲しくない予想が、敵中してしまったらしい。

 

「急ぐぞ。ブーチンだけには任せておけない」

「ガッタイガーが敵恐魔竜に接触、十一体目です」

 

 また、足留めの戦力か。敵はどれだけ戦力を有しているんだ。

 決して倒せない敵では無いが、一体を倒すのには時間が掛かるし、デュークだって連戦で疲れが出ている筈だ。敵はこうして恒星破壊砲を使う時間を稼いでいるのだ。

 

「殿下。敵の恒星破壊砲の性能は案外、低性能な物らしいです」

「本当か?」

 

 朗報だ。

 

「直ぐさま、超新星化する様な物ではありません。しかし……」

「言わずとも判るよ。今、止めないとフリード星はお仕舞いだ」

 

 嫌な星ではある。しかし。姉上の新たな母星となる所だ。

 やらせるものかと俺は決意を新たにする。

 

「ブーチン達は何をしてるんだ?」

「敵母艦を狙っている模様ですが、足留めを喰らっています」

 

 ご自慢のブーチン獣を繰り出してはいるが、敵もそれに対して対処は万全の様子である。

 

「クインバーンが接近しています」

「姉上が何故。回線を開け!」

 

 ややあって、メインスクリーンに姉上が映る。

 俺は身重の身体なのだから、戦場には出ずに父上と共に後方に留まる様に伝えるが、姉は毅然とした顔で首を横に振った。

 

「デュークの危機なのです。妻として夫を助けなければなりません」

「姉上!」

「戦闘艇の発進準備完了しました」

 

 姉はその言葉に後ろを向いて、「直ちに発進」を命令する。

 直後、クインバーンから小型の宇宙艇が飛び出した。

 

「ワルガスダーの戦闘艇だ!」

 

 馬面少尉の叫びに俺も別のモニター画面に視線を移すと、確かにそれはワルガスダーの黄色い戦闘艇であった。

 俺が直接戦った青い揚陸艇よりも、戦闘力と機動性が上の機体だ。

 何故、それがクインバーンから念う間もなく、反動推進を使わないワルガスターの戦闘艇は、素晴らしい速度でぐんぐん離れて行く。

 

『羨ましいな』

 

 使われている技術は、現在のミニフォーより上だからだ。

 名前こそ同じだが、今のベガ軍のミニフォーは『グレンダイザー』のそれとは異なる物だ。UFOその物の、原作版と違い、反動推進を併用する事で安価に作られているのだ。

 某白い彗星の帝国のデスバ・テーターに近く、恒星間航行能力をオミットし、元々のヤーバン軍の戦闘コマンドよりも安価かつ、戦闘力強化に務めているからだ。

 

「何故、ワルガスダーの船が!」

 

 アラーノ中尉が叫ぶが、それは俺の言葉の代弁だろう。 

 

〈続く〉




約2,800文字。
中々進まない。コミケだの年末年始だのがあるので、次の更新は来年頭になりそうだと、予告しておきます。

恒星破壊砲。『ガルフォース』ですね。
あれ、結構好きでした。但し、『2』位までですね。スターリーフ級とかの小型艦が好みです。戦艦なんかより、小所帯の駆逐艦とか駆潜艇とか、補助艦艇って燃えませんか?
艦長が部署全てを把握しているのが(笑)。
エロンホーフェンとかバヤデールなんかも。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。