ゲーム版の付録CDに収録された曲で、ラテンっぽい出鱈目な言語(「ヤミ語」と呼称)で歌われた曲なんだけど、不思議な感覚で世界観にとても良くマッチするんですよね。ボーカルの佐藤裕美さんの声も相まって素晴らしい。
実は『ヤミ帽』自体は一切のBGMを排した作品で、この曲もイメージアルバムであって本編で使われていないんだけどね。
『ヤミ帽』本編はセイレンが好きだったなぁ(でも、CVのTerrierさんって誰だろう?)。
何故、ワルガスダーの船が……。
疑問は起こるが姉上が騒がない所から、内部で何か取引があったと予想するしか無い。
そうか、ドン・ランダム。
あのオストマルク人の存在があったなと合点する。
「テイル!」
俺はクインバーンの艦橋内に立つ侍女長を呼んだ。
「はい」
「説明をして貰いたい物だな」
「今、直ぐにですか?」
「当然だよ」
スクリーンの中に映る侍女長は姉上の方を向いたが、姉は発言を制止するかの様な手振りで片手を挙げた。
「ベガ、後になさい。今はデュークを助太刀する方が先です」
次に発せられたのは、姉の意外な発言だった。
「……しかし」
「貴方がそれに拘るのなら、我が艦が先行するので針路を譲りなさい!」
姉の旗艦はマザーバーンを追い抜くが如き速度で接近している。
最後尾に位置していたのだが、今、円盤獣の回収で速度を落としたうちの艦と相対位置的にはほぼ変わらない。
「分かりました。今は不問としますが、これには姉上からの説明も期待して良いと言う事で宜しいか?」
「構いません。後にきちんと説明しましょう」
不意に通信が切れた。
真っ暗となったスクリーンは、次の瞬間に画面が切り替えられ、遙か彼方の敵を映し出す。
ガッタイガーと戦う恐魔竜だが、流石に距離があり過ぎてズームしても詳細は良く解らない。
「全速前進。ドローンを射出」
「了解」
命令と共に使い捨ての無人偵察機が幾つか放出される。
「ワルガスダーの事を尋ねなくて良いのかい。王子」
「良くは無いさ。だが、余計な時間を食いたくないのはこちらも同じさ」
頬を膨らませて不満の意を述べる、ゴルヒ・フォック少尉にそう答えてやる。
無論、姉上とランダムの間に何があったのかは気になる。
恐らく、デューク・フリードが魔神との間に交わしていた念波とも、関わり合いがあるのに違いないと容易に想像出来る。
気にはなる。気にはなるが、それよりも最優先なのは恒星破壊砲の機能を妨害する事である。
マザーバーンのコンピューターが弾き出した計算だと、超新星化に必要な時間は24時間程度だが、現在の環境を破壊するのにはたった数時間程度で充分らしい。
爆発はしなくたって、恒星の直径が多少膨らむだけでもフリード星は居住不可能になってしまうからである。
「でも……」
「ゴルヒ、止めろ。殿下の言う事は正論だ」
まだ不満そうな馬面をアラーノ中尉が諫めると、俺に「済みません」と頭を下げる。
俺は「奴らの手の上で踊らされている機分は、確かに不快だけどね」と答えて、エネルギー放射を続ける敵母艦に目をやる。
追いつくのには半時間は掛かりそうだ。
「ギルギルの修理を急がせろ。場合によっては不完全状態でも出撃させるぞ」
「ズリル長官が泣きますね」
「仕方ない。ま、必ずやられるとは決まってはいないさ」
プロトタイプってのは完成品じゃない。
試作と言うだけあって不具合を確かめる叩き台みたいな物で、完璧な機体ではないのはズリルだって理解しているだろう。何しろ、機械なんだからね。
ある意味、生体兵器である恐魔竜みたいな方が、メカ的な物がない分、扱い易いのかもとも思ってしまう。
「ドローンが所定の空域に到達しました。映像が入ります」
報告と共にメインスクリーンが新たな映像を映し出した。
先行したガッタイガーとやや遅れて戦場に辿り着いた弟の艦に、敵母艦がそれぞれ映る三分割画面である。
「ワルガスダーの船は何処だ?」
「不明です。どうも特殊な装備を持っている様です」
ステルス機能でもあるのか、一旦目視で捉えれらなくなるとセンサー類での追尾が困難らしい。
「デュークの護衛でフリード星の警備艦が居た筈だな。見当たらないが撃沈されたのか……」
「いえ、識別信号はあります。ああっ、敵艦前面に短距離ワープ!」
「正気か!!」
叫んだのにも理由がある。
普通、船舶は星系内のみでワープなんて行わないからだ。
ガッタイガーみたいな高級機ならいざ知らず、一般的なワープエンジンは跳躍後の誤差が大きく、転移先の細かい指定が出来ないからである。
惑星上空に出現しようとして、そのまま地上に突っ込むとかも有り得るから、安全の為に誤差を大きく取って転移をかけるのが普通で、これは自殺行為に近い無謀な行動であった。
「でも成功してますね」
「感心する所じゃ無いぞ、中尉」
しかし、この蛮勇はこちらにとっても有り難かった。
上手くすれば敵の恒星破壊砲を無効化出来る一手であり、余りの近さに妨害用の恐魔竜も出ていなかったからだ。
このまま攻撃すれば、敵の目論見を崩壊そせられる。
そう思った時だった。
敵艦から、何かが飛び出てきたのだ。
「な、何だ?」
「大きさは人間ですが……い、いや、質量増大!」
最初は小さな人影だったのだが、それがむくむくと巨大化して行く。
そいつの外見には見覚えがある。
確か、ドラグとか名乗る、黒い鎧を着た敵司令官だった。
「巨大化ぁ!?」
「幻影か」
「いえ、質量計にも反応していますから、現実です」
怒号と悲鳴がブリッジ中を包んだ。
うん、物理法則無視だよねぇ。でも、俺は『マシンザウラー』の敵司令官〝ゴルゴス〟がこの手の巨大生物、生物じゃ無いかもだけど、だったのを知っている。
警備艦はパニックに陥ったかの如く、ろくに狙いを付けないでビーム砲を乱射するが、ドラグはそいつを抜いた剣で尽く受け流してしまった。
オストマルクのソリッドみたいな感じの刀剣なのかも知れない。
〈続く〉
お久しぶりです。
3日に挙げようと思ったのが、所用で一日ずれてしまった。
次回、多分、ドラグ側視点の閑話になります。
ドラグ君大暴れ。さて、彼の操るドラグ恐竜剣を止められるのか?