ベガ大王ですが、何か?   作:ないしのかみ

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今回の作業用BGMは『あずまんが大王』から「風の色マーチ」です。
TVアニメ版の予告用BGMに歌詞を付けた曲ですが、本編で使われていないのにも関わらず、『あずまんが』らしい雰囲気で一番のお気に入りですね。
別れの曲だけど、何処か明るいんだよねぇ。

『あずまんが』本編では最初は榊さんファンだったけど、徐々に神楽に好みが移ってきて不思議でしたね。まぁ、神楽自体が二年生からの編入組だったせいもあるけど、多分、天才肌の榊より、努力家でボンクラーズの神楽の方に好みの波長が合った為なのかも知れない。
褐色肌が好きになったのも、彼女とマーニャと紫ナコのせいだな(笑)。


106(閑話)

              ◆       ◆       ◆

 

 恐魔要塞の内部で、ドラグ将軍は次々と自軍を打ち破るムーの小型艇に驚嘆の声を上げた。

 

「ほぅ、ムー人もやるな」

 

 黄色い小型艇。ガッタイガーだが、が円盤のまま、あるいは分離してロボット形態になって戦う光景が興味深かった。

 

「恐魔竜が不甲斐ないですな」

 

 不満げに語るのは頭でっかちの博士だ。

 足留め用としてバラ撒いているが、本来は一体でも戦略的な武力を誇る兵器である筈なのである。

 しかし、出した機体は尽く、ムー人達の武力に敗れ去っている。

 

「強化が必要ですな」

「サイボーグ化か。敵のアレを手本とするか?」

 

 将軍はムー人に味方しているが、どうやら別の勢力らしい軍勢の繰り出す機動兵器、ブーチン獣を指し示す。

 あれも巨大生物をサイボーグ化したメカニズムであるらしい。

 

「マシンザウラーと同じ手で強化するのは、わしのプライドに反するが……」

「背に腹は、と言う所だな」

「まぁ、魔術団を投入するには時期が早すぎるからのぉ」

 

 ノア博士は「ふひひひひ」と苦笑いする。

 将軍は再び画面を眺め、予備選力の投入を準備させた。

 

「ソーラーバスターは順調に稼働中です」

「時間が掛かりすぎるのが欠点だが、貴様達は良くやってくれた」

 

 将軍が部下に慰労の言葉を掛けるのには訳かある。

 元々、超新星化作戦は本命では無く、惑星を瞬時に破壊するのが不可能になった場合に備えて計画されていた予備の作戦であるからだ。

 ロシュの現界で、ムーの星は今頃、とっくに消え去っていなければならなかったのが、想定外の要因で失敗した。

 

『メンテナンスも不十分なソーラーバスターが、こうして使えるだけでも良しとせねばな』

 

 元々、エンゼ達の星が製作した物であるから、機械的な寿命は長いとは想像してはいたのだが、それでも数千年前の機械だから、やはり不安が無いとは言えない所がある。

 

「時空震、近い!」

「将軍、前方に敵艦が」

「おうっ、特攻のつもりか、生意気な」

 

 恐魔要塞の正面に。ムーの小型宇宙船が現れていた。 

 

              ◆       ◆       ◆

 

 時間は少し戻る。

 敵の機動兵器、恐魔竜と戦闘中のデューク・フリードは後続の警備艦を確認すると通信回線を開いた。

 

「デュークだ。後方の味方艦、応答せよ」

「ざ……ざざっ、こちら警備艦5号。王子。ご無事で……」

 

 ややあって、雑音混じりの通信が入って来る。 

 デュークは他の艦艇の事を尋ねるが、どうやら、ここまで辿り着いたフリード星の軍艦はこれ一隻だけの様だ。

 

「星系内ワープを敢行せよ」

 

 ロボイザーの操縦桿を目まぐるしく動かしつつ、王子は命令した。

 通信機の向こうからは、悲鳴にも似た声が上がるが無視して二度、三度、同じ指令を下す。

 要は「敵艦に肉薄し、恒星破壊砲の機能を停止させろ」との用件だ。

 

「王子、我々はまだ死にたくありません」

 

 弱々しい抗議の声だが、デュークは「フリード星を救う為だ」と認めなかった。

 本当は自ら、ガッタイガーで行いたい作戦であるのだが、こう次々と敵の戦力がぶつけられると、空間転移に必要な計算している暇は無いのである。

 だから、敵をこちらへ引きつけて置く代わり、味方艦にその役目を譲る作戦であった。

 

『ヤーバン軍に要請は出来ない』

 

 この戦いはフリード星の問題である。

 外様であるベガやブーチンに頼る事は、外交上、また道義上からも許されないからだ。

 彼らが自主的に戦闘に参加してくれるのは良いが、こちらの要請を無理に通す事は悪手になってしまうからである。

 ここら辺は、帝王学を習った王子ならではの判断であった。

 

「デューク王子」

 

 恐魔竜の巨大な顎(あぎと)が迫りつつある時、別回線から通信が入る。

 デューク・フリードは戦いの最中であるのを気にしつつも、その回線へと繋げる捜査を行う。

 

「ランダム殿か」

「そうだ。よければこの作戦、拙者が手伝うが如何な物か」

 

 意外な申し出にフリード星の王子は、暫し、言葉を失った。

 恐魔竜、カタツムリみたいな殻を背負った先に、牙の生えた凶暴な頭を頂く相手にロボイザーで四の字固めを掛けている最中であったが、デュークは操作を続けながら通信に出る。

 

「良いのですか、これは貴方とは関係ない仕事だ」

「ありがた迷惑かな」

「いえ、こちらとしても大助かりなのですが」

 

 ロボイザーは恐魔竜の顔面にパンチを繰り出す。

 警備艦の指揮権を要求してきたので、それを許可する旨をランダムと警備艦長に通達すると、ドン・ランダムの宇宙艇が忽然と姿を現して警備艦へと接舷して行く。

 

「君はこの戦いで敵と共に、遥かに異界へと旅立つ」

「それが予言、でしたね」

 

 首を絞める形でホールドし、片手で猛烈なジャブを叩き付けると堪らず敵は血反吐を吐き出した。

 だが、デューク・フリードは容赦をしない。 

 顔が膨れ変形し、更に原形を留めなくなるまで殴り続ける。

 遂に首を折り、頭をもぎ取るとそれを毬の様に遥か宇宙の果てまで投擲してしまう。

 

「それに供は必要だろう」

「貴方が一緒に来てくれると言うのですか」

 

 画面の中で、オストマルクの武官は静かに頷いた。

 デュークは頭部を失い、無茶苦茶に暴れ回っている恐魔竜の本体から距離を取って「グラビティ・バーン!」と叫んだ。

 ロボイザーの秘密装備の一つ、胸にあったカバーが開いて光弾が胸から発射される。

 光弾は敵に突き刺さると内部で大収縮を起こし、一気に敵を圧縮してしまう。

 黒い球が生まれた後、空間がぴかっと光って大爆発を起こす。

 

「ほう、それが発掘した古代武器な訳だ」

「グラビテイ・バーンと言います。敵の内部で超重力を発生させ、物体を現界まで圧縮、潰された敵は核融合爆発を起こして散ります」

 

 フリード星の下層エリアに安置されていた物で、ナノ・マシンによって保全されていた為に機能は万全だったが、重力子光弾を発生可能なエネルギー源が得られず、宝の持ち腐れとなっていた兵器だった。

 しかし、新たに発見された光量子エンジンがその問題を解決し、ロボイザーの必殺武器としてこうして装備されたのだった。

 一回撃つと、チャージに時間が掛かるのでやたらと撃てないが、フリード星の軍部は最強の兵器であろうと太鼓判を押している。

 

「それは、そうと先程の申し出は……」

「冗談では無いよ。どうも女神ラミアの思惑を考えると、事がオストマルクやウエストマルクの狭い範囲に収まらないと実感したのでね」

 

 ランダムは女神が宇宙全体を救う為に、マルクの星々に我々を配したのではないかとの述べる。

 デュークは余りにも途方も無く、壮大な話に眩暈すら覚えたが、愛する者を守る為に命を捧げる覚悟をした男が、冗談を言う様な輩では無いのを理解している。

 ならば、彼の述べた事も真実に近いのだろう。

 

「本当に良いのですね?」

「うむ、君も王子ならば闇と光、白と黒の戦いにを投じる覚悟を決めたまえ」

 

 ぶるっとデュークは身を震わせた。

 彼から聞かされた予言は、まだ最悪の物では無かったが怖いと言うのが本音である。

 その一方で、柵から逃れられるのではとの希望もあったからだ。

 

「作戦を開始するぞ」

 

 デュークははっとなって、慌てて前方を見据えた。

 敵の足留め用機動兵器のお替わりが、丁度射出された所だった。

 

 

〈続く〉




約2,900文字。な、長い。本当は閑話はこの一話だけで終わりにしようと思いましたが、次も閑話になりそうです。済みません。

ロボイザーの必殺武器を設定しました。
設定図見ると両胸の所に、如何にも何かを発射出来る様なハッチがあるんだよね。
『グレンダイザー』同様に反重力ストームとかも考えたけど、「あれ、重力制御出来る技術があるんだったら、超重力兵器ってのも造れるんじゃね?」と考えてこうなりました。
元ネタは『でっかい鉄人17号』のあれですね。あれと同じく、やたらと連射は出来ませんけど(やると、どっかのドクロ首相自慢のボ連の機動要塞になってしまう)、ある意味凶悪ですね。

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