ベガ大王ですが、何か?   作:ないしのかみ

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今回の作業用BGMは『名古屋鉄道』の「ミュージックホーン」です。
元祖パノラマカーがダンプキラー(ダンプと衝突して文字通り跳ね飛ばし、列車は無事かつダンプは大破)した時に「どけよホーン」と呼ばれ、名鉄が2016年に特許出願申請も行ったけれど却下されたアレですね。え、曲ですらないですって?
いや、ようつべでリピートして連続で聞いてたらハマった(笑)。

正式な歌詞は存在せず、沿線住人が勝手に付けた幾つもの歌詞があるけど、私的に一番好きな「どけよ、どけよ、殺すぞ。どかなきゃ、ひくぞ」(でも、こいつが一番有名)の歌詞は、道路併設橋時代の犬山橋を知らないと理解出来ないかも。
凄いよね。自動車やバイクと一緒に路面電車でもない鉄道が路上をばく進する光景は(笑)。
電車の進路上からなどかなきゃ、確かに殺されそうですなぁ。
江ノ電の江ノ島-腰越間でも見られるけど、車両が小型だからあれほどの迫力が無い。


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              ◆       ◆       ◆ 

 

 俺は目を疑っていた。

 いや、その場に居る全員が目を疑っていたと言っても良いだろう。

 

「将軍と戦っているのは、ドン・ランダムか?」

 

 思わず口にしてしまった程だ。

 日本の着物にも似た服装に身を包んだオストマルクの男と、トリケラトプスを思わせる顔貌の鎧姿の敵との一騎討ちは、現実とは思えなかったからである。

 射出した無人機が送る映像が正しければ、これはリアルタイムで行われている光景であった。

 

「ワルガスダーの手先が、何故……」

 

 アラーノ中尉の呟きも分かる。

 奴はワルガスダーに取り憑かれていた筈で、ワルガスダーは先のマルク本星事件で俺達、すなわちベガ星と敵対していた相手であった。

 それが、何故、フリード星を救おうとするのかが謎であったからだ。

 

『姉上やデュークに問い質す必要があるな』

 

 敵母艦の上で、互いに白刃を振るいながら一歩も退かない見事な攻防を見せる両者。

 それを確認しつつ、俺はこれ以上のスピードが出ない現状に苛ついていた。

 星系内では空閑に漂う星間物質の密度が濃い為に、外宇宙速度よりもどうしても速度が低くなるのである。

 これは船体が大きい程、顕著になる。

 無論、それでも軍艦は民間船よりも安全係数を大きく取ってあるとは言うものの、どんなに急いだとしても戦闘空域への到着は20分以上掛かりそうだ。

 

「ガッタイガーは?」

「恐魔竜を躱しました。後、数分で敵母艦に接敵します」

「良く躱せたな」

 

 俺は感心する。

 

「ブーチン殿下が肩代わりをした様です」

「デュークからの要請か?」

 

 ガッタイガーを妨害しようとした恐魔竜は、横合いから弟の軍勢に邪魔を受けたらしい。

 ブーチン獣。何か、巨大な鼠みたいな奴を恐魔竜にけしかけて、ガッタイガーから攻撃をそらしたみたいである。無論、奴の旗艦や配下の戦闘コマンドも前線の一翼を担っている。

 

「……らしいですね」

「後で外交的にハンデを負いそうだけど、そうも言っていられないか」

 

 情報担当士官からの報告に俺は唸った。

 自国の危機はなるべく自国で解決し、他国にその問題を介入させないのは基本だ。

 助力を受けた見返りに、担当国が後で何を言ってくるのか分からないからである。

 ヤーバンの場合、「宇宙的問題に対応出来ぬ未熟な国家だから、我々が統治してやる。国家主権を寄越せ!」との難癖を付けて、力を背景に属国へと落としてしまった例もある。

 

「我がヤーバン軍も主力艦隊壊滅で、被害を受けてるからそれ程、無理は言われないだろうけど」

「ブーチン殿下ですからね」

 

 アラーノ中尉の言に苦笑する。

 弟の事だ。重箱の隅を突く様に、この要請から奪える物を抜かりなく計算しているに違いない。

 ブーチンの副官、ダントス少将ならそこら辺に容赦は無いだろう。

 

 その間にも剣戟は続く。

 映像だけで音声が無いのは仕方ないのだが、彼らは互いに会話を交わしている模様だ。

 内容が知りたくて歯噛みする。だが、俺にはある思いが浮かび上がって来る。

 

『こいつ……どっかで見た事が……』

 

 ランダムと剣を交える黒衣の将軍に、オタク知識が呼び覚まされたからだ。

 ダイナミック系で……、ああっ、こいつは『ドラグ恐竜剣』のドラグ万竜じゃないか!

 

『でも、そうなると作品がクロスオーバーしてやがる』

 

 『ドラグ恐竜剣』は恐竜が絶滅する事無く、進化して地球の支配者になった世界を描くSFである。ダイナミック系でもマイナーな作品だが、名門、ドラグ流剣法を受け継いだ剣豪、主人公のドラグ万竜が師の仇を捜して旅をする流浪する物語だ。

 無論、恐魔竜を繰り出している『マシンザウラー』とは作品的に無関係であるのだが、今、戦っているドラグは『マシンザウラー』の司令官、ゴルゴスの鎧を着込んで立ち回っている。

 そして虎柄になった将軍。

 アレはもしや『電送人バルバー』じゃあるまいな?

 

 まさかとは思うけど、デュークが呟いていた〝天使〟ってのは『マシンザウラー』の銀河帝王デスクロスだけじゃないのか?

 更に別の作品がクロスオーバーしている自体を想像して、俺は身震いした。最悪『デビルマン』サーガ辺りがやって来たら、現有の戦力で対抗可能であるのか怪しいからだ。

 一応、ヤーバンを含む、この世界の基礎技術は科学である。

 いや、光量子エンジンがそれを覆しているのは認めるよ。でも、決してオカルトではない。

 別次元、つまり『デビルマン』の世界はそんな我々の常識から外れているのだ。

 

『そんな存在が、突然、この世界に現れたら……』

 

 俺が危惧するのはそれだった。

 有名な〝高度に発達した科学は魔法と区別がつかない〟と言う文句があるけど、それでも物理法則自体が通用しない様な相手を敵に回すのは危険すぎる。

 いや、劇場版の『マジンガーZ対デビルマン』じゃ、ちゃんと悪魔にも光子力ビームとかは効いているから、心配しすぎって向きもあるけどさ。

 

「ガッタイガーが戦闘空域に到達!」

 

 報告が上がり、俺ははっとして視線をそちらへ移した。

 黄色い円盤が、矢の様な速度で恐魔母艦へ迫りつつある。

 

「阻止出来るね!」

 

 ゴルヒの歓喜を込めた声が上げる。

 だが、隣のアラーノ中尉は首を振って「阻止攻撃が来るぞ」と指摘をする。

 途端に母艦表面から砲座らしき物が出現し、フリード星の王子へ対空砲の嵐が注がれる。

 

「恐魔竜の用意は出来なかったにせよ、敵にだって数分の余裕があるんだ」

「成る程、馬鹿じゃないって話か」

 

 ゴルヒは手に汗を握りながら、ガッタイガーの動きから目を離さない。

 先刻の警備艦の出現は突然だったから、リリーフとして敵の将軍が飛び出して来たけど、今回は準備万端で待ち構えていたに相違ない。

 

「でも、見れば見る程、凄い剣技の持ち主です」

「ハツメ?」

「敵のドラグ将軍もそうですけど、ドン・ランダムが」

 

 今、メインスクリーンは分割されて、攻撃を躱すガッタイガーの他にランダムらの決闘と、幾つか他の場面が投影されている。

 シャーマンの侍女は「この戦闘を数分間続けている方が、あたしにとっては異常なんです」と述べる。

 

 互いに目に見えない様な速度で剣を繰り出しているかと思えば、ぴたりと制止して対峙を続けたり、刀を打ち合わせて鍔迫り合いをしていたりする。

 緩急を混ぜながら決闘している二人のレベルは、ハツメに言わせると既に人間業とは思えないらしい。

 

「ハツメなら、ドラグ将軍相手に戦線を支えられるのかい?」

「無理です」

 

 即答であった。「ヨナメ様ならまだしも、あたしだったら一分と持たぬ間に斬り殺されてしまうでしょう」との答えに、デュークを戦場に到着させる間、時間を稼いだランダムは人間離れした剣技の持ち主であるのを、俺は確信する。

 

 そして迫るデュークに気が付いたドラグ将軍はガッタイガーへと向かおうとしているが、ランダムはソリッドを煌めかせて、それを牽制してしまう。

 もしかすると巨大化の技も、途中で斬られると無防備になってしまうのかも知れない。

 

「やった!」

 

 誰が叫んだのか、声が上がった。

 猛烈な砲火を回避しつつ、ガッタイガーがニードルシャワーを浴びせ、恐魔母艦の艦首に屹立していた恒星破壊砲を撃破したからだ。

 砲は輝きを止めると、ややあって台座ごと吹き飛んだ。

 ガッタイガーの攻勢はそれに留まらず、敵艦のあらゆる場所に攻撃をぶち込んで行く。

 

「敵対空砲が沈黙!」

「敵艦の動力系に異常発生。暴走している模様」

「王子、敵からの通信です!」

 

 次々入る報告に味方が快哉を上げている中、俺は「スクリーンに回せ」と命令した。

 ぱっと、爬虫類顔だけどハンサムな、ドラグ将軍の顔がアップになる。

 

「ムーの者共よ。我は一時撤退する」

 

 ドラグはランダムの武勇を褒め、「まさか駄民に、あれだけの勇者が存在するとは想定外であった」と己の迂闊さを悔いた。

 つまり、相手を舐めて、ランダムをたちどころに斬り捨てられる相手だと踏んでいたらしい。

 ちなみに駄民(ダミー)とは、『ドラグ恐竜剣』において恐竜人類が我々ヒューマノイドに対して呼ぶ蔑称である。あの世界では人類より、恐竜の方が強く偉いので、人類は彼らの下に置かれている為だ。

 

「だが、貴様らムーの民を許す訳には行かぬ。

 不本意ではあるが、我が有する最終兵器にて貴様らを抹殺する」

 

 ドラグ将軍は不敵な笑みを浮かべると「さぁ、可能ならば、その命尽きるまで抵抗して見せよ」との言葉を最後に、通信が切れた。

 恐魔母艦から、それが飛び出したのはその直後の事だった。

 

 

〈続く〉




約3,400文字(おい!)。
そして遂に第108話。煩悩の数ですね。煩悩かぁ……。年明けから不幸が続いて、もう喪服は着たくない作者です。

これからは五日に一度更新が続くと思います。
週一更新が最低限の目標だったので、基準は満たしてるけど済みません。

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