主に戦闘曲ですね。剣戟が主な『エスカ』の音楽の中で、竜撃隊壊滅の時に使われていた印象が特に強いです。オペラっぽい旋律でコーラスが流れ、突き放つ様に終わるのが無慈悲な感じでぐっと来ます。
『エスカ』自体は単品でしか展開出来ない(続編は作って欲しくない)作品で、独特にイメージがあって好きでしたね。珍しく主人公のひとみに肩入れ出来る作品でしたが、個人的にはエリーズ姫のファンでした。まぁ、一番好きなのは「さぁ、久々に遊ぼうじゃないか、バァァァァン」「燃えちゃえぇぇぇ!」のセレナ(?)さんだけどね。
そいつはカプセルだった。
巨大な恐魔母艦の内部ドックから切り離されたそいつは、視覚的なスケール感で測ると小さいと見誤りそうだが、大きさはかなりでかい。
しかし、そいつは射出されてから暫くすると破裂した!
「うおぉぉぉぉ!」
ガッタイガーから響く、デューク・フリードの驚愕の声。
無論、マザーバーンからもどよめきの声が上がった。
「な、何だ。こいつは?!」
「戦艦か」
そう、戦艦。
全体的な大昔の水上戦闘型のそれに似た黒いシルエットだが、各所からは不定形をした拗くれた角状の突起が飛び出しており、アン・シンメトリーなごちゃごちゃした形である。
まるで、土台の上に職人が勝手に様々なパーツを継ぎ足し、無計画に外へ外へと伸ばして行った感じである。突起は複雑に絡み合って、まるで蜘蛛の巣の様に外観を覆っていた。
そして、驚いた事にその全長は十数キロに達している。
「物体縮小技術だな」
「王子、それは?」
俺は尋ねて来たハツメに説明する。
かつて、巨大な物体を遥かに小さなカプセルに詰めて運ぶ技術が存在したのだと。
「そんな事が……」
「僕も実際に目にしたのは初めてだけどね」
七つの竜玉を集める有名な漫画に登場しているから、その概念を知っている者は日本にも多いだろう。
でもこの世界にも、かつて、そう古代にはそんな技術があったらしいのだ。
古代遺跡に記された記述であり、誰も本気にしていなかったと言うのが現実なんだけど、今、奴らはそいつを使って戦艦を元の大きさに戻したのだろう。
「ムーの者共よ!」
ドラグ将軍の声が再び響く。
恐魔母艦はあちこちから火花を散らして、かなりの損傷を負っている。
「これが我が最終兵器〝怪物戦艦オリオンの虎〟だ!」
将軍の叫びと共に、巨大な宇宙戦艦はゆっくりと針路を変更した。
艦首の先には先程、無力化されたフリード星の警備艦がある。
「見よ!」
オリオンの虎と呼ばれた巨艦に対すると、小さな、と言っても100mは越えている警備艦が、トラクタービームか何かによって、戦艦の艦首に開いている巨大な口のようになっている開口部へと吸い寄せられると、あっと言う間に〝喰われて〟しまった。
「ははははっ、我は撤退するがこの星系はもう終わりだ。虎によってあらゆる物は食い尽くされるだろう!」
『ちょ、一寸待て。〝オリオンの虎〟だってぇ!』
俺のオタク知識がその単語を捉え、戦慄が走る。
「何を馬鹿な、巨大なでくの坊如きに!」
そこへ横合いから乱入してくるのは、我が愚弟ブーチンだった。
ご自慢のブーチン獣を先頭に、戦闘コマンドの編隊と旗艦のプリンツブーチンが続く。
「死ねよ!」
旗艦のベガトロン砲がオリオンの虎へ一斉砲火を放つが、伸びた火線は全て敵艦から張り巡らされた、蜘蛛の巣のようになっている突起に阻まれ、本体には殆ど到達しない。
一軒、無用なオブジェに見えたあれも、見方によっては防御壁として有効なのかと俺は感心する。
「無駄だ」
せせら笑うドラグ将軍に、愚弟は歯噛みをしながら「あの網をかいくぐって、敵本体へ打撃を与えろ!」と命令し、それを受けた編隊が果敢に突っ込んで行く。
突起の生えている間隔は不定で、上手くやれば小型機ならば間をくぐり抜けれるだろうけど、俺から言わせると無謀な命令だ。
しかもうちのミニフォーみたいな無人機じゃないから、失敗すればそれは即死亡である。
「見ちゃ居られないな」
案の定、突起にぶつかって自爆する機体が続出する。
それでも少数の機体は妨害をくぐり抜け、ミサイルで虎の甲板を爆撃しているが、余り有効打になっている様には見えない。
ブーチン獣が手足を使って器用に敵艦に辿り着くが、その時点で敵の反撃が開始された。
「敵艦の装甲が展開しています!」
「主砲らしき物は動いていないけど……」
俺の指摘にゴルヒは「必要ないと判断してるんだろ」と返す。
敵の甲板上にある、戦艦の主砲みたいな砲塔はぴくりとも動いておらず、代わりに登場したのは甲板下から続々と登場した副武装らしき、四角い箱形の何かだった。
「敵艦発砲!」
「うわぁ、メタルストームかよ!」
またオタ知識からだけど、そうとしか思えない凄まじい光景がここで展開されたからだ。
瞬時に、まるで引き裂かれた様に蜂の巣となってバラバラになるブーチン獣。
飛び回っていた円盤も、ハエの様にバタバタと落とされる、いや違った、文字通り粉砕されてしまったのだ。
「メタルストーム?」
「しかも、俺の知っている奴よりも大口径だ……」
馬面が訝しげに聞いてくるが無視だ。
無論、俺の知っているそれとは大きさも規模も遥かに巨大なんだけど、メタルストームとはオーストラリアのメタルストーム社が開発した36連装の重機関銃だ。
こいつの凄い所は、毎分百万発と言う悪夢か、冗談の様にしか思えない弾を連射する事である。
勿論、この発射速度は人類史上最多であるのは言うまでも無い。
しかも、目の前の奴は艦砲並みの大口径弾を放つ機関砲で、リボルバー式に一基が撃ち終わると、代わりのランチャーが回転して出て来る仕組みになっているらしい。
撃ち終えたランチャーは、当然、甲板下で交換されているのだろうと想像出来るし、何より、ざっと見た限りで甲板には何十基とそいつが現れている。
『幾らブーチン獣でも、20cm砲クラスの弾を一瞬で数百万発喰らってしまえばなぁ』
1、2発ならまだしも、そんな火力が集中したら耐えられる訳は無い。
次元断層とか特殊な物でも無い限り、バリアーを張っていようが、こいつの飽和攻撃の前には為す術かないのだが、幸いにして敵を護る防壁である蜘蛛の巣状の突起は、こちらへの射線も妨害してくれている。
宇宙空間では弾丸は減速しないので、あれを撃たれたら危ないのだけど、一応、俺は胸をなで下ろした。
「ふはははっ、さらばである!」
「恐魔母艦、転移しました」
「ワープ軌跡をトレース。行き先を掴め!」
アラーノ中尉が叫ぶ。
「時空震確認。これはワープではありません!」
「次元転移とでも言うのか!」
ワープにしては不思議な軌跡を残して、敵の母艦が忽然と姿を消した。
次元転移。つまり、この時間軸がある宇宙から消え失せたのか。
しかし、奴の遺した巨艦は依然としてあそこに鎮座している。
「こっちが戦闘空域に到達するのは?」
「推定で、15分後です」
その返答に俺は焦った。
あれが本当に〝オリオンの虎〟だとすると、本当にこの星系は……。
〈続く〉
約2,600文字。
メタルストーム重機関銃。その巨砲バージョンです。
動画で試作品(ライフル弾クラス)の発砲シーン見たけど、威力が半端ない。元会社も40mmバージョンとかも企画しているらしいんですが、一気に艦砲クラスまで拡大化してみました。
規模がでかすぎて、ここまで大口径化は無いだろうと思うけど、ベースが長さキロ単位の戦艦だし、まぁ、ありかな、と(笑)。
これが出る小説って、あんまり無いんじゃないかな。