ベガ大王ですが、何か?   作:ないしのかみ

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ベガが開き直りました。
まぁ、男の娘路線で行くんだから、姫化も仕方無しですよね。
このまま行けば、島津冴子さんが演じた某『重い金属L』の惑星王朝の人になりそう。
しまった。ベガの瞳をオッドアイに設定しておけば…(笑)。


フリード星編
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「まぁ、良くお似合いですよ」

 

 とは秘書のテイルの言。

 テイルは古代ギリシャ風のドレスにエプロンを掛けている。

 これがメイド服と言うかお仕着せになる。

 髪は結い上げて、後ろにまとめて縦ロールにしてある。

 身長は俺とほぼ変わらない小柄な体付きだが、手足に筋肉が付いており頑強そうだ。

 ああ見えて、護衛の役割もあるからである。

 

「一応、姉上の見立てだからね」

 

 俺は答えた。

 うん、今日は外出するからお洒落してるんだぜ。

 ノースリーブの白いミニドレスに青いビスチェを付けて、紗のサッシュで胴を巻いている。

 背には紋章入りの白い短ケープ。頭には銀のティアラだ。姉上の見立てだから可愛いぞ。

 

「宇宙へ行くんだから、スペーススーツとかの方が良いんじゃないのかな?」

「あら。いけません。可愛らしさが台無しになってしまいますよ」

「まぁ、この路線で行く事を決めたから、宣伝効果も考えなきゃ駄目か」

 

 俺は可愛いと評価されるなら、これを逆手に取って美少女系姫王子で行く事にしたんだ。

 今更、漢臭く蛮勇を前面に出してイメチェンしても、今までの評判が変えられないんだったら、アイドル路線で売って行く。

 漢臭いのは、既にブーチンがやってる事だしな。二番煎じじゃ分が悪い。

 まぁ、「あら、殿下が可愛らしくて誰が困るんですか?」とのテイルの策に乗った訳だけどね。

 

「しかし、疑問も出てくるな」

 

 前から思ってたけど、フリード星もそうなんだが、何で科学が発展した星なのに、こうしたひらひらの古代風の服装なんだろうね?

 それを告げると、テイルは口に人差し指を当て、「古代文明からの伝統ですから」と呟く。

 

「古代文明?」

「ええ、ベガ星には元々古代文明があった。それは宇宙の多く、ヤーバン星やフリード星の祖先だったって説ですね。

 今のベガ星人は、古代文明期にこれらの星へ移住した際、取り残された人々だったと…」

 

 ほぉ、そいつは初耳だ。

 俺の中にあるベガの知識にも無かった話だな。ヤーバンによって植民地化された星だとばかり思ってたんだが。

 

「君はそれに詳しいの?」

「いえ、あたしの双子の兄が研究していましたけど…」

「何時か会って話が聞きたいもんだ。テイル、それを伝えておいてくれ」

 

 色々と興味深いけど、俺はこの話を打ち切った。

 俺はこれから出掛けなければならないからだ。

 行き先はフリード星。今度、姉上が友好親善の為に向かうとの話を聞きつけ、「是非とも同行させてくれ」と頼み込んだからである。

 俺はフリード星を直接見てみたかったからだ。

 幼少の頃、姉のテロンナ姫はヤーバンからの友好親善の証として、フリード星へ派遣されてそこで育った経緯があるのだ。

 そう、フリード星の王子デュークと幼馴染みであり、婚約者でもあった。だからどんな奴か、是非とも会ってみたかったんだよ。

 

「婚約者の顔を見たいって頼んだら、あっさり許可が下りたよな」

 

 俺はテイルを連れて専用車に乗り込んだ。

 水晶宮から宇宙港まで三十分。

 お忍びではないので、前後に装甲車とか護衛用の車両が張り付いて物々しい。

 港で同行するズリルと合流すると、既に停泊している姉上の旗艦、クインバーンへの船上の人となる。

 

「姉上、世話になります」

「まぁ、相変わらず可愛いわね。ベガ」

 

 船内での姉弟再会。

 ああっ、姉上、綺麗だけどその厚化粧は損してるよ。特にアイシャドウが濃すぎ。素は可愛いんだから勿体ない。ナチュラルメイクで良いのにさ。

 

 クインバーンは飛び立つ。

 姉上の領地であるルビー星からベガ星に寄港。そしてフリード星ヘだ。

 王族専用艦だけあって設備も良いし、でっかい。

 

「ぼく専用艦が欲しくなるな。ズリル」

「ミニフォーの母艦でしたな。設計だけは済ませております」

 

 俺は船室でズリルと会話を交わした。

 彼はデータを持参してきて、船内にある据え付けの個人用コンピュータで情報を開示する。

 

「マザーバーンだね」

「ほぅ、そう言う名にしますか」

 

 『グレンダイザー』でお馴染みの超大型円盤の図面がそこにあった。

 このクインバーンよりも規模は大きい。ミニフォーを四十機。更に四体の円盤獣をも搭載する堂々とした……まだ絵に描いた餅だ。

 くそぉ、何時になったら建造できるんだろうな。

 

「それにしても…」

 

 常々疑問に思ってるんだけど、ベガ星を含むヤーバンにはモバイル、いや、携帯用のラップトップパソコンすら存在しないんだよな。

 これにはズリルも困っているらしく、例の眼帯式の携帯ミニコンでも作ろうかと言っているが、多分、水かきみたいな飾りの付いた変な帽子もセットだから、個人的に余り勧めたくは無い。

 俺は地球の携帯やモバイルに相当する物の概念を、「あったら便利なのだが」とズリルに伝えてみたら、ズリルが神妙な顔になる。

 

「そんな物を普及させたら、支配体制が崩れますよ」

 

 部屋に響くのは第三者の声。

 今まで何処に身を隠していたのだろう。声の主は工科大でズリルの横に居た女だった。

 

 

〈続く〉 




テイル・テールの外見は、中華料理屋の看板娘と日夜戦う、神無月なパン屋の娘がモデルです。CVは小清水亜美。
口調は「ですわ」系じゃ無いけどね。
やっぱり、クナイ投げなんかが得意なんだろーか?

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