日系二世を主要テーマに据えた珍しい大河ドラマで、教科書に載ってる様ないわゆる偉人ではない、一般市民が主人公の珍しい物でした。
まず、日食の黒い太陽が現れて、延々と強制収容所が建てられたアリゾナの砂漠にありそうな一本道を進む、殺伐としたOPフィルムが印象的ですね。
1984年、大河ドラマの基本は時代劇と言うフォーマットを、最初に打ち破った現代劇(でも太平洋戦争期)ですね。翌年(明治期)、翌々年(昭和期)も現代劇になるんですが、その後、時代劇に回帰して2019年現在、オリンピックを話題にした大河が放映されているのはてご存じの通り。
フリード星の王宮にあてがわれた部屋は皇太子妃としてそれなりに贅が尽くされた物であったが、メインの中央部から大分外れの位置にあって、人通りも少ない離宮的な建物であった。
やはり外様故に、フリード星の政治に関わって欲しくないのか、夫である先代デュークが居ない今、王族政権の中心部から外された、お飾りの一員との形になっている。
「まぁ、予想は付いておりました」
姉上は快活に笑う。
デュークが失踪後、自分がフリード星でどう扱われるかは予想の範囲内であったらしい。
だから、離宮建設が開始された時に、この建物に自分の思惑を多く仕込んだのである。
様式がフリード星とヤーバンの折衷様式になっているのもその為だが、父、ヤーバン大王の威光を背に、建築の陣頭指揮を執ったのである。
「まぁ、父上か結婚祝いに離宮を贈るとしたなら、フリード王だって認めざる得ないですからね」
俺は指摘する。そう、外交的力関係である。
大王が娘の為に建設を請け負うと言えば、立場の弱いフリード側も断り切れない。断ったとしたら。ヤーバンに対する反逆かと訝られるからだ。
「その為に子供を産むまでに立派な離宮が完成しました」
「突貫工事でしたからね」
デュークが失踪後、姉は昼夜兼行でこの離宮の建設を行った。
完成した建築物は外観こそシンプルで、飾り気のない離宮の姿をしてはいるが、医療施設、防衛機構、対爆シェルターも備えた、ある意味、自己完結した独立施設だった。
小さな要塞みたいな物で、歩兵が相手なら攻められても籠城すれば、一年は持つ様な備えが施されている。
「だからこそ、です。フリード星人に産まれた子供の事を隠すのが可能になりました」
「姫の事ですね?」
姉は頷く。
今は育児室ですやすや眠っているが、デュークと同時に生まれた子供、デュークから見たら妹の存在はフリード星人に知られてはならぬ秘密だったのだ。
◆ ◆ ◆
出産の際に離宮の医務室を使い、ヤーバンから派遣された医師団を使ったのは、父であるヤーバン大王の意志だった。
フリード星人に任せると、母子共々、暗殺の危険性があったからである。
未だフリード星人にとって、外様である異星人を王家に入れる事の反発は根強く特に純血を旨とする過激派の動きは活発であったのだ。
保護主であり、安全弁でもあった先代デュークの存在がなくなると彼らの活動は活発化して、宮殿内でも無事に過ごせるか疑問となってしまったのである。
「王妃の一派ですね」
手術室の外で待つテイルが呟いたが、フリード星の王妃は毒婦であった。
元々、デュークとの婚姻には最後まで反対していたし、婚約者として姉が留学していた時にもあの手、この手をを駆使して姉を間接的に虐めていた張本人だったからである。
「ああ。でも、王妃自身が直接指揮を執っている訳じゃないから、何ともね」
彼女は狡猾なキツネの様に、陰謀の天才だと言える。
自らは手を下さず、取り巻きや配下を用いて事をなす、陰険だが見事なやり口を行使する。
表面上は決して本来の姿を見せず、取り繕って正体を表さない。
まして、立場はフリード星の王族。よっぽどの決定的な証拠でも無い限り、王妃を糾弾するのは不可能だろう。
「あ、殿下。ランプが消えましたよ」
部屋上部に掲げられている、手術中のその表示が消えたのを指摘する侍女長。
ややあって扉が開き、覆面に手術服を着た医師長が姿を表して「ベガ殿下」と俺を呼ぶ。
「姉上は?」
「ご無事です。しかし……」
医師長の様子が変だ。
まさか、死産って話じゃないだろうな?
「とにかく殿下だけ、中へ。お連れの方は遠慮して下さい」
「何があった」
「テロンナ様のお望みです」
それを聞くと、俺は躊躇無く手術室の扉をくぐった。
だって、『おかしい』と感じていたからである。
普通、出産時に上がる筈の赤ん坊の泣き声が全く聞こえなかったからだ。
「姉上!」
「ベガ……。困った事になったのよ」
既に姉は身を起こしていた。
簡易ながら身も整えており、憂いを帯びた表情で新生児用の養育カプセルを見下ろしている。
「これは……」
「ええ、子供は一人では無かったのよ」
透明でつるんとした材質の、卵形をした養育カプセルは三つあった。
み、三つ子なのか!
ちょっ、これは問題にになったぞ。
「男子が一人に、女子が二人よ」
「これは……姉上、どうします?」
俺は困惑気味に尋ねる。
フリード星の慣習で、双子や三つ子は不幸を招くと言われているからである。
だから長子や長女を除いて、誕生時に亡き者として抹殺するのが一般的である。
「勿論、殺させませんよ」
姉のその答えにほっとするが、続けて「幸い、この三人は未熟児でしたから、妹は公式には死亡と言う形で届ける事になるでしょう」と続ける。
「ベガ、貴方に一番目の姫を養女として引き取って貰いたいのよ」
「公式にですか?」
姉の頷きに俺は困惑した。
公式に引き取ると言う事は、引き取った経緯を外交的に明らかにする必要がある。身元不明の赤子を突然、ヤーバン王家の一員として迎え入れるのは出来ないからである。
幸い、フリード星の姉からの子なら、大義名分も成り立つ士理由としては申し分もない。
だが、それはフリード王家にもその存在を伝える事になるのだ。
「双子の片割れを殺すに忍びないので、と理由を申しましょう」
「それは……」
「父上の威光を背景にすれば、フリード王家も〝殺せ〟との無理強いはしないと思います」
確かに……ん、双子?
「姉上、生まれたのは三つ子なのでは」
「そうです。でも、対外的には双子と言う事にする予定です」
姉が「育成カプセルを覗いてみなさい。意味が分かるでしょう」と言葉を繋げ、俺は恐る恐る、赤子達に視線を移した。
まずは股間に可愛い突起を持った男子。ぐったりしている。こいつが次代のデューク・フリードになる男か。
続いて、こっちは逆に股間がつるんとした女子。一番元気そうで手足をバタバタ動かしている。
「これは……」
「分かったでしょう。この姫だけは世間に出せないのです」
最後に見た姫。
その頭部には小さいが、異形の二本角が生えていたのだ!
〈続く〉
今回は約2,300文字。
さぁて、豆まきの二月だからって訳じゃないけど、鬼です。
日本鬼子じゃなくて、まだ小日本かな。さぁ、鬼姫様の運命や、如何に?
今回のBGMが日系二世を扱った「山河燃ゆ」なのも、そんな理由だからです。