ベガ大王ですが、何か?   作:ないしのかみ

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今回の作業用BGMは『キディグレイド』から、「Stars Century 0328」です。
ゆったりとした旋律で、かつ、雄大でどっしりた曲ですね。
でも、全体的には平和な感じでは有るけど、その根底には何か不安が含まれている様に個人的には感じるんですよね。

『キディ』自体は複雑な構造をした、入れ籠みたいな設定が重なった作品でしたね。色々と関連作品(小説やドラマCD)を当たらないと全体が見えにくい。まぁ、アニメ本編だけでも楽しめますし、それ以外はオマケと見るべきかも知れないけどね。
珍しく主人公コンビが好きでした。特にリュミエール。平野綾が子供の姿から妙齢の女性までCVを充ててるんですけど、当時中学生(!)で天才かと思いましたね。


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              ◆       ◆       ◆

 

 ベガ星連合軍の成立は国家間の関係をも左右した。

 一言で言えば、スペースレーンの安全係数が高まったと理解されて星間貿易が増えたのである。

 

「別に海賊に対抗する為の物じゃ無かったんだけどな」

 

 報告書と壁に広がっているモニターのグラフを交互に眺めつつ、俺は執務室で驚いていた。

 

「民間の商船主から言えば、海賊(スペースパイレーツ)もワルガスダーも安全を脅かす同類ですからな」

 

 俺のぼやきを、ベガ星の政庁に赴いてるガンダルが答える。

 経済規模の大きいルビーの星担当にしたので、最近は直接面会する機会が減っていたが、今回、久々にベガ星へと帰還しているのだ。

 水晶宮へは俺への儀礼的な顔見せである。

 

「航路を安全巡回する様になったから、確かに海賊は活動しにくくなっているんだろうけどな」

「副次的効果とは言え、連合軍結成で経済が回り始めたのは喜ばしい物です」

 

 ベガ星の景気が上がっていた。

 次々と移民が増え、新しい需要に応えて投資が進み、鉱山資源一本槍だった経済構造が変わりつつあった。

 ベガ星連合軍の〝盟主〟となった事で、国際的な信用度が上がった為である。

 つまり「この星になら、投資しても大丈夫」と言う、思わぬ効果を生み出したんだよね。

 人が増え、工場が建ち、娯楽や所業施設なんかの様々なサービスが提供される様になり、星間定期航路も幾つも開設されて便数も飛躍的に増えた。

 

「ルビー星の方はどうだい?」

「景気は横ばいか緩やかに上昇です。ベガ星景気の副次的効果で、こちらも投資が増えておりますが……」

 

 ガンダルの大きな頭が首を横に振る。

 

「ベガ星の景気に、お株を奪われているとの不満がありますな」

「拙いね。税制政策の見直しに入るべきか」

「是正は必要と感じます。暫定的にでも税制優遇を見直して頂きたい」

 

 今日、こうして訪れた理由に思い当たり、先制で話題を振るとやはりそうだった。

 ベガ星の産業を活性化させ、投資を募る為にわざとルビー星より法人税を低くしてある為である。

 

「惑星人口が十億人に達したら、手を入れるべきだろうね」

「かなり遠い目標ですな」

「ハツメ、今の人口状況は?」

 

 俺は隣に立つ護衛兼秘書役の少女に声を掛ける。

 

「約五億五千人です」

「この一年で人口が倍以上だ。五年と経たずに十億は突破しそうな勢いだよ」

 

 移民局が悲鳴を上げてるとズリルが予算を請求していたな。

 もっとも、治安悪化に備えて警備や消防関係、上下水道や公共サービスのインフラも予算請求が軒並み請求されていて、役人の数がどんどん増えて頭が痛いんだよな。

 

「五年も不満を抑えきれませんが……」

「判った。暫定的にルビー星の方の法人税を下げよう」

 

 ガンダルの困り切った顔に、俺は暫定案を打つ。

 税収は減るけど、今の景気だったら何とか回りそうだとの判断である。

 

「それとルビーナ様ですが、即位を発表するので?」

「それが良いのか、姉上にも意見を聞かないとな」

 

 ガンダルの問いに、『ああ、奴が来たのはその問題もあるか』と俺は納得した。 

 姉からの双子の女児を養女としたのは、既に発表済みである。

 が、名を姉の、いや、ルビー星領主の尊称である〝ルビーナ〟とする事は関係者以外には伏せられていた。

 この名を名乗るには、色々と政治的に厄介な問題が付いて回るからだ。

 

「ま、当分は、あの娘は〝グレース〟だよ」

 

 因みに名を出した〝グレース〟とは、デューク・フリード(二代目)の妹としてフリード星で与えられた名であり、現在、発表されている名称だ。

 秘匿されている姉のもう一人の女児、マリアの事を思うと皮肉なネーミングである。

 原作の『グレンダイザー』でのマリアのフルネームが、グレース・マリア・フリードだからね。

 

「早めに決定をして下さい。殿下」

「ん、父にも相談する必要はあるな。お役目、ご苦労」

 

 大柄な身体を一礼して退室するガンダルを見送ると、俺はため息をついた。

 ハツメが「何か飲み物でも……」と申し出る。

 

「クヴァスを頼む」

「はい」

「隣室ではいはいしてる幼子に、領主として赴任しろとは言えないからなぁ」

 

 俺は執務室の壁の向こうに視線をやる。

 姉の子は、今、水晶宮で育成中だ。昨日「立ち上がった」との報告が入っているが、まだ言葉も話せない幼児で、乳母が欠かせない幼子に過ぎない。

 

「ガンダル様は、グレース様の即位を促してますね」

「昔のベガ星の再現を目論んでるんだろう」

「再現?」

 

 首を傾げるハツメに、俺がベガ星の領主となった幼少時の話を聞かせる。

 惑星領主に赴任しても、幼くて能力が足りぬ場合、宰相とかの大人が仕事の肩代わりして、領主は御神輿の飾り物となる。

 王族だからって、子供に惑星経営が直ぐに出来る訳じゃないのは馬鹿だって判るだろう。

 やはり幼少で赴任した、俺の場合だってそうだった。

 言うなれば、領主代理になる者は主たる成長して領主が判断力を持ち、行政に口出し出来るまでの期間は、お山の大将として好き勝手出来るパラダイスなのである。

 

「現にぼくが政治的に動けない病床なのを良い事に、好き勝手やってくれたからね」

「でも、それはレディ・ガンダルとか言う女性の話では……」

 

 ハツメは直接、レディ・ガンダルに会った事は無い。

 やって来た頃には、ガンダル自身が己の半身であるレディ・ガンダルを粛正していたからだ。

 

「本質は変わらないよ。ガンダルは野心的すぎるんだ」

 

 そう断言する。単にヤーバン王家に対する忠義が、それをも蔑ろにして俺をも殺害せんとしたレディ・ガンダルよりも上だったと見ている。

 仮にグレースをルビーナとして赴任させた場合、その後ろ盾になって権勢を振るうのはガンダルになる。

 このままだとルビーナを名目上の領主として操る危険があった。

 

「姉上の子がこうなると判ってたのなら、奴にルビー星を任せなかったんだけどな」

「お察しします」

 

 俺としては、別にガンダルがお山の大将をやっても構わないんだよ。

 現に今がそうだし、仕事さえこなしてくれれば文句はない。利権とかの黒い噂もあるけど、統治と言う面倒臭い仕事に対する、ある程度の役得として見逃している所もある。

 だが、ルビーナ……まだグレースだが、が絡むとしたら話は別になる。

 下手すると飾り物の人形にされかねない。 

 義兄に任せられたんだから、俺には姉の娘をちゃんとした惑星領主に育てる責任がある。ガンダルに食い物にされるのは阻止しなきゃならない。

 

「所で……姉の話のついでだけど、テイルが何を言ってきたんだ?」

「暗殺者の件ですか」

 

 俺は頷く。

 

「アステカイザー並みの奴かも知れないとの警告がありました」

「ちょっ、冗談は止めて欲しいな」

 

 って事は。古代文明絡みって話だよな。

 アステカイザーって、最近、姿を現さないから忘れかけていたけど、勿論、その存在が消えた訳じゃ無い。

 しかし、何でそんな情報をテイルが掴んだのだろう?

 

「テイル様の兄上が何かを掘り当てたらしいですね」

「ツイン・テールか。そう言えば、彼は今、何をしているんだっけ?」

 

 基本、自由気ままにあっちこっちを飛び回って調査に赴いてるから、俺も良くツインの居所や仕事を把握してないんだよね。

 

「何でも、消えた古代文明とかの遺跡を探索してるとか」

「ぼくは考古学には疎いんだよなぁ。資料を……」

 

 モニター上に凍り付いた惑星が映し出される。

 情報によると惑星ウードウ。

 ヤーバン領の資源惑星の一つで、この低温環境から生物の存在は苔なんかを除いて確認出来ないらしい。

 

「こんな所に遺跡があるのか?」

「さぁ、苔が生えてると言う事から大気はあるんでしょうけど」

 

 どうやら、かつては温暖な気候の惑星であったが、数千年前から気候変動で氷河期を迎えている星だと言う。

 マルクに伝わる古史から、滅んだ古代文明の何かがあるとの情報があったとの報告だが……。  

 

「テイル様によると、そこから甦った暗殺者がやって来るかもと」

「冗談みたいだな。理由は?」

「盗掘です。ツイン・テール様が遺跡の一部を持ち去ったので、主である殿下を狙うか可能性があると」

 

 もしかすると、遺跡を守るミイラとかゴーレム的な守護者みたいな奴が居るのか。

 もし呪うんだったら、テイルの兄貴本人にやって欲しいぞ。俺は雇い主だけど無関係だ。

 

『まぁ、問題の星、ウードウからは少なくとも星間単位で十数光年離れているから、暗殺者だって星の海を渡っては来ないだろう』

 

 ぼんやりとそう思った時、ぞっとする悪寒が身体を襲い、隣室から物が壊れる音と悲鳴が響いた。

 その中に「グレース様が!」との声が混じっている。

 それを耳にした俺は咄嗟に銃を引っ掴み、執務室を飛び出していた。

 

 

〈続く〉




約3,400文字。全然短く出来ねぇ。

ベガ星の経済が上向いて、ようやく貧乏から脱出かって時に悪寒の正体は…さて、次なる相手はあいつです。
本来、ロスト編に出る予定は無かったのですが、二人の幼子関係で登場が前倒しになりました。
え、三人だろって。デューク(二代目)? 奴は知らん(笑)。

今回の作業用BGMはインフラが整い始めたベガ星のイメージで。どーんとGOTTビル並の施設が続々と出来れば、万々歳なんだろうけどね。
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