ベガ大王ですが、何か?   作:ないしのかみ

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フリード星への旅。
外交面。特に原作で言及されていない、ベガ星とフリード星との関係とか、ここからかなり、ないしのかみ流のオリジナル展開が入って参ります。
あと、ダイナミック系のクロスオーバー色が強くなって来ます。

テイルは秘書兼護衛侍女です。
あんまり、侍女の仕事はやってません(侍女頭的なポジなので)。


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「君は?」

 

 突然現れた女に質問する。

 ズリルが慌てて「こら」と叱責するが、女は「ズリルの妻でございます」と自己紹介をした。

 奥さんか。そう言えばズリルって『グレンダイザー』でも既婚者だったな。

 確か息子が登場してたけど、奥さんの方は未登場だったな。この女性がそうなのか。

 青白い肌をして、つん、とした美人だ。

 

「名はヨナメと申します。お見知りおきを」

 

 そうして淡緑色の髪を姫カットにした頭を下げる。

 そこへ音も無くテイルが動いた。目も留まらぬ早さで伸ばされた首筋へ手刀を繰り出す。

 テイルの役目からすれば、主に対する不審者に対しては当然の仕打ちだ。一撃で気絶させるつもりなのだろう。

 

「な……」

「無駄よ」

 

 だが、ヨナメは片手でそれを防いだ。口元を釣り上げて冷笑する。

 テイルは思わぬ反撃にたじろいたが、即座に一歩下がると足技をお見舞いする。スカートがめくれて、白い下着が盛大にパンチラするのが嬉しい。

 それをバク転で躱すヨナメ。白衣が翻り、後方へ一回転して間断なく身構える。

 護衛侍女の本気と対等にやり合えるのか。こりゃ、凄いな。

 

「双方とも拳を収めよ」

 

 俺は命令した。テイルは「危のうございます」とか言って警戒を崩さなかったが、俺はそれを制する。本気で俺に危害を加える気なら、最初の登場時点で幾らでも機会があった筈だからだ。

 それよりも先程の言葉が気になったので、俺は質問を続ける。

 支配体制がどうとか、だ。

 

 俺が促すと、ヨナメは「ヤーバンには情報統制があります。人々に自由な情報交換を制限して、プロパガンダを徹底させているからです」と語り出す。

 

「うん、そうだね」

 

 独裁国家だけにそう言う側面はある。

 俺が思うに旧ソ連に近い体制だ。流石に配給制度とか課して、物流に制限を加える所までは行っておらず、集会が禁止されるなんかの極端な物は施行されていないが、人々は自由に情報を発信できない。

 

「民衆の反乱を恐れるからです。もっとも、この制度はフリード星を範に取った物ですが……」

 

 へぇ、フリード星がね。

 愛と平和と緑の星と謳われている筈だけど、そんな後ろ暗い側面もあったのか。

 

「しかし、本当にヤーバンが素晴らしい国家体制だと思うのなら、自由な情報のやりとり程度で崩壊する物では無いと、ぼくは考えてるよ」

 

 ヨナメはふっと笑って「自信がおありなのですね」と呟く。

 

「そうじゃないのなら、国家なんて運営して行けるかい?

 己に自信が無いから守勢に回り、民を敵として恐れ、民衆の力なんかを制限しようとするのさ」

「民を敵と見ていない?」

 

 不思議そうにヨナメは頭を傾げるが、俺の理想の君主は戦前の天皇家だ。

 

「当たり前だろう。王が敬愛され、皆に支持されてるならば、その支配に逆らう内乱なんか起きやしないからな」

 

 いや、情報統制は必要だろうけど、今のままでは駄目だと思うし、改革開放後の中国程度までなら大丈夫と俺は踏んでいるのだ。社会に活性を求める為にね。

 そこへズリルが「それ位にしないか」と乗り出してきた。

 

「奥さん同伴とは知らなかったよ」

「済みません。妻はフリード星の出身なのです。それにしてもどうやって…」

「一寸、コンピュータをハッキングして一名追加と書き換えただけよ」

 

 勝ち気な顔で説明する妻に、ズリルが呆れ顔になる。

 テイルが肘でぼくをつんつんして「要注意人物ですね」と警告した。確かに凄い才能だ。本職のスパイになれそうな気もするな。

 

「Jrはどうしたのだ?」

「保育所に預けたわ。フリード星へ行く機会なんて、これを逃したら何時巡ってくるか分からないもの」

 

 夫婦の会話に出たJrの名に『あ、ズリルってもう息子居るのね』と俺は納得した。

 俺はヨナメに興味を抱いた。「学生結婚か。既に子持ちとは思わなかったよ」と告げると、ズリルは「内縁の妻です。正式な結婚は」と汗を拭く。

 

「にしても凄いな。是非とも諜報部隊にスカウトしたくなる」

「ご冗談を。しかし、この不始末は如何しましょうか?」

 

 まさかここから帰れとも言えないし、どっかの空間鉄道株式会社みたいに密航者を宇宙へ放り出す訳にも行かない。

 

「偽造した身分は?」

「随行員の一人となっております。殿下」

 

 とヨナメ。

 

「じゃ、それでいい。但し、君を完全に信用した訳じゃ無い。テイル。旅行中、彼女を監視するのを命じる」

 

 テイルは頷いてヨナメを別室に連行した。

 多分、侍女服を与えて侍女として偽装するんだろうな。

 ズリルは「寛大なご処置に感謝致します」と平伏する。

 

「面白いじゃないか。フリード星の出身だったら、道中、色々面白い話も聞けそうだ」

 

 体術に加えて、ハッキングとか電子戦に関する知識もある。

 本当に諜報部隊で使えそうな人材だ。

 

「私は殿下が、厄介事に巻き込まれるのを危惧しますよ」

「厄介事に巻き込まれるか、例えば?」

 

 ズリルは沈黙した。何かを隠しているな。

 まぁいい。思わぬ同行者を得て、今度の旅は面白くなりそうだ。

 

 そして、クインバーンはフリード星へと到着した。

 

 

〈続く〉




護衛侍女。
ボディガード兼任の冥土さん。と書くとソフトハウスキャラだね(笑)。
戦闘侍女と名こそ違いますが『エロエロンナ』登場のビッチ付きのハミーナや、ダニエル付きのテルミなんかと同じ職業です。
『花右京メイド隊』のコノエさん辺りがモデルで、侍女としては勿論、戦士や間者としても一騎当千の力量を持っています。

で、そんなテイルと渡り合えるズリルの妻、ヨナメさん。
今の所、謎の人です(笑)。

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