最初の太鼓が「これから出撃だって」気分を高めてくれます。軽快で楽しい曲で複葉機を操って、大空を行くのにぴったりなんですよね。
某球団の野球選手応援歌にも使われた、意外と由緒正しい曲ですね。スクロールタイプのゲームでもお気に入りの一つです。腕前は…聞くな(笑)。
敵機以外に飛行場のチア・ガールを撃つとお花に変化するのが、一寸怖かったし(実はお前ら化けた妖怪かよ!)、撃った墓石が笑うのも、実は普通に見えてホラーな世界観のゲームなのかも知れませんね(笑)。
◆ ◆ ◆
ピンク色のベビー服を身にまとい、目の前をはいはいしている幼子を微笑ましく見ながら、俺は仮の執務室で仕事をこなしていた。
半壊した育児室同様、隣室だった俺の執務室も無事じゃ済まなかったからである。
「何が起こったのかと思いましたよ」
「言うなアラーノ。ぼくだって何が起こったのかを把握していないんだ」
部屋の中には俺とグレース。そして女官数名の他に、アラーノ大尉と馬面……じゃなかった、ゴルヒ・フォック少尉が出頭していた。
本来、この二人は姉のフリード星に出向させていた筈なのだが、暗殺者の件を知った姉が俺の身を心配して急遽、帰還させてくれたと言う。
姉の護衛指揮官はアラーノの弟、バンダー中尉一人になってしまったが「奴も一人前の筈です。大丈夫だと思います」とアラーノは太鼓判を押していたから、信じようと思う。
「大体の経緯はハツメ殿から聞いていますが……」
「うん、あたしも知りたいなぁ」
ファルコの二人は尋ねて来るが、困った事に俺にだって記憶が無い。
仕方なしに書類のサインを止めて、録画装置に残った記録映像をセットして投影する。
「これを見てくれ」
最初に映るのは育児室の平和な光景である。
今みたいにグレースがはいはいしており、女官と乳母が手を叩いて囃している。
そこへ、突然、黒い球体みたいなガス状の何かが湧き出て、その空間から現れるのが、例の黒衣の老婆だ。
女官達は呆気に取られるが、老婆は懐から何かを取り出して床へと投げ捨てた。
「何者です?!」
女官が問う、鋭い誰何の声。
水晶宮に居る限り、女官とて単なる女中ではない。武技の訓練を受けた護衛侍女も兼ねているから、護身用の拳銃を所持しており、皆、懐から取り出したそれを不審者に向けていた。
しかし、向けられた無数の銃口を前にしても、黒衣の女は豹の仮面から「くくく……」とあざけりの笑いを発するのみだ。
「現れよ。ダイル!」
黒衣の女が呟いたのと同時に投げ捨てた何かから、むくむくと異様な風体の大男が出現した。
俺は「こいつがワニ男だ」と解説する。
頭がワニで裸体の男は、伸びた鉤爪付きの腕を振り回すと周囲の女官をあっさりと片付けてしまった。
「ゴーレムだな」
鮮血が飛び散り、バラバラになって引き裂かれる人体を見ながらアラーノが断言する。
中にはシャーマンも混じっているらしく、こちらは死体も残さず、高音と共に赤い光に包まれて消えてしまう。
家具が破壊され、ガラスが割れる音を耳にした警備兵が表の扉から現れるが、こちらもワニ男の尋常ではない動きで、懐に飛び込まれ、その顎の前に死体の山を増やしただけであった。
「うぇぇぇ、気分が……」
ゴルヒが胃の辺りを抑えて、吐き気を堪えて顔を真っ青にする。
無理も無い。先に一回見た俺だって吐いたよ。
しかし、普通の女官は元より、くノ一であるシャーマンをも一蹴するとは恐るべき奴だ。
「死者多数が出た。誠に遺憾だよ」
「あのタイプの奇襲であるなら、警戒のしようがありません」
確かに転移で突然出現したのなら、周辺を固める警備や、監視塔だの何もあったもんじゃ無いけどさ。
「そうそう。殿下とグレース様が無事なのが幸いだよ」
アラーノ達は慰めてくれるが、俺の心は晴れない。
先触れとも言える悪寒、直感に対して対応が甘過ぎたと反省するからだ。
「……兵はともかく、非戦闘員がなぁ」
兵士なら命を落とすのも任務の内と言えるが、女官は軍人じゃないし、まして乳母は単なるベビーシッターだから、同列には語れない。
「この事件をどう国民に発表すべきか、それも頭の痛い所なんだ」
「素直に発表は無理ですね」
「うん、うん」
画面の中では例の豹の仮面を被った女が、「我が名はゾオラ。ウードウ魔術団の一員よ」と名乗りを上げていた。そしてその〝ウードウ〟との単語に思い当たる知識があった。
ダイナミック系の作品の一つ、『キングボンバ』である。
その中に出てくる敵がキバラ文明とか言う、氷河期以前に眠りに就いた古代人の末裔であり、遺跡調査で日本に持ち去られたボンバの像を取り返しに来ると言う話である。
その手先がキバラ文明の精鋭、ウードウ魔術団であった。
「ここで殿下の登場ですね」
「レーザーライフルを……ああ、やはりゴーレム相手には無効なのか」
場面は進んでいる。
ゴーレムと呟くアラーノに対して俺は「それが何なのか」との質問をすると、アラーノは「古代の土人形ですよ。同種の物をハニワとも呼ぶとも聞いてますが」と概要を述べ始める。
呪術の掛かった人形で、動力源や機械的な機構が皆無なのに、自立して動くロボット的な何かなのだそうだ。
「フリード星の神像。ゴッドマジンガーがそれに近いのかな?」
「恐らく。但し、推測に過ぎませんが、あれは完全な自律型とは言い難い代物です」
神話によるとムーの英雄〝ヤーマー〟が合体し、その鎧となってあらゆる敵を討ち滅ぼしたと伝えられているからだ。最終的には自分の祖国と言える大陸をも。
ムーの似た様なロボットとして、ダイナミック系じゃ無いが、やはり勇者が合体して甦り、悪魔の帝国と戦う別のロボをも思い出してしまったが、あれも機械的な機構が皆無の代物だったな。
後に人類側が取り付けた機械的な追加武装と機体の相性が悪くて、拒絶反応を起こして使い物にならなかったってエピもあった筈だ。
「調べたいですが、神像への本格的な調査はフリード王家が拒絶してますからね」
「ま、フリード星人としては祟られるのを恐れるから、触りたくも無いんだろうけどね」
「いずれにせよ、ゴーレム相手にレーザーガンは余り有効じゃありません」
内部に機械的な物が何も無いから、レーザーガンみたいにピンポイントで穴が開けても平然と動けるからである。
同じレーザーでも一気に全てを融解させる熱エネルギーを加えられる大口径レーザー砲なら、ダメージを与えられる可能性は高いけど、〝人間大の目標に狙って命中させろ〟と言うのは神業に近いし、第一、室内戦闘じゃ持ち込む事も出来ないしな。
「殿下。その上映を一時停止して下さい」
横から口出ししてきたのは、「きゃっきゃっ」と喜ぶグレースを抱えたルーペである。
曰く、「そんな映像を見せたら、今後のグレース様の養育に悪いですわ」である。
「それもそうだな。小会議室に移ろう」
「ご理解下さり、有難うございます」
怒気を発しているかに見える彼女の姿を見て、俺は反省する。
確かに、スプラッタな光景を幼児に見せ続ける訳にも行けないからなぁ。
俺は反省しつつ、絵像を一時停止してホロ・クリスタルを取り出すとハツメを呼んで、小会議室の準備をする様に取り計らう。
「殿下、今の方は?」
「ルーペか。姉上がグレース養育に送って来た侍女の一人だけど……どうかしたのかい?」
正確にはテイルが、だけどね。
水晶宮の侍女がヨナメ配下のシャーマン系に占められるのに対抗して、旧侍女部隊の勢力を盛り返す為か、最近ではグレースの養育要員との名目で送られて来る者が増えた。
どうもヨナメとテイルとの間に、水面下での派閥争いが起きている様子だが、今の所、俺は静観している。テイルを姉の方へ派遣したのも、水晶宮での衝突を避ける為との側面もある。
大奥じゃ無いけど、こうした女同士の勢力争いってのは、主人が深入りするとろくな事にならないからだ。
俺にとってルーペ・ハヅキも、テイル側の一人としての認識でしか無い。
「いえ、何でもありません」
何かに引っかかったのかのだろうか。アラーノ大尉は首を振ると、そう呟いた。
小会議室に移動した後、再生機にクリスタルをセットして映像を再開する。
「ここですね」
俺が意識を失った直後の場面が始まった。
〈続く〉
約3,100文字。しかし、物語は遅々として進まず。
グレースは『宇宙戦艦ヤマト』のイスカンダル・ハーフな赤ちゃんをモデルにしてます。あれも金髪だしね。でもあっちと違って成長スピードは普通ですよ。
今回の陰惨な雰囲気を吹き飛ばすべく、今回は作業用BGMを敢えて明るい「スカイキッド」にしてみたんだけど、良く考えりゃ、あれもホラーだったのかも(笑)。