ベガ大王ですが、何か?   作:ないしのかみ

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今回の作業用BGMは『ゴワッパー5ゴーダム』から「決戦!皇帝ジゴクダー」C7です。
戦闘曲ですね。この曲が欲しいだけにゴーダムのCDを買ってしまった過去があります。ボブ佐久間の描く金管とドラムの旋律が響く、ゴーダムの代表曲だと個人的には思ってます。

『ゴーダム』は知らない闇からの忍び寄る侵略が怖い作品でした。いつの間にか近所の人間や組織が乗っ取られ、すり替わっているのは衝撃を受けましたね。大人に訴えても信じてくれない、その内、その大人がネンドロイド(二頭身のかわいい人形ではなく、地底魔人のサンドゴーレム)にすり替わっているのは恐怖でしたね。
まぁ、後半からは地底魔人の存在が暴露されて、地上軍と敵対するから、ホラー的な味わいはなくなるんだけど。


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 画面に現れたのは大猿の貌をした怪人だった。

 巨漢と言っても間違いない大きさで、パワードスーツを着込んで身長2m+と一回りシルエットが膨れた装甲兵と遜色ない奴である。

 以前、目にしたダイル同様、手には得物はなく、代わりに異常に発達したかぎ爪が伸びている。

 

「うわっ、うわっ」

 

 慌てて発砲された装甲兵の放つビームキャノンを僅差で躱して、そいつが間合いを詰めるとかぎ爪を振るう。

 両断され、血飛沫を振りまいて倒れ伏す装甲兵。

 

「馬鹿な!」

 

 ブラッキーが驚愕の余り絶句する。

 普通、素手や刀槍みたいな格闘武器と銃の様な飛び道具を比較するなら、遠距離から発射出来る銃火器の方が圧倒的に有利な筈だからだ。

 それが常識の筈であり、敵は接近も叶わず、蜂の巣にされる運命だったからだ。

 

「やっぱり、常識的な相手じゃなかったか」

「殿下、それは……」

「覚えているだろう。ハツメ。ドン・ランダムとドラグ将軍との一騎討ちを」

 

 あの時、それを目撃した筈のシャーマンに俺は語りかける。

 超絶的な力量を持った武芸者相手には、その常識が通じないのだ。

 どっかの星団に出て来る電気騎士のパイロットじゃないけど、撃たれたビームですら剣などで受けて躱してしまう、もう超人としか言えぬ様な腕を持った連中が、確かに存在する。

 目の前の大猿も、そんな類いの連中の一角に位置する奴だろう。

 

「装甲兵を後退させましょう」

「いかん、いけませんぞ。我が精鋭が打ち破れぬ相手など、あってはならんのです!」

 

 交差するハツメとブラッキーの声。

 俺は迷った。ハツメの言い分は恐らく正しい。このままでは最終的に勝てるとしても、夥しい犠牲を重ねる事になろう。しかし、軍全体の威厳や士気を考えれば、このまま交戦させて討ち取るべきなのである。

 幾ら力量の勝る相手と言えど、所詮は単騎。

 奴は不死身では無い。

 かすったビームの命中箇所はぼろぼろになっており、装甲兵の武器はちゃんと通用するのだ。このまま数の暴力で攻め続ければ、やがて必ず堕ちるに違いない。

 

「うっ」

 

 俺が迷っていた時、突然、フラッシュの様な閃光が脳内に閃いた。

 頭の中を走馬燈の様に流れる光景に、俺は圧倒されてがくりと膝を着いてしまう。

 

「殿下っ!」

 

 駆け寄って身体を支えてくれたのはアラーノ大尉だ。

 助かった。突然、戦闘が始まったから司令官席に座る暇がなかったから、あのまま倒れてたら頭でも打って、怪我をしていたかも知れない。

 

「大丈夫だ。しかし、今のは……」

 

 ようやく体勢を整えた時、スクリーンの向こうから「おほほほほ」と胸くそ悪い女の声が響いた。見ると、遺跡の中から豹の仮面を付けて、赤い衣を着た女が現れていた。

 以前見た、黒衣の老婆ゾオラと似ているが、黒髪だったゾオラとは対照的にこちらは金髪で、声調からも年齢は若そうだ。

 

「ほほほほ。たわいも無い。ウードウ魔術団がこのジイルの相手にもならぬわ」

 

 ジイルと名乗ったその女は、手にした占い用の水晶球みたいな丸い玉を両手で抱え、その表面を擦る様な手付きで撫で回しながら、地面に何かを放った。

 それは不可思議な色彩を放ちながら、怪しげに発光し、やがて地面から別の怪人が出現した。

 

「それ、ジャンボウ。ゴーリキと共に敵を血祭りに上げよ」

「ばおーん!」

 

 鼻を高々と上げて新たに現れた怪物は、先に出現した大猿よりも大型であった。

 今度の奴はインド神話に出て来るガネーシャそっくりの、真っ赤で象の頭を持つ怪人で、しかも、六本の腕にそれぞれ得物を持った物騒な姿をしている。

 曲刀。槍。棍棒。槌。鎌。そして独鈷みたいな法具まで握り締めている。

 

「撃てっ」

 

 装甲兵達は動揺していたが、さすがは戦闘国家ヤーバンの一員で、ミサイルの一斉射撃を敵目掛けてお見舞いする。煙の尾を引きながら、発射された弾体が次々に着弾する。

 

「マザーバーン、ワープ準備に入れ」

「え、座標は?」

 

 惑星ウードウでの戦闘を横目で見ながら、俺は突然、命令を発した。

 いや、発せなければならなかった。

 

「フリード星だ」

「殿下、先遣部隊を見捨てるのですか」

 

 ブラッキーが吠える。

 無理も無いな。この俺の命令は撤退命令にしか思えないだろう。

 

「さっき、ビジョンが見えた」

 

 怒りを露わにするブラッキーに向かって「予知だ。今、ここでこんな事をしている場合じゃないんだ」と説明する。

 困惑顔で馬面が「何が見えたって?」と尋ねて来るから、「ウードウの本隊は既に此処には居ない。ぼくはさっき、奴らに襲われるフリード星の離宮を見た」と説明した。

 

「ウードウがキバラ文明の遺物を取り戻すのが目的なら、確かに狙われるのは……。しかし、それがテロンナ様の所にあるとは」

 

 ブラッキーが困惑気味に述べると、アラーノ大尉が「いや、確かにそうです」と俺の意見を肯定する。

 

「ツイン・テール殿は確かに離宮に居る筈です」

「えっ、じゃあ、奪ったキバラ文明の遺産はテロンナ様の所にあるって事ですか」

 

 ハツメの言葉に大尉だけではなく、馬面少尉も頷いた。

 そう言えば、この二人は姉上の補佐にフリード星へ送っていたのだっけ。

 ツイン・テールが、いや、妹のテイル・テールや鷹部隊も含めて、俺の指揮下を離れて姉の指示で独自に動いているんじゃないか。

 元々、鷹部隊は姉の親衛隊だし、テイル・テールは姉の肝いりで俺に派遣してくれた筆頭侍女だ。本当の忠誠が姉の方へ向いていたとしても、全く不自然ではないぞ。

 

「殿下。本当に先遣隊を見捨てるのですか」

 

 ブラッキーの抗議を無視しして、俺は非情な命令を下した。

 

「後退させて、遺跡は円盤獣を投入して破壊しろ」

 

 大雑把に戦略爆撃で、全てを根こそぎ吹っ飛ばす戦法だ。

 上で待機している学者には悪いが、背には腹は代えられない。貴重なキバラ文明の手掛かりを潰す事になるが、今はとにかく、時間が惜しい。

 

「殿下。通信が!」

 

 慌ただしく準備が行われる中、その一報が入ったのはその時だった。

 

「誰から」

「あ、アステカイザーです。アラーノ大尉を名指しで指名しています」

「どけっ」

 

 通信兵からヘッドセットを奪い、回線を開くアラーノ。

 モニターの一部が分割され、何か久々にアズテクの戦士がバストショットで映し出される。

 

「知っているかも知れないが、貴様らはフリード星へ行け」

「アステカイザー、何故、それを……」

 

 マッハビートルを駆っているらしいアステカイザーは、「忌々しいが、マルクの女神に教えられた。面倒な頼み事も込みでな」と事も無げに言う。

 マルクの女神ってあれか、ラミア?

 以前出会った偽女神の方じゃなく、本物のラミアの方なのかは判らないけど。

 

「アラーノよ。俺を殺したいと言う目だな。ふふふ」

「ああ」

 

 そうだ。アステカイザーとアラーノ大尉(当時は昇進前で中尉だったが)の間には、強い憎しみが存在するのだった。

 奴はアラーノにとって部下や、最愛だった妹の仇であり、何時か復讐を果たすと誓っていた。

 

「俺は構わないぞ。女神に頼まれてウードウの連中を倒すより、アラーノ、貴様と決闘した方が面白そうだからな」

「俺もそうしたい。だが……」

「主の危機の方が大切か。行け、ウードウの連中は代わりに俺が始末してやる」

 

 通信が切れ、突如、惑星ウードウの前面にワープアウトするトライクが見えた。

 そのまま、大気圏に突入して行く。

 

「よしっ、こちらもワープ」

 

 フリード星への旅が始まる。

 

 

〈続く〉




約2,900文字。
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