ベガ大王ですが、何か?   作:ないしのかみ

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フリード星到着。
「イー、エス、パー!」とか叫んじゃうぞ(笑)。


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 フリード星は『宇宙円盤大戦争』や『UFOロボグレンダイザー』の主人公、宇門大介ことデューク・フリードの故郷だ。

 作中では〝愛と平和な豊かな緑の星〟と謳われている。

 確かに上空から見た際、美しい大自然に恵まれた環境が視界一杯に広がり、ここが宇宙でも素晴らしい科学力を誇る、超近代惑星だとは信じられない光景だ。

 

「ベガ星みたいだな」

「歴史が違いすぎますよ。殿下」

 

 ズリルがそう言うのも解る。

 ベガ星は開拓が開始されて一世紀余りの若い惑星だ。

 〝化外の地〟として、元々は宇宙にも進出できない原住民しか住んでいなかったが、飛来したヤーバンの外征部隊が瞬く間に制圧したのだ。

 以後、ベガ星はヤーバンの植民惑星となり、ベガ星人はヤーバン文化に教化され、十年程前に俺が領主となった。

 本国はベガトロン鉱山にしか興味が無かったらしく、資源採掘基地の他にインフラは余り整えられていない。だから、星の大半は豊かな自然に覆われているのだ。

 

「でも、数千年も繁栄してる星が、こうした環境にあるのは不自然だと思わないか?」

「謎ですな」

 

 ズリルは言葉を切ったが、やがて「私自身としては、無闇に環境破壊を行わない事は素晴らしいと思いますがな」と続けた。

 そう言えば奴はそんな思想の持ち主だったな。

 ズリルは『グレンダイザー』でも侵略する地球の自然を保護しようとしていたし、科学者の癖に環境破壊には反対する性格だった。

 

「いずれ解りますよ。殿下」

 

 不意に聞こえた声の主はヨナメ・バロン。

 ズリルの名字ではないのは内縁であるからで、今は侍女然として俺の後ろに控えている。

 その意図を問いたい所ではあるが、今は時間が無い。もうすぐ着陸で、俺は姉上と共に歓迎のパレードに出なければならないからだ。

 パレード用のオープンカーにはテロンナ姉様と俺。侍従としてブラッキーとズリルが同乗する。テイルやヨナメみたいな侍女は別の車両だ。

 

「き、緊張しますな」

「君でもかい?」

「この前まで、単なる学生だったのですぞ」

 

 そう答えるズリルは礼装をし、頭髪と髭を綺麗に整えて侍従にふさわしい姿をしている。流石に寝癖で髪が爆発し、無精髭ぼうぼうな姿でよれよれの白衣では通用しないから、テイルらに命じて整えさせたのだ。

 

「ま。ぼくも含めて道化だよ。真面目ぶって座ってりゃ良い。

 ぼくは、沿道へにこやかに笑って手を振る役だけどな」

 

 格納庫へ向かい、オープンカーに先に乗り込んでいる姉様の隣へ座る。

 ズリルはその真向かいだ。

 テロンナ姉様は微笑みを浮かべて、俺の手を取って引き上げてくれた。その足元には姉様のペットであるクロヒョウロボットが居たが、座り込んで動かない。

 

「ベガ王子。姫様の護衛武官を務めますブラッキーです。お見知りおきを」

「やぁ、君の名は聞いているよ。よろしくね」

 

 姉様の真向かいに座る禿頭の男が自己紹介をして来た。

 このクインバーンの副司令(司令官はテロンナ姉様だ)でもあるブラッキー。黒髭を蓄えた大男。声は世紀末で黒馬に乗った、拳法家の兄貴みたいにぶっとい。

 

 この『宇宙円盤大戦争』版のブラッキーを見て、俺は『グレンダイザー』のブラッキーとは全くタイプが違うなとの感想を持った。

 ブラッキーは『グレンダイザー』版では貧相なひょろ長い中間管理職で、こちらの如何にも無骨な武人と言ったヤーバンの武官には良くある豪傑タイプとは大違いだ。

 

『どうせなら、こいつを武官に迎えたいな』

 

 下手すると暴走しそうだが、配下に加えてコントロールすれば上手く使えるかも知れないと俺は踏んだ。

 こいつ、力を信奉してるから、こっちも実力を示さないと舐めてくるだろうけどね。

 

 ずずんと軽い衝撃が走る。どうやら無事にフリード星へ到着した様だ。

 エアロックが開いて、車列が船外へと走り出す。

 最初は先導車としてエアバイクみたいな、サイレンとパトライトを回して飛び出す白バイ的な軽車両が二台。

 続いて、ビーム砲らしき砲塔を持った装甲車。

 随員の乗った黒塗り高級車の次に、やっと俺達の専用車が続く。その後ろにも延々と車列が伸びている。

 

「ちと物々しいな。あれはフリード軍か?」

 

 沿道の群衆に手を振り続けていた俺は、上空を何機も円盤が飛来するのを見て呟いた。

 領空侵犯になるのであれはヤーバン軍では無く、流石に現地軍だろう。

 護衛車両なら分かるが、上空を戦闘円盤なんかで警戒する必要があるのか?

 

《ベガ、疑問はもっともですが、今は役目を果たすのです》

《テロンナ姉様。はい》

 

 これはテレパシーだ。

 ヤーバンの王族。いや、およそ宇宙の高貴な家柄には、超能力を持った人間が生まれる事もある。無論、確率は恐ろしく低い。

 俺と姉様はこの力を持って生まれたが、弟のブーチンは持っていない。

 使うと疲れるので普段は滅多に使用しないが、テロンナ姉様はその気になれば惑星規模でテレパシーを流す事も出来るらしい。 

 

「姫様を狙う不埒者が居る様子ですからな」

「ほぅ、フリード星の治安はそれ程悪いのですかな?」

 

 ブラッキーの言葉に反応したのはズリルだ。

 それにブラッキーは「ベガ王子の随員の方ですな?」と探りを入れ、ズリルも「殿下補佐官のズリル・ホロスと申します。若輩者ですがお見知りおきを」と自己紹介を交わす。

 流石ズリル。百戦錬磨の武官に対しても不貞不貞しいな。

 

「そうですな……、あっ姫、危ない!」

 

 ブラッキーの言葉に俺が反応する。

 群衆の中に襲撃者が居た。

 バズーカみたいな火器を肩に担いで、砲口をこっちに向けているんだ。

 次の瞬間、ぱっと白煙が上がり、ロケット弾らしき物が放たれた。

 

 

〈続く〉   




しまった。今回二千字をオーバーしてしまったよ。
次回は二千字以内に収めようと思います。

ブラッキー。
『宇宙円盤大戦争』版の彼は、もう、完璧に戦国武者みたいな脳筋男。ガトランティスのザバイバル将軍やゴーランド提督みたいな。
でも姑息さや狡さがない分、『グレンダイザー』版のブラッキーより御しやすそう。
実はヴェルテ・ブラッキーと言う名の兄で、ガデル・ブラッキーと言う腹違いの弟が居るって設定はないよ(笑)。


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