第二部に相当する所から、新登場した伽遊羅さんの戦闘曲ですね。速いテンポの旋律がスピーディで彼女に似合ってました。後半はお姫様のお淑やかな伽遊羅さんの雰囲気。これも、これで彼女らしい曲です。
『サムライトルーパー』自身は当時の腐女子に人気絶大な作品でしたね。まぁ、当時「ふーん」て感じで見てただけだったんだけど、伽遊羅の登場から「おおっ、これは好み」って態度が変化しました(笑)。
その姿、りりしさもそうだけど、やっぱりお姫様なのがツボはハマった。紅を引いた目尻とか、特に逆武装の十二単とか、朱天の鎧姿も漫画版の雲水姿もイイ。そして強いんだよね。トルーパー全員相手にしても負けないんだもん!
131(閑話)
◆ ◆ ◆
ある日の水晶宮執務室。
「留学か……」
「大王様の意向です」
我が主君、ベガ・ヤーバン殿下は一言だけ口にした途端、黙ってしまった。
私は一応、それがお父上の意向である事を伝えると、殿下は顔を曇らせて長い髪の毛を苛立たしげに、手櫛で後へと漉く。
美しい。
成長して少年の面影が残っていた数年前に比べ、美少女から美女に変化しているが、その美しさはますます磨きが掛かっている様に思える。
「ズリル。ガンダル」
「は」
主は私の名を呼ぶと、執務室に居た別の者達にも顔を向ける。
「ブラッキー。そしてヨナメ、ハツメにも問う。
どうするべきだと思う。ぼく、いや私は正直、フリード星には近付きたくは無い」
今、ここに集められたベガ星連合軍の首脳陣は黙ったしまった。
「意見、宜しいでしょうか?」
「ハツメか。許す」
最初に口を開いたのは、侍女副長になったシャーマンだった。
この娘も、すっかり大人になって以前、感じていたお転婆で活発な女の子と言うイメージは消えて、髪型の変化もあろうが、物静かな侍女の雰囲気が濃くなっている。
「個人的な意見では殿下と同じです。しかし、大王様の意向に逆らうのは……」
「ブーチンとの間の後継者問題に、一歩後れを取る……か」
長男であるベガ殿下と、次男であるブーチン殿下との間に持ち上がっている次期大王問題。たったの数年前まで、ベガ殿下はそのレースの舞台にすら立てない程、周りの評価は最低だった。
病弱で何の功績も無く、戦闘指揮官として何の評価も無いベガ殿下に比べ、ブーチン殿下は武闘派で名を上げて、数々の戦場で功績を挙げていたからだ。
『しかし、ベガ星連合軍を結成してからの殿下の活躍は、その評価を逆転させた』
田舎惑星の集合体と思われていたが、今やベガ星はヤーバン連合の中でも一、二を争う成長率を誇る強大な惑星となり、連合軍に参加した星々も、その恩恵に与って相互防衛共栄圏のみならず経済共同体としても発展を遂げた。
ペガ星連合軍のステータスは上がり、連合加盟星は続々と増えている。周囲の目も、軍事的な功績を挙げるだけのブーチン殿下より、総合的に精力を伸ばし始めたベガ殿下を高評価する様になっている。
『が、ここでその功績に水を刺す事になりかねないな』
問題は養女として育てているグレース姫、いや、そろそろルビーナ姫と呼ぶきだだろうに対して、大王から親善の為に、フリード星への短期留学が示唆された為だ。
母であるテロンナ姫の前例もある。
ここでヤーバンとしても王子であるデューク・フリードとの婚姻を目論み、今の内から引き合わせておこうとの皮算用が働いているのに相違ない。
「殿下。私も反対ですな」
意外な事に留学に反対を示したのは、ベガ星連合軍の総司令官であるブラッキー中将だった。
禿頭の巨漢は「今更、フリード星に媚びてどうします」と続ける。
「私は昔から、テロンナ姫が留学した当時からあの星が嫌いでしたし、姫様があそこで受けた行為に我慢がなりませんでした」
「ブラッキー、それは短絡的だぞ」
行政担当のガンダル長官が諫めるが、「ふんっ、貴様は当時、姫様がどんな目に遭ったかを知らんから、そんな他人事の様に!」と吠える。
「意見は判った。ガンダルは留学賛成なんだね」
「大王様に逆らうのは、悪手だと思うからです」
ガンダル長官は殿下へ冷静に意見具申する。
「我がヤーバン連合は大王陛下の国です。我々もブーチン殿下もその下にある立場を忘れてはなりません」
「……モンゴル帝国なら何とか汗国。オーストリア・ハンガリー帝国なら……」
殿下は不思議な単語を語り出し、「エッセンシュタイン公国だな」とごちる。
何を言ってるのかは判らないが「いずれにせよ。従属国って立場だから、正面切って逆らうのは不味いか。ズリル、君の意見は?」と問われ、私も不本意ではあるが、今は大王の意見を優先する様に説いた。
「姫と言えば、マリアの情報は何か進展したのか?」
「いいえ、残念ながら」
答えたのは我が妻だ。フリード星の離宮、そして先代デューク・フリードの行方と共に、テロンナ様の所から現界へと残されたらしい、マリア姫の探索は行き詰まっていた。
消息が、ある時点でぷっつりと切れてしまったのだ。
「ゴーマン元大尉らしき男が、五年前にウエストマルクへマリア姫と思わしき赤子を連れて入国していたのが、最後の記録か」
「諜報網を駆使していますが、場所が場所で……」
「ウエストマルクじゃな。流石のシャーマン族もあそこでは……。オストマルクならDr.ヴォルガの伝手が使えるんだけど」
ウエストマルクはオストマルクと違い、ベガ星連合軍に加盟していない。
そして社会が独特の文化を持っているので、シャーマン族と言えども浸透するのに難しいらしいのだ。
「ゴーマンか。何を考えている?」
ゴーマン大尉はワルガスダーの協力者として、既にヤーバンの軍籍を失っている。
テロンナ姫との間に何があったのかは知らないが、彼はマリア姫を託されたらしい。
「ワルガスダーの思惑なのかも知れませんが、更に調査を続けます」
「ん、ヨナメに期待する」
殿下のこの一言で、一旦、集まりは解散となった。
私は妻、ヨナメを連れて水晶宮を立ち去ろうと廊下を歩いた。
「あ、ズリル司政官」
その時、声を掛けてきたは聡明そうな幼女だった。
私と妻は一礼して、「これはルビーナ様」と挨拶する。
「まだグレースよ」
「いえいえ、来月にも貴女はルビー星の領主におなりです」
「聞いて、ルーペったらあたしの髪型を縦ロールにしようとするのよ。お母様がそうだったから!」
聞けば筆頭侍女長が、テロンナ姫の前例を出して髪型をゴージャスに変えようとするらしい。
それが嫌で、隙を見て逃げ出したと言う。
「ははっ」
「ヨナメも聞いて、あたし生まれ故郷へ行かなければならないのかしら?」
「どこで……」
「ヤマメに聞いたわ」
ヤマメは歳が近いのでルビーナ様の遊び相手に抜擢された我が娘だ。
しかし、まだ、ヤマメにも留学の話は伝えていないし、守秘義務があるから自分の子供であってもそれを話す事は無い。
「可能性の話だってヤマメは言ってたわ。
フリード星との関係改善の為、お母様の前例からね」
「それはヤマメの推測に過ぎません」
ヨナメはそう言い切ると「あの子にも困った物だわ」と怒りの口調で呟く。
するとルビーナ姫が「ヤマメを叱らないで」と懇願した。「将来を相談したら。可能性として意見してくれただけなの」と擁護する。
「姫様の仰せなら……」
「有難うヨナメ。あっ!」
廊下の向こうから「待ちなさい」と駆けてくる、ルーペら侍女達を見た彼女は身を翻す。
「一波乱ありそうですね」
「うむ。殿下は断り切れないだろうからな」
姫様と侍女達の追いかけっこを横目で見ながら、殿下の事を思いやった。
殿下はかつてのテロンナ姫の二の舞を避けたいだろう。
フリード星で姉がどんな目に遭ったのか、暗殺の危機に遭遇してまで留学する必要があるのか、そして歪んだ価値観を持つ現在のデューク・フリードを殿下は嫌っていたからだ。
しかし、大王の命令はヤーバンでは絶対である。
叛旗を翻して、クーデターでも起こさない限り、殿下はこのくびきからは逃れられない。
『或いは難癖付けて、フリード星自体を滅ぼすか……』
が、それは夢物語だ。
殿下本人としたらやりかねないが、ベガ星連合軍の盟主としてそれは自殺行為だって事は判断出来るお方だからだ。
「さて、一波乱ありそうだ」
外に出た私は、水晶宮全体を振り返って嘆息するのだった。
〈続く〉
約3,000文字。
新章開始の閑話です。
『王室スキ〇ンダルナイト』がさりげなく混ざってますが、気にしない様に(笑)。
予告ですが、別のお話とか書きたいので一週間に一回のベースは変わりませんが、多分、更新期間が五日毎でなくなります。