ベガ大王ですが、何か?   作:ないしのかみ

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今回の作業用BGMは『機甲創世記モスピーダ』から「荒れ野へ」です。
インビットから逃れる為に女装してた歌手、イエロー・ベルモントの持ち歌ですね。コンサートとか酒場で歌姫してた時に良く使われていた曲です。題材としてはイエローと言うより、「栗色の髪の少女」からフーケの歌だと思ってますが。

『モスピーダ』は『マクロス』『サザンクロス』と合わせて米国にリリースされたんで、向こうで超時空シリーズに組み込まれてしまった不幸な歴史がある為、日本ではマイナーだけど米国で大人気なんだよね。まぁ、分かります。他の二作より面白いもん。
『スパロボ』不参戦だけど、これはジャミト…ジム・ウォーストンのせいだよね。
ジムこそジープに積まれた僅かな工具と残骸からの部品入手と言う、ほぼ徒手空拳でレギオスやトレッドを(しかも4機。加えてモスピーダ4台も!)野戦で完璧に整備しちまう、どう考えても整備兵最強の男だから。
冗談はさて置いて、レギオスがサイズS(10m)でビーム砲3門に小型ミサイル96発(斉射可能!)なのが強すぎるのかも。ブースターのトレッド単体でも鬼の様に強いし(ビーム合計12門。中型ミサイル48発。バルカン3門。ナパーム弾72発!)、合体してもMサイズだからなぁ。


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 ブラッキーの登場は衝撃的だった。

 実際、存在しないと仮定していた男が、こうして目の前に現れたんだからビックリだ。

 だって、今まで目の前に居た『宇宙円盤大戦争』版の大男と比較したら、その容姿は如何にも〝異星人です〟風のヒューマノイドだけども、尖った頭といい、長い耳や人間じゃ考えられない様な暗灰色の肌といい、全くの別人なんだからな。

 

「ベルデであります。ガデル兄貴……いえ、中将の弟になります」

  

 と、自己紹介する映像に「どう言う事だ。顔が全く似てないじゃないか」と質問すると、ブラッキーは「こいつはベルデ。血は繋がっていませんが弟分です」と説明を始めた。

 ベガ星の孤児院で共に育てられ、血の繋がりこそ無いが兄弟だったと言う。

 因みに孤児院の名が〝ブラッキー孤児院〟だった為、他にもブラッキーと言う姓を持った多くの兄弟・姉妹が存在していると言うから、もしかしたら、これからも続々と何とかブラッキーが現れるのかとうんざりする。

 

「ガデル?」

「私の名です」

「弟はベルデか。これからは迂闊にブラッキーと呼べないな。中将」

「いえ、殿下を患わせる訳には行きません。私はそのままで結構」

 

 まぁ、そう言う事にしておこう。

 俺は新しく現れたブラッキーの方を、下の名〝ベルデ〟と呼ぶ事に決め、何故、このマザーバーンに着艦許可を求めたのか説明を求めた。

 

「その制服はルビー星行政府の物だな」

 

 原作のブラッキーの立ち位置は軍人だったが、この世界ではガンダルと同じく官僚だったらしい。

 俺が軍よりも官僚機構の方に力を入れているからかも知れないが(とにかく、今の俺の支配領地。ベガ星管区には役人が不足気味なんだ)、にしても、首都圏が緑の怪物騒動で大混乱中の今、わざわざ訪れる理由は何かと聞きたい。

 役人だったら、現場で復興作業に当たるのが筋って物だろう。

 

「は。行政府の一員として、ガンダル長官の遺体を首都から移送していまして……」

「何っ、遺体だと?」

 

 ブラッキーが叫ぶが、思わず俺も身を乗り出した。

 続いての説明で、遺体回収後に安置所がウードウ魔術団に襲われた事が知らされる。

 その目的がガンダルの遺体奪取だと思われたので、急遽、遺体を政庁地下格納庫から円盤で脱出させ、ここまで持って来たのだと言う。

 

「その責任者に選ばれたのが貴様か。ベルデ」

「兄貴と知り合いならば、と言う理由だけですが」

 

 聞けば、政庁での地位は課長クラスで特別偉い訳でも無いが、低くも無いらしい。

 どっかの地方自治体の〝すぐやる課〟みたいな雑務担当の長で、原作でも〝攻撃隊長〟とか言う、マザーバーンの艦長クラスだったから、まぁ、妥当な地位か。

 

「ガンダルの遺体なら検分と、必要ならこちらで荼毘するのもありだろうな。許可しよう」

「着艦許可する。第8ゲートから入れ」

 

 艦側面のゲートが解放されてハッチが上がって行き、着艦用の誘導ランプが点滅する。

 ベルデの小艇がそれに従って侵入するが、ミニフォーに比べて遥かに小さなサイズだから、ハッチに飲み込まれる様な感覚を覚える。

 

「殿下。弟の到着で中断してしまいましたが……」

「何だ。あの映像の続きか?」

「は」

 

 着艦作業を目で追っていた俺に、中将がおずおずと声を掛けてくる。

 

「実はあのゴーレムの動画に、不鮮明ですがルビーナ様らしき姿が……」

「何だって!」

「それと不可解な物も……。取りあえず、ご覧下さい」

 

 それは衝撃的な映像であった。 

 

             ◆       ◆       ◆

 

 衝撃を受けた映像は後で語るとして、とにかく俺達は艦内を移動して格納庫まで降りる。

 このマザーバーンは大型艦だけあって、艦内も馬鹿でかいので移動には乗り物を使わないと速やかな移動が困難である。

 戦艦大和の艦内に鉄道(でも、規格はナローゲージ)が敷かれていたって話は有名だけど、大和が全長263mなのに対してマザーバーンは450mであり、しかも円盤型だから体積は比較にならぬ程大きいのが理解出来るだろう。

 

「殿下に敬礼っ」

 

 到着した先には儀仗兵がいてずらっと並んで敬礼してくれる。

 俺に伴うのはブラッキーと秘書のハツメ、そして艦内の正規兵だ

 

「お待ち申していました。ガンダル長官はこちらです」

 

 ベルデが遺体の入った棺の方へ案内しようとするが、何故か、嫌な予感がした俺は彼を制止した。今まで経験から、こんな予感は大切にしようと思う。

 

「まず、ウードウ魔術団が襲って来た状況を聞こう」

 

 危険を感じた俺はベルデを艇から離させて本題に入るが、その際に隣のハツメに目で合図する。

 阿吽の呼吸とでも言おうか、シャーマンの少女はすっと離れる。

 

「は、それは紅玉宮で長官を発見した所から始まります。長官は何かを伝えようと……」

「待て、ベルデ。ガンダルはその時点で生きていたのだな」

 

 顔色を変えたブラッキーが弟に問い質す。

 彼は頷き「瀕死でしたが……。レディがどうのと」と告げる。

 

「続けろ」

「は、遺言なのかは知りませんが、長官はそれを告げて死亡。遺体は酷い状態でしたが、それでも五体満足だったので、そのまま中央政庁の仮安置所に運ばれました。肉片になった様な死体も多く、殆どの遺体は現場に放置されたままです」

 

 そこへウードウ魔術団が襲いかかって来たのだと言う。

 赤い服を着た女と、ゴーレムであろう八本の足をのたくらせたタコ頭の怪人が出現したらしい。

 中央政庁が襲われたとの情報はまだ入っておらず、俺達は何でそんな事態が入電して来ないのかと驚く。

 

「タコ頭?」

「はい、頭部がタコその物で八本の足をうねうねと。墨も吐きました」

「それは気持ち悪いな」

 

 下半身は腰みのだけの黒人の男で、頭部の八本足の下に肩と二本の腕も持っており、両手に大きな棍棒を掲げて突撃して来たらしい。墨を吐きながら。

 驚くべき事にこいつは頭部のタコの足を広げてローターみたいな動作で、頭をくるくる回転させながら空を飛んだと言う。

 

「そいつも空を飛ぶのか」

 

 ここで俺が口を開く。

 

「速度としては大して速くはありませんが、空中静止も可能です」

「先程のホークマンと言い、飛び道具もあると言いますから、対応策を考えねばなりませんな」

 

 ブラッキー兄弟の言葉に俺は頷く、確かに空戦機能と飛び道具を持つゴーレムは脅威だ。

 飛び道具だとしても墨の射程はせいぜい数十mだから、普通に考えればそれ程脅威では無さそうだが、何と言ってもホバリングが厄介だ。

 速度が遅くても場所が政庁内、そこを飛んで来るとしたら狭い室内に自在に対応出来る事になるから、屋内戦ではただ直線的に飛ぶホークマンよりも手強そうだ。

 

「そう言えば、ジィルは何か言っていたのか?」

 

 赤い服装の女をジィルだと見当を付けて尋ねると、ベルデは「あの女の名ですか。確か、ガンダル長官のみを目標にしろと命令してました」と報告した。 

 何の理由があるのかは知らないか、それを聞いた職員達は必死に防戦しつつも、霊安室となっている地下から遺体を運び出し、この円盤に乗せてマザーバーンに到着したのだと語る。

 

「相手はゴーレムだ。良く間に合ったな」

「それが兄貴。間一髪でした。タコ頭の野郎、ゲートやシャッターを降ろしても墨を吐いて扉を溶解してしまうんだから」

 

 待て、奴の戦力を上方修正だ。

 吐く墨が、超合金をも溶かす強酸性と聞いて怖気が走る。

 

「殿下。大変です!」

「大変とは、こう言う事かえ?」

 

 ハツメの声と同時に耳にしたくない女声が響き、ジィルの巨大な顔のビジョンが、ゆらりと空間が歪んで前方に唐突に現れた。

 ブラッキーが拳銃を抜くと俺の前に出て奴と対峙するが、ジィルの方は気にも留めず、むしろ、腰砕けになってへたり込んでしまったベルデの姿を見て笑う。

 

「殿下。あれは呪術です」

「ハツメか。超能力にも似た技かあるらしいが……。それよりも大変とは?」

 

 さっき、大変だと声を上げたのがハツメだったのを思い出し、俺は秘書に説明を求める。

 先にベルデの乗機を確認させていたのだが、それが「大変」と口にしたとしたら。

 

「ガンダル長官の遺体がありません」

「なにっ!」

 

 前方の巨大な顔を気にしつつも、俺はベルデの乗っていた小艇に駆け寄る。

 後部ドアが開いていて中に安置されたカプセル状の棺が見えたが、蓋が乱暴にオープンされている。当然、その中には遺体は無い。

 

「誰かが持ち去ったのでしょうか」

「いや、待て。近付くな!」

 

 ヤーバン式の棺は宇宙葬儀にも対応する為に、繭状のカプセルで片開き式の扉が蝶番で付けられており、一旦閉めると気密構造になるので、掛けられたロックを外さない限り、外部から生半可な力を加えても開かない。

 だが、それが今回の場合、外的な力で破壊されている様に見えたからだ。

 そう、まるで内側から乱暴にこじ開けた様な……。

 

「ひっ!」

 

 びくんとしてハツメが身を躱すと、その側をビームがかすめた。

 続いてシャーマンの少女は体操選手みたいに側転して、次の数射を躱したが、突然、艇内から撃ってくるビームが途切れた。

 

「やれやれ」

 

 艇内から姿を現す大柄の人物に、初対面のハツメは「誰なのです」と誰何する。

 そいつは答えずに、「ガンダルめ。護身用ピストルの整備を怠っていたな。カートリッジが空ではベガ王子を撃ち殺せぬでは無いか」と物騒な言葉を口にする。

 その姿は、まさか、まさか……。 

 

「お久しぶりだねぇ。オカマ王子」 

「何故、地獄から舞い戻って来た。レディ・ガンダル!」

 

 

〈続く〉




約3,700文字。また増えてしまった。

ブラッキー孤児院。
いや、兄と弟を兄弟にするには、これしか方法がなさそうなので(笑)。
可憐な美少女タイプのブラッキーとか、ロリロリ幼女なブラッキーとか、美少年タイプのブラッキーとか居そうだな。
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