マシーンパンサー君。君の犠牲は忘れないよ。
改訂。
段落分けに★導入。
発射されたロケット弾は真っ直ぐ、俺達のオープンカーへ向かっていた。
肉壁となり、テロンナ姉様を庇うブラッキー。
ズリルは「殿下は身を低く」と叫ぶ。
そんな中、床に寝そべっていたロボットクロヒョウが不意に立ち上がり、車体を蹴って跳躍する。
「マシーンパンサー!」
姉様の声に一瞬、獣の姿を模したロボットはちらりとこちらへ顔を向けたが、そのまま自分を弾丸としてロケット弾へ体当たりする。
爆発。
ロボットは呆気なく粉砕される。しかし、その犠牲で兇弾の直撃は避けられた。
だがその破片と爆風が防げず、沿道の群衆はもろにその被害を浴びる事となったし、俺達の車だって例外じゃ無いけど、爆風は突如、発生した不可視の障壁で防がれる。
「ベガ、貴方……シールドを」
姉上の美しいけど呆けた声。
俺が力を抜くと、周囲の障壁は消滅する。無意識に超能力を使ってしまったらしい。
「賊は?」
まだ、第2弾があるかも知れないと捜すと、襲撃者は武器を捨てて逃走中だった。
護衛の装甲車(姉上の領地であるルビー星軍所属だ)が、砲塔を指向して狙っているが、群衆の中に紛れているので撃てない。
そこへ上空を飛んでいたフリード軍の円盤が急降下してきた。
「なっ!」
俺は驚愕した。フリード軍の円盤が地上を掃射したのである。
ニードルシャワー。
襲撃者は勿論、群衆を巻き込んで硬質の針を打ち込まれた空間は、人も物も問わずに串刺しにされ、惨たらしい惨状を呈している。
だが、確認出来たのはそこまでで、立ち上がった足腰から力が抜け、俺の視界は急速に暗黒へと沈んで行く。
「殿下っ、気をしっかりと、おいっ、スピードを上げろ!」
ズリルの声と車が速度を上げのだけが分かった。
後悔先に立たずだが、『しまった。超能力の使いすぎだ』と俺は舌打ちする。貧血かそれに近い状態になるのは、今までの経験でもあったからだ。
★ ★ ★
「あっ、姫様、殿下がお目覚めになられました」
次に気が付いた時には、俺は寝台の上に横たわっていた。
テイルの声をぼんやり聞きながら、『ここは何処だ?』と思考を巡らせる。
シンプルではあるが豪華な内装。大きな窓が開け放たれ、バルコニーの手摺りが見えている。その先には白亜の塔がそびえ立っていて、夕日を浴びて美しい姿を見せていた。
「フリード星の王宮かな」
「正解です。殿下…忌むべき虚飾の栄華を誇る」
いつの間にか、ベッドの傍らにヨナメが立っていた。
ズリルは見えない。テイルは姉上を呼びに行ったのか、部屋には居なかった。
「君は確かフリード星の生まれだったね。ヨナメ・バロン」
「はい。しかし、生まれながらの貴族ではありません」
他星からベガ星の大学へ留学するのだから、当然、エリートであり、一般庶民ではあり得ない。
庶民ならば、ズリ星のズリルみたいな余程の秀才でも無い限り、普通は地元の教育機関へ入るからだ。
一応、調べた経歴ではフリード星の貴族、バロン男爵の娘となっていた筈だが、何か裏事情がありそうだな。
「忌むべき虚飾の栄華か。君は何か、故国に不満がありそうだね」
「無いと言えば嘘になります。本当はこんな事をベガ殿下に頼める筋ではありませんが……」
侍女姿の彼女は跪づき、頭を垂れる。
「聞こう。但し、それを叶えるのかは話は別だよ」
「まず、私の正体。私は間者としてフリード星から送り込まれました」
説明が続く。バロン男爵の娘との身分もその為の偽装に過ぎず、実はフリード星諜報機関の一員であり、ベガ星を内偵すべく送り込まれた草であると説明する。
バロン家は困窮しており、報酬の大金に目が眩んで名前貸しの提案に一も二も無く乗ったと言う。ヨナメ本人は男爵と親子として接した事はないそうだ。
「それでテイルとやり合えたのか。実力はありそうだな」
「地位的には高くありません」
説明によるとフリード星は各惑星へ、こうした間者を送り込んでいるらしい。
まぁ、これに関しては我がヤーバン始め、何処の星でもそうだから非難する事でも無い。情報収集は常に怠らないのが惑星国家では常識である。
ヨナメが送り込まれたベガ星は重要度でのランクは低いらしい。ま、納得だ。だって田舎惑星だもんね。だから、ヨナメの地位は良くて小隊長クラス程度の物で、本国からの監視は厳しくない。
今回、ズリルを通して俺に接触できたのも狙ってでは無く、たまたま偶然の僥倖に過ぎない。だが、ヨナメはこれを最大限に生かそうと考えたそうだ。
「ほう?」
「正体を明かしたのもその為です。ベガ殿下、私は貴方を見込んでお願いしたかったからなのです」
目が真剣だな。これは。もしかすると良い機会なのかも知れないぞ。
「フリード星の現体制を滅ぼして貰いたいのです」
「故郷を売るのかい?」
「いいえ、腐った政治体制を覆し、真の意味で自由で豊かな緑の星に戻す為です。
ベガ殿下。この数ヶ月、ズリルと共に貴方を間近で見て参りました。貴方こそ、真の帝王。人々を幸福に出来る器だと見込んでの事なのです」
〈続く〉
ヨナメの正体露見。
バロン家は『グレンダイザー』のナイーダさんちです。
えーと、この話、時間経過としては開始されてから、約半年経っております。
流石に円盤獣とかが、数週間でぽんぽん開発できる訳無いですからね。如何にズリルが天才だとしても、まだ試作段階ですんで。
まぁ、基本フォーマットが構築されたら、原作通り、一週間に一体ペースで造れるのでしょうけど(笑)。
またデューク・フリード登場まで書けなかった。残念。