60年代に製作されて、東京12チャンネルの「まんがの国」とかで放映されていたハンナ・バーペラプロ作の短編アニメなんだけど、怪獣とギャング、宇宙人が同一レベルの敵として語られる恐ろしい作品(笑)。
主題歌は確か、2バージョンあったかな。
主人公のシンドバットはヨットで旅する少年だけど、マジックベルトなる魔法のアイテムを締めていて、こいつを使うとマッチョになってどんな相手でもぶん殴って倒すと言う、とってもアメリカらしい作品。まぁ、怪獣だろうとギャングや宇宙人だろうと、ぶん殴れば同じだわな。
実際、海賊、空飛ぶ円盤、ドラゴンやエレファントも、ぶん殴る力技で無事解決してたけど、何で戦う前に話そうとかせず、直ぐさまぶん殴るのだろーか(笑)。
◆ ◆ ◆
突然だった。
戴冠式で重たい王冠を授けられて、何とかボロを出さずににっこり笑ってポーズを取った時、紅玉宮全体がまるで地鳴りの様な不気味な音に包まれたからだ。
音だけではなく、振動を伴って姿を現したのはグリーンモンスター。植物の怪物だった。
床を割り、壁面を突き破って現れたそれが、たちまち伸びて室内を蹂躙する。
「きゃあっ」
蔓状の触手が幾重にも巻きついて、自分を拉致する動きで拘束の上、連れ去ろうとする。
勿論、護衛の為に武官が参列していたのだが、己を誤射するかも知れないと躊躇っている内に緑の怪物から、種みたいな物を浴びせられて仕留められてしまった。
マシンガンみたいに蜂の巣になるのを見て、彼女はぞっとなった。
「ガンダルっ!」
知り合いが倒れる光景を見て、ルビーナが絶叫する。
義父を頼ろうとして狼狽するが、緑の壁が一面を包んで視界を遮ったまま、吊し上げられる様な形で空中の住人となってしまう。
「助けて、助けてぇ!」
頭に載っていた戴冠がずり落ちる。
泣き叫ぶがそれに答えてくれる者は皆無だった。
『ああ、この緑の怪物の目的は何かしら?』
ぐんぐん伸びる蔦に拘束され、移動させられている内に姫は疑問を整理し始める。
最初こそは五歳児らしく、感情に身を任せて泣き叫んでいたが、普段から帝王学として教育されていた教え〝危機に陥った時、パニックにならずに状況を見据えなさい〟が働き始めたのである。
『私に危害を加えないって事は、明らかに拉致目的よね』
殺すつもりならば、最初に種マシンガンで穴だらけにされている筈だから、これは決定事項だと思われる。
では、敵が何者なのか?
『幾つか考えられるけど、現在、ベガ星連合軍と敵対する者……』
まずは悪党公団ワルガスダー。
正体不明の異星人集団で、宇宙船団を持つエイリアン達だが、このやり方が科学に頼る異星人っぽくはないのが気に掛かる。
だが、バイオテクノロジーによる生物兵器って線もあるので除外も出来ない。
『最近、ワルガスダーと大規模な交戦はないのだけどね』
辺境での偶発的な戦闘はあるものの、普段からこんな感じなので通常レベルだ。
相変わらず、ワルガスダーの行動はランダムなので何が目的なのかは今ひとつ、理解出来ないというのが、情報部からの分析で、マルク本星との交戦以降は沈黙を保っていると行って良い。
『もっともランダムな行動の一つが、この拉致だって可能性もあるわね』
と言う事で、一応保留。
次にウードウ魔術団。赤衣の魔女ジィルが率いるキバラ古代文明の残党だ。
先日の騒ぎからの続きと見ると、黒幕としてもっとも可能性が高い。
『この緑の怪物もゴーレムなのかしら?』
触っている感触からすると本物の植物に近いので、無機質なゴーレムとは違う気がする。
もっとも彼女は本物のゴーレムを触った事はないので、今、感じているその感触がゴーレムとは違うとは断言不可能だ。
しかし、ゴーレムってこんなに生物っぼいかのかとは思えない観念が頭にある。
岩石や粘土が主な構成物質だとするならば、やはり違う気もする。
『これも保留対象だわ』
キバラ文明同様に古代文明の残党って線もあるが、アズテク文明の勇者アステカイザーは除外しても良さそうだ。
第一、彼の戦力は宇宙を走るトライク一台と己の腕力で、こんな道具を使った事例はない。
同じく、マルク文明圏のラミア。
もっとも、調査によるとラミアのレプリカで真っ赤な偽者だったらしいが、こいつも怪しい。
『巨大な植物って点がね』
一応、滅んだらしいと言う報告はあり、マルク本星での事件以降、動きは何も無いらしいのだが、現れたグリーンモンスターと酷似しているので関連性が疑われる。
オストマルクの反主流派、ウエストマルクの原理主義者なんかのベガ星に反発を持つ勢力も考えられるが、彼らにこれだけのテロを起こせる力があるかは疑問である。
『外部勢力』
現在、ヤーバン連合と交戦中の星々、及び制圧下の星系だ。
一番厄介な相手は、ベガ星連合軍とも交戦しているガイラー星軍だ。
強大な科学力と軍備を併せ持ち、一進一退の戦いを繰り広げてはいるが、担当戦区が正面ではない分、余り脅威にはなっていない。
まぁ、乾坤一擲の秘策としてこの事件を起こしたって可能性も否定出来ないけど。
『銀河帝王デスクロスとか、本当に居るのかは知らないけど』
以前、フリード星を滅ぼす為に襲って来た未知の敵であり、この存在によってルビーナは実の父親を失ったのだが、銀河帝王デスクロスとはその軍勢の親玉であるらしい。
らしい、と言うのは義父であるベガの語った話による想定で、多分、怪物戦艦〝オリオンの虎〟の背後に居た者がそうであるとの予想でしかない為だ。
実際、義父はその存在をデュークフリードから語られただけで、デスクロス本人を目撃した訳ではないとの話であったが、そんな奴らが襲ってきたとしたら、対処は余り考えつかない。
『にしても、何処まで延びるの。これ』
ジャックと豆の木状態で延々と成長し続ける蔓に巻きつかれ、今は遙か上空まで運ばれてしまった小さな姫はため息を付いた。
「考えている内に、ルーペを思い出しちゃったじゃない!」
普段から小言を言って来る、ぱっつん黒髪吊り目の侍女が頭に浮かんだルビーナは、ここで初めて口に出して悪態を付いた。
帝王学の教師は彼女担当だったからだ。
「そりゃね。お仕事だって言うのは分かってるし、あたしが姫らしくないって嘆くのも承知してるわよ。でも、あたしは子供なのよ。まだ五つなんだから、我が儘してもいいじゃない!」
誰も聞いていないのを良い事に、普段から溜め込んでいた不満をぶちまける。
ルビーナはルーペ・ハズキを嫌ってはいないし、感謝もしていたが、素直になれないだけなのだ。
「誰っ!」
「忍び笑いのつもりだったんだが、やはりベガ王子の血縁だけあるか」
くすくすと誰かが笑っている様な気がして、発した誰何に答えが返って来た。
「我が名は〝黒いベルバラン〟」
〈続く〉
約2,400文字。
閑話です。暫く閑話が続きます。
さて、黒いベルバラン登場。えっ、アル○バロンのあの人じゃないよ(笑)。
前話でルビーナの事をマリアと書いてしまった。ケアレスミスです。訂正しました。