ベガ大王ですが、何か?   作:ないしのかみ

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今回の作業用BGMはゲーム『ブラウン通り三番目』から「春酒」です。
店舗経営ゲーム。曲は四季に合わせて春・夏・秋・冬と店内BGMとしてそれぞれ用意されてるんだけど、店が繁盛して規模が大きくなると並→盛→特と、最初はソロだった曲に伴奏付いて、楽器も増えて豪華になるのだよね。
その中でも最初の「春酒」をチョイス。実は「冬酒」の並はゲーム中に聞いた事がない。大体、秋には盛段階まで行ってるからね(笑)。

ソフトハウスキャラと言う会社のマイナーSLGだけど、好きでした。
入手した東方のドレス(巫女装束)を売るのが惜しくて、ワザと高値を付けたらあっと言う間に売れたり、売れ筋の品物を揃えるのに苦労したり、最後は冒険者斡旋の口入れ屋まがいの事して稼いだり。お馴染みの葵屋イベントも楽しかったな。


142(閑話)

「黒いベルバラン……?」

「いかにも」

 

変な名前を名乗った男(だと思われた)の姿を見ようと姫は首を回してそちらの方を向くと、思わす「あっ」と声を上げそうになった。

 そいつの姿は騎士だったからだ。

 

「なっ……何」

「この姿が気になるのかね」

 

 騎士と言ってもフルプレートとか重装備の鎧で、ガチガチに身を固めているって風情ではない。

 上半身は鎖帷子に胸甲を装備し、黄色いシャツに黒い大きなバラの模様があしらわれている。

 下半身はスペーススーツ風のボディスーツに恐らく反重力ブーツを穿いて、七色の羽根飾りの付いた黒い帽子を被り、顔には黒いアイマスクを付けている。

 そして、黒いマント翻して馬に乗っていた!

 

「馬が浮いているのが」

「大した事では無いよ。君もアズテク文明とかキバラ文明を知っているだろう」

「それと同系統の……」

 

 ベルバランはふっと笑って「想像にお任せするよ」とだけ言う。

 蔓に巻きつかれ、空中を移動するこの状態の我が身に真っ黒い馬で追随しているが、馬はどうやら生身ではなく、機械仕掛けのメカホースっぽい。

 移動する際に、何故かギャロップ風に地面も無いのに宙を駈けているのが異様である。

 

「さて、グレース姫。ベガ王子の養女よ」

「ルビーナよ」

 

 改名されたばかりの名を叫ぶ。

 ベルバランは「はっはっは」と笑うと、大袈裟に「いや、失礼」と一礼する。

 

「ルビーナと言う名は使いたくないのでね」

「え」

「個人的な理由だよ。さて、今の状態から逃れたいかね?」

 

 三十路には達していないけど、多分、二十歳は超えているだろう男の声が問いかけてくるが、ルビーナの答えは勿論、〝是〟であった。

 

「でも、何故、貴方は……」

「黒いベルバラン」

「長ったらしいのよ。以後、貴方かベルバランと省略よ」

 

 途中で混ぜ返された為、五歳の幼子は口を尖らせる。

 ルビーナの問いは「何故、自分を助けるの」と「ベルバラン。貴方は何者?」とのオードソックスな物である。

 

「もっともな疑問だな」

「答えなさい」

「今の所は、我々は姫の敵ではない」

 

 しかし、ルビーナはその答えを鵜呑みにする訳には行かなかった。

 帝王学教育の一環として、交渉相手の言葉には裏があるとルーペや、養父からも教わっていたからだ。

 

『我々。ふぅん、ベルバランには仲間が居るのね。厄介な』

 

 黄色い騎士の言葉を反芻し、素早く頭を回転させる。

 こうしたヒーローもどきは、アステイザーみたいな単独タイプも存在するが、組織だった連中も当然存在する。

 それが昔のバトルホークや、ヒーロー数人だけの小集団なら良いが、バックに秘密結社や、最悪、軍隊みたいな大規模な存在が付いていると厄介であるからだ。

 

「我々? 貴方には仲間が居るのね」

「ああ。俺は一人では無い」

 

 失言かと思って仲間の事を口にしたが、ベルバランはあっさりと認める。

 

「で、このままウードウ魔術団を中心とする勢力に姫を利用されたら困る為だ」

「何故?」

「ああ言う連中に世をかき乱されては迷惑だ。ならば、まだベガ政権の方がマシだからな」

 

 ルビーナは『マシね』と納得した。

 まだ真意を全て把握した訳ではないものの、今は事態を動かした方が良さそうだと判断する。

 

「取りあえず、私を解放するのなら信用するわ」

 

 黒いベルバランを名乗る男は満足そうに頷くと、腰から細剣(レイピア)を抜くと一閃させた。

 身体を拘束していた蔦が斬り裂かれ、「あっ」と言う間に(本当に「あっ」と声が出てしまった)解放されると空中へ放り出されたが、ベルバランの太い腕がそれをキャッチする。

 

「よしよし、流石はルビーナ姫の娘だ」

「ルビーナは私よ」

「失礼。先代の、君の母上の事だ。掴まっていなさい」

 

 先代とは、母テロンナの事である。

 ベルバランはルビーナ姫を後ろに乗せて、細い両腕が腰に回ったのを確認すると拍車を入れた。

 空中を駈けるメカホース。

 

「ふむ。どうやら誤魔化しも効かぬ相手が出て来た様だ」

「え」

「この植物兵器は単純で感覚を欺瞞出来たが、ウードウ魔術団のゴーレムは高い知性を持っている物と見える」

 

 黄色い騎士スタイルの男の表情が険しくなる。

 その視線の先にあったのは手に槍を持ち、背中から茶色の翼を生やしたホークマンだ。

 速度的には今、空中を走っている馬以上だろう。

 

「ウードウ魔術団なの?」

「恐らくな。俺も初めて相対するから良くは判らんが……。ほう、マザーバーンも出港したか」

 

 紅玉宮から離れた宇宙港に停泊していた筈の巨体が、大地を離れてゆっくりと飛翔を開始していたのが見える。

 ミニフォー部隊も発進させているらしく、小さな影が乱舞しているのが判る。

 ベガトロン砲の発砲音も聞こえるので、交戦中なのだろう。

 

「酷い有様ね」

 

 眼下に目を移すと、既に宮殿はねじくれた緑に蹂躙され、大木にも匹敵する柱の様な、高さ百mにも達しよう屹立する幹から毒々しい大輪の花が咲き誇っている。

 紅玉宮自体がこの化け物の植木鉢みたいになってしまっている。

 

「ルビー星は大打撃を受けるだろう。真に外道なやり方だ」

「怒りを感じているの」

「人として当然だな。少なくとも、正当な戦のやり方では無い」

 

 騎士の意外な回答に、ルビーナは面食らう。

 同時にベルバランと言う男を、単なるコスプレ怪人から少し見直した。

 

「ヤーバン軍も堕落した物だ」

「それって、敵は身内だって……」

「世の中には君の養父を憎み、その力を削ぎ落としたいと考える奴が存在すると言う事だ。ちっ、やはり仕掛けてて来るか」

 

 ベルバランの舌打ちと同時にウードウ魔術団のホークマンが、身体を急角度にバンクさせて急降下して来る。

 ホークマンだけに本当に〝鋭い鷹の目〟を持っているのかも知れない。

 騎士は抜き身のままのレイピアをすっと立て、正眼で迎え撃つ体勢に入った。 

 

 

〈続く〉 




約2,300文字。

暫くはルビーナ姫と黒いベルバランのお話が続きます。
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