ベガ大王ですが、何か?   作:ないしのかみ

148 / 173
今回の作業用ラジオドラマ『エメラルダス』から、挿入歌「枯木霊歌」(かれきれいか)です。
松本零士原作の『枯木霊歌』って短編漫画から作られた歌なんだけど、首を吊った白骨が彷徨い、森を歩く歌詞が「良くまぁ、この歌を曲にしたなぁ」と感心した思い出があります。空しいフレーズが宇宙を旅して倒れた者共の鎮魂歌にふさわしい曲でしたね。

原作は亡霊が主人公。逃亡者に手を貸したと見せ掛けて、実は破滅に追いやると言う、死者らしい外道さ亡霊らしくてがグー。その正体は枯れ木で首を吊った白骨死体。風に吹かれて笑っているラストが印象的でしたね。



148

 第一次攻撃隊の四十機が発進する。

 全てミニフォー部隊であり、その殆どは無人機だ。

 

「さて、初実戦か」

「まだ艦載機戦ですよ。殿下」

 

 初実戦。しかし、これには語弊がある。

 後方からの指揮ならば、既に何度か経験済みだからだ。

 今回みたいに絶対に直接、敵艦と干戈を交える事態が初と言うだけで、ハツメが言う通り、まだ艦載機戦だから、直接砲火は交えていない。

 まぁ、今までは万全の体勢を整えて、敵艦を近寄らせなかったせいなのだけどね。今回の様に劣勢では旗艦を前に出さざる得ない。

 

「格納庫からです。整備完了しました」

「良し、デコイ射出と共に発艦開始!」

「はっ」

 

 それから約十五分後、マザーバーンの艦載機整備も終わったみたいである。

 艦の舷側に配置されている発射管から、ミニフォーを模したダミーカプセルが射出されると同時に射出口から第二次攻撃隊が発進し、ついでに上部ハッチが開いて、円盤獣ギルギルが四機放たれる。

 

「さて、これで艦載機は打ち止めだ」

「戦果に期待しましょう」

 

 艦船と艦載機。

 同じ宇宙船だけど、速度は艦載機の方が速く設定されている。

 いや、艦船だってやろうと思えば同じスピードは出せるけど、サイズの大きさから機動性に差が出てしまう為、小回りが効く艦載機の方が速度を出しやすいのだ。

 まして無人機だから、耐G制限を無視出来る分、やろうと思えば、ミニフォーは従来の数倍の速度で巡航可能だった。

 

『まぁ、理論値だけどね』

 

 編隊長機は有人機だから、装甲服並に重厚な耐Gスーツを着込んで操縦する苦行を行えば可能だけど、今の所、そこまでする必要は無いとして、実際の運用はなかった。

 が、円盤獣は無人機だからそいつが可能である。

 同時に発信した攻撃隊は愚か、第一次攻撃隊に下手すると追いつく勢いで突っ走って行く。

 

「ギルギル隊が一番乗りですな」

「うん」

 

 スクリーンに映るブラッキーがぼやいた。

 やっぱり、一番槍は自分の部隊が取りたかったのだろう。

 

「空爆ロボを引きつけてくれる事を祈るよ」

「お、噂をすれば……」

 

 母艦であるゲルモスから空爆ロボが発進する。

 数は一体だ。巨大機動兵器ゆえ、こっちの円盤獣みたいに数は揃えられない代わり、こちらの約三倍、小型の宇宙駆逐艦並のでかさがある。

 確か『グロイザーX』のサイズが約百メートル。対して『グレンダイザー』は全高約三十メートルだから、敵対する相手のサイズに合わせて、空爆ロボも円盤獣も仮想敵とほぼ同じ大きさに成らざる得ないのは当然だ。

 

「しかし、でかけりゃ強いって訳でもない」

 

 ギルギル四体は散開し、自分よりも遥かに大きな空爆ロボを取り囲む。

 円盤獣が空爆ロボを牽制する中、第一次攻撃隊のミニフォー部隊は敵艦隊との位置を、空爆ロボを挟んだ進路上に置き、急速に接近して行く。

 空爆ロボへの誤射を避ける為、ガイラー軍は発砲を控えざる得ないのだ。

 

「第二次攻撃隊のダミー展開」

「了解」

 

 俺の命令で第二次攻撃隊と同時に発射されたダミーカプセルに、作動用の信号が送られる。

 信号を受けたカプセルは、むくむくと展長してミニフォーそっくりな姿となる。

 

「ほぉ。見分けが付きませんな」

「だろ」  

 

 そっくりと言っても、遠目から見てそう見えるだけの簡易モデルである。

 良く見ると細部は省略されているが、問題はそこでは無くて、センサーで捉えると本物そっくりの反応が出る様に作ってあるのがミソである。

 

『推進器も備えてあるから、ちゃんと機動するしな』

 

 慣性でただ飛んでるだけでは無く、安物とはいえ、移動用のエンジンを積んでるから細かな動きで本物っぼくみえる。

 目視距離で接近しない限り、各種センサーはおろか、光学系の観測機器でも遠くから見る分には判らないだろう。

 

 だけど、この世界にこうしたデコイとか、欺瞞に関する思想に無関心なのが驚いたよ。

 良くて形だけの風船とか、或いは本物そっくりの偽物(偽グレンダイザー的な)を用意するとか、手を掛けたやたら凝った物が登場するか、何も考えずに、軍同士が馬鹿正直にぶつかり合うんだよね。

 対費用効果に見合ったダミーを作る思想が無い。

 けど、『そう言えば、昭和時代のSFにあんまりそう言う考えは無かったな』と思い当たる。

 んで〝無いのなら、作ってやろうホトトギス〟のノリで開発させたのが、先のデコイだ。

 

「数は三倍に増えてる。三方から突撃させろ!」

「了解」

「第二中隊は、例の物を使え」

  

 無論、開発陣は〝それは卑怯なのでは?〟と難色を示したよ。

 でも俺は、かつて〝宇宙の餓狼〟との異名を取った初期ヤーバンの英傑、ドルメ大王の例を挙げて反論したのさ。彼は囮やダミー、デコイを積極的に使って劣勢さを挽回して敵を退けた戦術家だったからね。

 むしろ、この偽装分野では〝ワルガスダー〟の方が進んでいたから、それを参考にする様にと命令して、「ドルメが卑怯者なのか?」と口にすると、大抵の技術者は黙ってしまった。

 流石にヤーバン王家を否定は出来ないんだろうな。

 

「散開した編隊にガイラー軍が反応します」

「良し。敵の火線を分散させたな」

「第一次攻撃隊。突撃します!」

 

 敵艦隊の火線が分散した所に、今まで空爆ロボの後に位置していた第一次攻撃隊が躍り出た。

 空爆ロボがそれに反応して、第一次攻撃隊に攻撃を掛けようとするが、四体のギルギルが高速回転しつつ、空爆ロボに体当たりをする。

 空爆ロボはそれを避けようとするが、一体、二体は回避するも、死角から突っ込んで来る円盤獣を全部は躱せず、回転ノコギリを喰らったみたいにダメージを受けてしまう。

 

「余り効いていませんな」

 

 様子を見ていたブラッキーが嘆息する。

 火花が散って見た目は派手なんだけど、与えるダメージは軽微に見える。

 ブラッキーとしたら、一撃で敵機をえぐる様なダメージを期待してたのだろうけどね。

 

「それでもダメージは入ってるよ」

「しかし……」

「むしろ、主導権を渡さないのが肝要なんだ」

 

 円盤獣の攻撃は一撃離脱。

 敵が反撃しようと体勢を立て直す前に、別のギルギルが突っ込んできてダメージを与える。

 結果的に空爆ロボは反撃が出来ずに、格闘アーケードゲームの〝ハメ状態〟に近い形で翻弄されている。

 その間、フリーハンドとなった第一次攻撃隊のミニフォーが横をすり抜けて、ガイラー艦隊に殺到した。

 ベガトロン砲が発射され、敵艦に突き刺さる。

 

「敵の反撃無し!」

「そりゃそうさ」

 

 空爆ロボへの誤射を避けるのには、長距離砲ではなく対空砲の類に切り替える必要がある。

 無論、対空砲の射程は短く、威力も劣るけど、防御が弱い艦載機に対してはそれで充分だ。

 普通はね。

 

 ミニフォーのベガトロン砲は大型で、ちょっとした駆逐艦クラスの威力があり、射程も長いんだよ。但し、FCS(射撃管制装置)は貧弱だから、命中精度は駆逐艦と比べるべきも無い。

 しかし、それでも敵の対空砲の射程外から一方的に撃てるし、命中精度は回転速射砲の手数でカバー出来る。

 結果として、ガイラー艦隊は一方的に被弾して行く。

 

「ゲルモスは後回しだ。随伴艦を狙え!」

「了解」

 

 艦隊決戦に入るまでに、一隻でも減らさねばならない。

 

 

〈続く〉 




約2,900文字。多いな。

「宇宙の餓狼」ことドルメ大王は読者参加企画『パラダイス・フリート』(だったかな?)のパロディです(笑)。
元ネタは「宇宙の狼」その人で、更にその元ネタは「砂漠の狐」なんだけど、狐の人は欺瞞が上手いんだよね。
ただの軽自動車をハリボテで戦車に偽装したり、移動時に材木引き摺って土煙を上げて大群に見せ掛けたり、同じ戦車のナンバーを街角回った途端に描き変えて、何回もグルグル町をパレードしてスパイを混乱させたり。
「宇宙の餓狼」のモデルは、どっかと言えばこの人だったりします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。