ベガ大王ですが、何か?   作:ないしのかみ

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今回の作業用BGMは『愛國戦隊大日本』より、OP「愛國戦隊大日本」です。
ガイナックスの前身、ゼネプロのこれまた前身が大阪芸人コンビが創り出したパロディフィルム。今見ても強烈です。敵がミンスク仮面に戦闘員ハラショマン。大書記長デスマルクスが率いるレッドベアー団だからね。
元歌が『太陽戦隊サンバルカ○』なのでカラオケでも歌えますが、原作知らない奴は大抵引いてしまいますな(笑)。

最近、と言っても約10年前に有志が2010verなる物を作ってたみたいで、ロシアが中共になっていた。天安門や粛正よりも、家は焼けて畑はコルホーズ♪の方が、何か合ってたんだけどなぁ。と書くとシベリア送りかな。ハラショー(笑)。


153(閑話)

              ◆       ◆       ◆

 

 最悪の気分だった。

 侍女長のルーペは「気にしなくて結構です」と述べてくれたが、宇宙船に乗り込んできた子供が言った一言は普段から気にしているだけあって、心をえぐる。

 ルビー星の仮宮殿。

 急遽、民間のビルを借り切っただけの応急施設だが、姫だけあってそれでも調度の整えられた……今、悔しげに寝転んでいる天蓋付きベッドを含む、領主用の私室は用意されていた。

 

「何が〝この役立たず〟よ。そんなのは自分でも理解してるわよ」

 

 血統から来る地位と身分だけで姫である。

 それは常日頃から、ルビーナの心が抱えるコンプレックスであった。

 

「義父上にもエスパーって才能があるのに……」

 

 姫王子と陰口が叩かれ、今ではそれを逆手に美貌の男の娘になっている義父だが、実母と同じく超能力が与えられており、蓋を開ければ政治的な手腕や軍事的な才能も発揮している。

 政治や軍事に評価を得るには。結構、苦労したと本人から聞いているし、持ってる超能力の才能も「大した事は無い」と謙遜しているみたいだが……。

 

「あたしにはそれすらないのよ」

 

 ぼすっと、音を立てて枕に顔を沈める。

 それを母から、才能を一切受け継いでないルビーナにとっては慰めにもならない言葉であった。

 ただ一つの希望は、「まだエスパーとして才能が開花してないだけで、潜在力としては内包している」との医師の言葉だけだったが、果たして予想は成就するのだろうか。

 

「姫様。いらっしゃいますか?」

「ヤマメね。構わないわよ。入ってらっしゃい」

 

 ノックに続いて「失礼します」の声と共に、一人の女性が私室へ入室して来た。

 年齢は部屋の主とほぼ同じ。漆黒基準の色こそ違うが、露出度の高い緑のスリングショット。頭にはティアラを付けたシャーマン族の少女だ。

 

「あら、縦ロールですか」

 

 開口一番、彼女から出た言葉がこれだった。

 ルビーナの髪型が、見事な縦ロールであったからだ。

 

「ルーペにやられたのよ」

 

 返事をしながら身を起こす。

 

「お似合いですよ」

「こっちが落ち込んでる時を狙って、奇襲されたのよ」

 

 抵抗する気力も無かった事を吐露すると、「それは侍従長の作戦勝ちですね」と笑う。

 彼女は諜報局長ヨナメとズリル行政官の一人娘、丁度、ルビーナと歳が釣り合いが取れているとして学友に抜擢された一人である。

 もっとも、ヤマメ本人は「未熟なれど護衛として、いえ、弾除けの一人とお考え下さい」と常々口にしていたが、ルビーナにとって幼馴染みであるのには変わりない。

 だから先程の様な、不貞寝という少々、プライベートな醜態に近い姿も気にせずに見せられる気軽さがあった。

 

「で、用件は?」

 

 つまらなそうに口を尖らすと、ルビーナは素っ気なくヤマメに問いかける。

 シャーマン族には珍しい赤毛をツーテールにした少女は、手にしていた書類をルビーナに示し「ご希望なされていた資料です」と告げた。

 

「黒いベルバランの?」

「そうです。アクセスするのに苦労しましたよ」

 

 諜報部へ潜入して記録を探ったのだが、母ヨナメに見付かり、こっぴどく叱られ、そして「どうせルビーナ様の命令ね」と嘆息し、あらかじめまとめられた資料を渡されて放り出されたのは、言う事では無いので伏せておく。

 

「でも調査途中らしく、余り大した情報は……」

「構わないわ。あのプティットとか言う奴の事を知りたいの!」

 

 身を乗り出してきた主の剣幕に、多少、押され気味であったがヤマメは抱えていた書類をルビーナに渡した。

 ホロ・クリスタルにでも記録された電子情報が欲しかったのだが、全てを記録したシークレットファイルを渡してくれる筈も無く、機密を抜かれた資料の内容は乏しい物であったが、それでも新しい発見はあった。

 

「黒いベルバランはウエストマルクの伝説?」

「はい。エトワールなる巫女を補佐して活躍したそうです」

 

 が、その記録があるのは数百年前だ。

 不老不死でも無い限り、幾ら何でも同一人物ではなかろう……と思いたい。

 

「古代文明が関係しているからね」

「アステカイザーの仲間と言う線ですか。はぁ……」

 

 呆れ顔のヤマメではあるが、可能性としては同一人物説も有りだろう。

 とにかく、その記録から見るとウエストマルクに暴君が現れた時、その暴君を退治した英雄が黒いベルバランであったらしい。空飛ぶ馬に乗り、巫女であったエトワールを守りながら、私利私欲に塗れる暴君とその取り巻き貴族を粛正して、ウエストマルクに平和をもたらした英雄だと言う。

 

「で、肝心のプティットは?」

「記録にありませんね。エトワールの方なら聖女としての公式記録がありますけど」

 

 文武両道の淑女であったらしい。但し、仮面の下にある正体は黒いベルバランと同じく、明かされる事はなかった。

 

「でも、その聖女認定は活躍した時期から遥か後世の事です。悪事に荷担していた聖職者も退治した為に、当時は仲間に手を掛けた異端として神殿関係者から忌み嫌われていたみたいです」

「それが、何で聖女に?」

 

 もっともな疑問である。

 

「大衆から人気があったからですよ。で、しぶしぷ神殿がそれを認めて……」

「人気取りの為か。どこも世知辛いのね。ところで……」

「はい?」

 

 ルビーナはある単語を指さして、ヤマメに尋ねた。

 

「この免罪符って、何?」

「さぁ……」

 

 ヤーバン文化圏では宗教文化が余り理解されていない。二人は身近にある価値観とは違う産物を前にして、これが何なのかを考えて首を捻った。

 

「まぁ、謎単語の詮索は後回しにしましょう。それよりヤマメはシャーマンとしての訓練を受けているのよね」

「はい、シャーマン族として基礎的な事は」

 

 体技、戦闘術、諜報術などである。その後は個人の得意分野に特化した専門技術に分かれたりするが、まだヤマメは五歳児なのでそこまで進んでいない。

 

「あたしも参加させてくれない」

「ご冗談を。シャーマン族のそれは間者の学習ですよ。王族が学ぶべき事では……」

 

 慌てて否定する幼いシャーマン。

 万が一、事故でも起こしてしまったらヤマメ個人の罪だけではなく、一族郎党全ての責任問題にもなる。

 

「あたしはプティットに勝ちたいのよ」

 

 だが、ルビーナは食い下がった。

 

「あの生意気な女に、あたしが単なるお姫様じゃない実力を持っている事を知らしめてやるわ」

「肉体的に大丈夫と思えないのですか……」

 

 余程、「ベルバランに頼るだけの無能」と罵られたのが悔しいのだろうけど、シャーマン族は肉体的に強化されてるので、訓練が普通の人間に適用するのは難しい事も理由の一つだと説明する。

 

「肉体は鍛えれば良いのよ。あたしはまだ若いわ」

「しかし、人間は猿人並の肉体能力を持ちませんよ」

「あら、ドン・ランダムは人間でしょう。ハツメも敵わないとか言っていたわよ」

 

 ハツメはベガの筆頭秘書を務めるシャーマンで、勿論、腕も一流なのだが、あのドラグ将軍と互角に渡り合った、オストマルクの剣豪には敵わないと認めている。

 が、ドン・ランダムを例に持ち出されると黙らざる得ないが、あれは例外であろう。

 ふぅとため息を付くヤマメ。

 まぁ、許可は出ないかと思うから「私一人の判断では分かりかねます」と口を濁すが、ルビーナは「じゃあ、ヨナメと……後はルーペね。彼女らに許可を取れば良いのね」と納得してしまった。

 

「それならば……」

「早速、掛け合ってみるわ。付いて来なさい」

 

 喜色を浮かべ、部屋を出て行くルビーナ姫に「やれやれ」顔でついて行くヤマメだが、まさか、その時、これが許可されると知って呆気に取られるのは、それから半時間後であった。 

 

              ◆       ◆       ◆

 

「良く許可しましたね。侍女長」

 

 ルーペに語りかけるのはヨナメ、ヤマメの母でありベガ星連合軍の諜報局長である。

 宇宙空間を越えてルビー星のモニターに映る端正な顔を横目に、吊り目の侍女長は「落ち込んでいたルビーナ様が元気を取り戻すなら、この程度のお遊びも認可した方が良いでしょう」と、事も無げに告げる。

 

「責任はシャーマン族ではなく、貴女が取ると言う約束を忘れずに」

「分かっています。でも、適当に手加減はよろしく」

 

 言いつつも、ルーペ・ハズキは仕事の手を休めない。

 侍女長という立場だが、実際の仕事は宮殿内の管理だけではなく、ルビーナの補佐としてルビー星の内政の一部も担っているからだ。

 

「実際、貴女が責任を取るとの発言には驚きました」

「そうですか?」

「前侍女長、テイル様の頃から貴女は正体不明でしたからね。突然、侍女部隊に現れてたちまち地位を駆け上り、テイル様の懐刀になった」

 

 しかし、ルーペは無言で仕事を処理する。

 返答の代わりにキーを叩く、無機質な音だけが侍女長室に鳴り響くばかりだ。公用通信なので気にしないが一秒間に幾らの札束が飛んでるのだろうと想像すると、この沈黙の間の通信費は莫大な公費の無駄である。

 

「仕事は卒なくこなす。完璧に。誰からも文句は言われない。

 しかし、目立つ行為は無かった。今までは」

「……」

「今になって、何故です」

 

 ルーペはうっとうしそうに顔を上げ、見事な黒髪を掻き上げると「テイル様からルビーナ様を任されたからです。それが理由です」とだけ述べる。

 

「テイル様の……でも、それは?」

「そう言えば、私も貴女もテイル様だけは〝様〟付きで呼びますね」

 

 最後にそう付け加え、ルーペはふっと笑って通信を切った。

 ルーペ自身はヨナメから、侍女長と役職名でしか呼ばれた事がない。

 

「……それだけじゃないのよ。ルーペ・ハズキ」

 

 タキオン通信が切られたモニターの向こう側で、独りごちるのはヨナメ。

 やがて「貴女、本当は何者なの?」との呟きが、水晶宮の執務室の中で空しく響き渡った。

 

 

〈続く〉




約3,900文字。

最後は閑話で締めさせて貰いました。
黒いベルバランとラグパルナ艦内の戦闘シーンを期待してた人は御免なさい。
免罪符。五つでその単語の意味を知ってる方が変です。でも、ちゃんと後にルーペに質問して答えは得たのでしょうけどね。

次章は数年間、時間が飛ぶ予定です。
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