最後の「アリガトウゴザイマス」が耳に残るんだよなぁ。OP映像は幾つかのパターンがあるんだけど(三つだったかな?)、一番最初の奴が良かったかな。ぼたんが目立ってて(笑)。
富樫センセの漫画で唯一、最後まで読了した作品(HHは見てない)。主要人物では桑原が好きだったな。でも一番好きなキャラは「カルト勢」、特に樹里だったりする(笑)。
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暗い空間。
俺は『ああ、いつものだ』と納得して歩く。
「はぁーい。イイ、天気デース!」
突然、声を掛けて来るのはブラック・ミスト。
「良い天気って、こんな場所で雨は振る事があるのかよ」
いつものバニーガールは宙を浮いて現れたのだが、どうせ夢だから、何があってもあんまり深刻に考えない方が良いと俺は結論付けている。
こいつが「巨大モンガー」とか叫んででっかくなったり、「ジェーット!」とかヌカして空を高速で飛んでも夢なんだから、何でも有りだ。
「嵐が来る事もあるネ」
「ホントかよ」
「ユーのインナースペースだから、ある程度はユーの思い通りネ」
「ふぅん……。今度試してみよう」
「……多分」
おい、多分って何だ。多分って!
まぁ、いい。最近、この空間に来る事もめっきりと減った。
前、来た時から数年は経過している筈だった。どう言うきっかけで来れるのかは、実は俺にも判っていない。
見上げると、黒いバニースーツに身を包んだ女が欠伸をしていた。
「欠伸かよ」
「最近、忙しいのデース」
「何処が?」
ブラック・ミスとは地上に降り立つと、「ミーだって遊んではいまセーン。これでも激務なのデース」と生意気にも反論する。
「夢世界の住人なのに……」
「外れ。ミーはインナースペースの産物ではありまセーン」
そう言いつつ、両手を胸の前に持って行き、まるで泉から水をすくい上げる様なポーズで掌を上にすると、その中から、人魂みたいな光球が生まれた。
光はやがて球体から透明な翅が生えた、光の精霊みたいなファンタジックな形になって、バニーガールの掌からすいっと飛び立った。
「やろうと思えば、インナースペースではこうして物を実体化出来マース。でも……」
暫く離れた宙で、そいつが呆気なく音を立てて破裂する。
ブラック・ミストは事も無げに「創造者から離れすぎると、力が伝わらなくなって自壊シマース」と説明を続けた。そう言えば、こいつ、以前サイドカーを作成した事があるな。
「俺にも出来るのか?」
「練習すれば、多分デース」
さっきの多分と同じで、直ぐには使えないって訳か。俺のインナースペースなのに不便だな。
不満の気配を察したのだろうか、前髪で目が隠れたバニーガールがクスリと笑いを漏らす。
「ユーの能力は充分開花してませんから、現状では仕方ありマセーン」
「ブラック・ミスト。お前、何を知っている?」
いつも目の上から視線で語るこの女、いい加減腹が立っていたのは紛れもない事実だった。
しかし、彼女はちょこんと首を傾げるとはぐらかす様に、「教えられマセーン」と話を逸らした。
「そこは一歩一歩、自分の手で謎を解き明かさねばならないと、昔も話したネ」
「っ!」
「心配ないネ。ここまで来たからには、ユーにも段々力が付いている筈デース。
ミーの顔の輪郭がそろそろ確認出来る様になってると思いマース」
そう言われれば、昔は全く見えていなかったブラック・ミストの顔立ちが確認出来る。
しかし、顔の大体の形が把握出来たとは言え、前髪を下ろして瞳が全く分からないのでどんな顔をしているのかまではさっぱり分からない。
顔は細身の良い形だし、鼻梁や紅い唇もすっとした美人なんだけど、前髪に隠れた裏側が火傷を負っていたりして、破滅的な可能性もあるな。
「インナースペースで自在に物を認識可能な力か。それだけ力が付いたった事なのか」
「イエース」
ブラック・ミストの口元がほころぶ。
「とだけで終わるのも、何か納得しないと思うから最近の事件で起こった情報を差し上げマース」
「何だ。ウエストマルクの襲撃事件か、ワルガスダーの暗躍か、それともガイラー軍の内紛か」
色々と騒がしい事件は常に起こっている。
「ユーには、一杯問題があるみたいネ」
ヒールをかつんと鳴らすとバニーガールは辺りを見回し、「今日はあいつが居ないみたいネ」と呟くと「フリード星の事ネ」と続けた。
ルビーナがフリード星へ留学して三年が過ぎていた。だが、後二年位を目処に俺は終了させる心づもりであった。惑星領主としての実務もそろそろ経験させねばと思うからだ。
「ルビーナ関係か?」
アイツとか言うのが多少気に掛かるが、ルビーナの話となるとそんなのは後回しだ。
「イエース、黒いベルバランとエトワールを覚えているネ」
古代文明の遺産を使う、その力を有する怪人物の一人だが久々に耳にした気がする。
すっかり忘れかけていた。最近はとんと姿を現さないが、それでもワルガスダーとかと小競り合いをしているアステカイザーの方が目撃例が多いからだ。半年に一回程度の頻度だけどな。
「フリード星に現れたネ」
「何だって?!」
「かなり前からちょくちょく出現して、姫の危機を救ってマース」
そんな情報は初耳だ。
と、待て待て、姫の危機を救うって何だよ。ルビーナは誰かに襲われているのか?
「相手は誰だ。と言うか、そんな報告は全く届いてないぞ。ルーペは何をしてる!」
「侍女長の責任では無いネ。連絡はずっと妨害を受けていマース」
激怒した俺をどうどうと鎮める様に、ブラック・ミストは肩をぽんぽんと叩いて「間もなくルーペ・ハヅキ自身が、フリード星の警戒網を抜けてベガ星に報告しに現れるネ」と述べる。
「詳しくは、ハヅキ侍女長に聞きナサーイ」
「分かった。しかし、相手は誰だ?」
「フリード星の王妃だと目星は付いているのに、尋ねますカ?」
言いつつもバニーガールは俺をじっと見詰める。
前髪で瞳が見えないのに確かに強い破線の圧力を感じる為、おれは視線を逸らして「ああ、判っているさ」と返事をした。
フリード星の貴族層。それも筆頭は王妃がヤーバン王家の影響を忌み嫌っているのは織り込み済みだった。しかし、そうだとしてもルビーナに危害を加えるのは……。
「今度の相手は強敵デース。黒幕は王妃他ですが自分の手を汚しまセーン」
「いつもの手だろう」
フリード星貴族のやり口は全てそうだ。
「ところがどっこい、今回はシャーマン族が関わってマース」
「シャーマンだと?」
「呪術を使うから、普通の手段では対抗出来ないのデース。しかし、そこに現れたのが……」
俺は苦虫を噛み潰した口調で「黒いベルバランか」と呟かざる得なかった。
確かに古代文明を操る奴なら、訳の分からぬ術法を駆使するシャーマン族にも対抗出来るやも知れない。
「本当はこうしたヒントもユーに話してはいけないのデース。
しかし、どうせ直ぐにハヅキから報告があるから、ボーナスとして漏らしても構わないと思いマース」
バニーガールは腰の懐中時計を眺めると、「そろそろ時間デースと呟き」そして……。
〈続く〉
約2,600文字。
あかん、新章のタイトルが決まらない。
幾つか候補はあるんだけどね。
久々に『幽☆遊☆白書』で樹里の姿を見て、「あら、緑の髪に浅黒い肌。もしかしてハツメのモデルになれるかも」と、はたと気が付いてしまった。
別のモデルもあったんだけど、それはもう少し大人になってからの姿用に残して、今は樹里風のヘソ出しにピンクのサッシュでも似合うかも。
シャーマンだしね。