ベガ大王ですが、何か?   作:ないしのかみ

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今回の作業用BGMは『花右京メイド隊』より、ED「三色の秘密」です。
何か誤解しそうな歌詞も凄いけど、お側御用大隊のメイド三人がCVの声優さんのコスプレ込みで歌ってる破壊力よ(笑)。
思わず18禁エロゲのテーマ曲かとカン違いしそう。ええ、大好きですよ(爆)。

『メイド隊』は続編という形を取らず、二回アニメ化されると言う珍しいバターンを持った作品でした。今回紹介したのは内容が初期バージョンの無印の方。
作者もりしげ先生の暗黒面が発揮される原作の後期内容を含まない無印は、明るいコメディアニメでしたね。まさか太郎とマリエルがああなって、あんなシリアスの結末を迎えるなんて、当時、無印制作陣は思わなかったんでしょうね。
まぁ「マリエル」って名前のヒロインが出た時点で、自分はもりしげさんのとある褐色ロリメイドを連想して、やーな予感がしていたんだけど……。



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              ◆       ◆       ◆

 

 客室がから足を踏み出してタラップに進む。

 人工的な空調から解放され、俺の胸に久しぶりのフリード星の空気が入って来た。

 

「そうか、季節が違うのだな」

 

 前に訪れた時は秋だったが、今回は冬だ。

 どんよりとした灰色の雲が太陽光を遮り、冷たく、肌を刺す乾燥した空気が身を包み込む。

 一応、今の俺の身分は侍女であり服装もメイド服なので、袖無しのこの格好は寒さをもろに感じてしまう。

 

「殿下。お召し物を」

「有難う。えーと……」

 

 外套を持って来てくれた侍女に礼を言うが、名前をど忘れする。

 いや、長年付き合っているから雰囲気で誰が誰かは判るんだけどね。

 ヨナメとかハツメみたいな顔立ちが異なる上級シャーマンと違い、一般シャーマンの顔立ちは皆同じで、全員名前の末尾に「メ」が付くので、こんがらがるのである。

 

「イチメです。出来れば以後、お見知りおきを」

「ああ、努力する」

 

 袖を通しながら約束するが、大丈夫なのか、俺?

 確か、この娘は侍女第一分隊所属で、同時に設立された侍女第二分隊と共に俺付きの親衛隊みたいな存在だが、その経歴から増援の中核として派遣されるのだ。

 それだけ信用が有り、腕も立つからなのだが、この為に今度は俺付きの侍女が足りなくなってしまい、新設の侍女第三分隊がハツメの指揮の下、結成されたと言う報告を耳にしている。

 

「どうかなさいましたか?」

「いや……」

 

 かぶりを振る。

 順調に行けば、ルビーナの留学期間はせいぜい二年。

 それまでに無事任期を達成出来れば、彼女らもベガ星に帰還出来るだろうが、今回の状況は厳しいから、思わず彼女の顔を見詰めてしまったのだ。

 果たして、無事に帰還出来るのだろうかと。

 

「迎えが来ましたよ」

 

 その声にはっとして前を向くと、滑走路の脇から黒塗りの高級イオノクラフトが数台やって来るのが見えた。

 宇宙港では勿論、入国審査があるのだが、ヤーバン連合の権力で俺達一行はベガ星の外交官扱いとなっており、これに関しては一切、フリーパスだ。

 ぞろぞろと他の関係者が降りる中、俺はタラップを下りて車のドアを開ける。

 この中で俺の正体を知らされているのは、ほんの一部だし、何処で誰が見ているのかも判らないから、他者が恭しくドアを開けてはくれないけど、俺は気にせず自分でドアを開けて、中へと転がり込む。

 

「殿下、本当に来てしまいましたね」

「ルーペか。そちらも大丈夫だったみたいだな」

「表向きには……恐らく」

 

 中にはお馴染みの侍女長が居た。

 公式には彼女はベガ星に来ておらず、まだフリード星に留まっている事になっているので、一足先に再び、フリード星へと帰還していたのだ。

 

「相手はフシメ。上級シャーマンです。恐らくこちらの工作なんか看破しているでしょう」

「こっちの手は、向こうも熟知しているか」

 

 軍艦でやって来た我々と違い、ルーペは一般の渡航ルートを使ってフリード星へ向かい、宇宙港到着後に〝瞬間移動〟で市街に転がり込むと言うデンジャラスの手を使っている。

 しかし、転移の方法がシャーマンの呪術であるので、ルーペ曰く「看破されている」可能性は高いと言えるから、こっちの欺瞞工作は無駄であるのかも知れない。

 

「でも、それが証拠になる事はないと見ます」

 

 同乗し、ハンドルを握っている侍女が言った。

 すなわち「フリード星人達のプライドから、ハーク種であるシャーマンの能力に頼ったとは公式に認める事が出来ない」からである。

 同種の術を使ったとは察知可能だろうが、それが証拠として認められるか、である。

 

「シャーマンの呪術で探知したと言っても、フリード星人達は信じないでしょう。

 その現場でも撮影して、決定的な証拠として提出しない限りは」

「ふむ、この者は?」 

 

 俺の質問に侍女長は「サンメです。私を転移させる役も果たしてくれました」と告げ、サンメ本人もこくりと頭を下げて一礼する。

 因みにルーペはシャーマン並の力を持つが、シャーマンではないので呪術は使えない。

 

「御免。遅れた」

 

 後部トランクが閉まる音がして、俺の座る後部座席にそう言って乗り込む侍女。

 

「イチメ、仕事は手早く」

「だってサンメ。荷物運ぶのは私一人なのよ」

 

 不満の色を浮かべて理由を言う同僚へ、サンメは「たかが旅行鞄が数個でしょう。シャーマンらしからぬ惰弱さですね」と小馬鹿にするが、俺は『しまった。そう言えば手伝っていないじゃないか』と、己の迂闊さに反省する。

 今はイチメと同じ侍女身分に化けているのだから、王子じゃないのだったら荷物運びも手伝わねばならないのである。こういう所からボロが出るのかと痛感する。

 

「では、出しますよ」

「まずは王宮か?」

 

 その質問にサンメは首を振った。

 

「いえ、新しく建てられた離宮です」

「離宮なんか出来たのか」

 

 以前の離宮はジィルの来襲と共に、何処かの次元へ消え失せてしまった筈だった。

 そこへルーペが「新しく、と述べたでしょう」と説明する。

 どうやら、離宮を新築した情報すら外部に伝わっていなかったらしい。

 

「王宮で過ごせたのは半年程度です。襲撃があって居室が破壊された後、フリード王家は我々を隔離するかの様に、離宮なる建物へとルビーナ様を移しました」

「何だと!?」

 

 そんな報告、何処からも届いてないぞ。

 そんな中、くん、と軽い浮遊感と共に高級車の車列が動き出す。

 

「あら、殿下には報告した筈ですが……」

「口頭では聞いていない」

 

 困惑したルーペに俺は反芻した。

 聞くと作成した報告書に逐一、詳細な情報を伝えてあり、その資料を既に読み込んでフリード星へと赴いたのではないかと逆に質問されてしまった。

 いや、確かに作成した資料は読んだ。読んだ筈なのだ。

 

「失礼します」

 

 ルーペが資料用に手渡したクリスタルをひょいと掴み、車にある再生機にセットする。

 何故か、この世界にはスマホやモバイル的な機器が存在せず、こうした情報の再生には備え付けの固定式で大袈裟な機器が必要となる。

 それどころか、紙テープにパンチングで穴を打ち出すコンピュータさえ現役だ。

 

「これ、情報が改変されています」

 

 それはともかく、提示された文章をざっと見ていたルーペが絶句した。

 どうも、今までのパターンと同じらしい。

 送り出した通信の内容が、ことごとく書き換えられているのだ。

 

「機械的な方法では駄目で、直接、言葉で伝えるしか正確な情報が伝わらないので、侍女長が生命の危険を感じながら、来てくれたのは知っているが……」

「情報操作はフリード星内部だからこそだと思っていました。

 しかし、この報告書はベガ星で作成した物です。

 殿下が読んだのもフリード星に渡る宇宙航行中の筈です」

 

 ルーペの呆然とした声に、俺はその衝撃を理解していた。

 もし仮にフリード星全体(惑星一個だから、物凄く広大だが)に呪術的なフィールドが張り巡らしてあって、人々の認識を狂わせる幻覚系の作用が働いてるとしよう。

 

 簡単な具体例を挙げると白い物を見ても、黒だと思い込んでしまう。右にあると知覚しても思わず左だと錯覚して、体が動いてしまうとかだな。

 でも、それは一定の地域だからこそ起こりえる物で、流石に何光年も離れたベガ星までは影響は無いと思っていたし、ルーペも同じ考えだったろう。

 

『こいつは、とんでもない相手だぞ』

 

 今度の敵の力は戦慄すべき物であった。 

 

 

〈続く〉  




約2,900文字。やっと減った。

はい、侍女分隊はそーゆー訳で一番危険そうなフリード星に派遣されてしまいました。と言う事で、今回のBGMは彼女らのモデルとなった「三色の秘密」です。
どーなるのかね。イチメ、サンメ、リンメ。
無論、今回来たのは殿下と彼女らだけではなく、女性軍人とか一杯居ますよ。
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