ベガ大王ですが、何か?   作:ないしのかみ

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今回の作業用BGMは『ララミー牧場』から「ララミー牧場」です。
懐かしの輸入物テレビドラマの主題歌です。この手の曲は原曲そのまま、原曲のアレンジ、全く新しく日本向けに作った曲の三パターンがあるんですが、これは原曲のアレンジ版ですね。

余りに旧すぎて本放送を見た事無い。でも、街中のBGMとかで良く耳にした曲ですね。
某漫画でアメリカ人の背景に、二頭身の馬とこの曲が踊っているのを見て笑った思い出が(笑)。
実は舞台はララミー牧場では無く、あれはシャーマン牧場なのを最近知った。
シャーマンが牧場を(笑)。



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 それはほんの少し前の出来事だった。

 ルビーナが留学先にしていた学院。

 貴族の子女ばかりが通う特別校みたいな物で、男女別に授業を受けていた。当然、施設なんかも学校とは思えぬ豪華な造りである。

 

 が、その内部にはまるで秩序が無かった。

 荒れているって事では無い。いや、ある意味荒れていると言えなくも無いが……。

 

「で、あるからして、この歴史的な事実は……」

「この前、S・ビッガー通りで庶民に人気のレオパー丼を見ましたのよ」

「へぇ、どんな感じでしたの」

 

 教壇で教師が汗をふきふき教鞭を執っている最前列の席で、生徒達はまるで関係ない会話を交わしている。

 如何にもお貴族様と言う風情のお子様達で、高級そうなドレスを身につけ、その様子は授業を受けているというよりも、何処かの茶会か夜会に出席している感じであった。

 

「まぁ、庶民はあんな物を食べるのですわね、と幻滅しましたわ」

「皿の上に一品だけ載せるのが、丼料理とお聞きしますもの。お下品な料理を見て、本当に衝撃的でしたわ」

「まぁ、おほほほほほ」

「おほほほほほ」

 

 貴族やそれに準じた上流階級のみが必ず通わされるのには理由がある。

 ここはフリード王家が有力者の子女を囲い込んで監視する、詰まる所が〝人質〟なのだ。

 江戸幕府の参勤交代的に家族を手元に置いて、各地の大名を縛っていたのに通じる策だが、貴族と言う奴は後継者問題の為に若い頃から子孫を作るか、養子でも構わないから跡継ぎとなる人員を用意しなければならないのだが、それ故に特権階級の集まりとなり、一般人は教師であろうが見下されてしまう。

 

『これでは……』

 

 実際、これで教育になっているのかと思うと疑問だった。

 数人だが、何とかノートを取っている者も居るが、それらは貴族とは違い市民階級の富裕層と言った風情でであり、お茶会風に井戸端会議をしているお嬢様連とは別のグループに見えた。

 無論、ルビーナの属するのはこちらである。

 

「あれで大丈夫なのか?」

 

 俺達は授業参観という名目でこの場に居る為、回りの喧噪に紛れる形でメイド姿でも普段よりは自由に会話が可能だった。

 だってこの状況なら、最後列に立っている俺達に目を向ける者なんて皆無だからな。

 

「大丈夫と聞いております。

 ここに籍を置いているのはフリード王家に対する義務にしか過ぎませんし」

「実際の勉強は家庭教師頼りか」

 

 ルーペはちらりとこちらを向き、首を振った。

 彼女曰く、「それは過去の話ですね」なのだそうだ。

 

「え?」

「それより効率の良い方法が、この星にはあるのです」

 

 侍女長は顔を歪め、吐き捨てる様に「この星には催眠学習が普及しています」と言った。

 彼女の話をまとめるとこうだ。

 知識を詰め込むだけなら、催眠学習装置を使用する方法がある。

 眠ってる間に頭部にヘルメットを被り、必要なレクチャープログラムを脳へ直接走らせて必要な知識を転写する機械である。

 

 何か、昔のSF人形劇に出て来そうな大袈裟な装置で、ぐるぐるとタマネギ型のジャングルジムが回りながら、眼鏡を掛けたら宇宙一、眼鏡を外すとそばかす坊やにでもなりそうなマシンに思えた。

 当然、個人が使うには大袈裟で高価な代物である。

 しかし、金持ちの特権階級はそれを用いる事が出来るだけの財力を持っているし、レンタルは無論、装置自体を所持している者だって珍しくない。

 

「便利そうだな」

「本気で言っていますか?」

「努力要らずと言う点では……」

 

 俺だって勉強は苦手だ。

 王族としての立場と、療養中に暇と言う理由で無駄知識を蓄えたからこそ現在のベガ王子があるのだけど、他人から強要される勉強は苦痛その物であったからだ。

 知らない内に、嫌な勉強が叩き込まれるなら有り難いとも思ってしまう。  

 

「欠点は一夜漬けな事です」

「続かないのか?」

 

 頷くルーペ。

 転写された知識は完璧では無く、時間が経つにつれて徐々にぼやけてしまうらしい。

 一時的に博識になるだけで、長く続かないのなら身にはならないのだと言う。

 そこへ取り巻きの学友を連れたルビーナがやって来たので、俺を含めて侍女達は臣下の礼を取る。

 

「酷い物でしょう」

 

 開口一番からこれだ。

 

「姫様。席へは……」

「戻らないわよ。誰も彼もが身勝手だし、席を離れたって先生は注意もしないわ」

 

 にっと笑って「ルーペとは正反対ね」と付け加える。

 そう言えば侍女長はルビーナの教育係でもあったが、身分差はあっても学習中は生徒と教師の関係を維持して、容赦無く叱責が飛んでいたんだった。

 

「フリード星人達は科挙と言われる試験だけをクリアすれば構わないと考えているらしいわね。

 真剣に勉学に励もうとする者は少数派よ」

 

 どうせ、卒業したら特権階級なのだから、勉強なんて馬鹿馬鹿しいと考えてるらしい。

 政治は頂点のフリード王家が全てをやってくれるのだ。それに従って私腹を肥やす事だけに集中するのが仕事だから、この学校も社交の場としてコネを作る為の場所だと割り切っているらしい。

 成る程、そう考えるとお茶会もどきの方が重要になるのだろうな。

 

「……染まるなよ」

 

 ルビーナの教育には明らかな悪影響がありそうだから、一応、警告する。

 しかし、ルビーナはひらひらと手を振って「まさか!」と否定する。

 

「本当に権力を握る者や、上昇志向のある商人なんかは催眠学習なんかに頼ってないし……。

 例えば、ほら、あそこの席に座っているミシェールなんかがそうね」

 

 それは最前列に座っている少女だ。

 年頃はルビーナと代わらない。ミントグリーンの髪をツーテールにして眼鏡を掛けている。型は旧いが服地が高級そうなドレスと言った身なりからして貴族なのだろうが、取り巻きは居なさそうだから末席の貴族か、上流市民なのだろう。

 

「私と同じ留学生なのよ」

「仲が良いのかい?」

「最悪」

 

 ルビーナは笑いながら、そう言い張る。

 黒いベルバランが現れる、ほんの少し前の出来事である。 

 

 

〈続く〉 




約2,400文字。

新キャラが続々登場して済みません。
あー、それと『ジョー9○』とか知ってる奴居るんだろうか(笑)。
作業用BGMもコラボとして『ジョ○90』にした方が良いんだけど、歌詞付きの『スーパー少年』の方は好きじゃ無いんだよね。単に「でっかいネズミ」が回るBGM方は聞いてられるんだけど、持ってないのさ。
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