「流れ星☆」にも通じるCooRieらしいと言えば、らしい旋律なんだけど、テンポが良く、走ってるスピード感が心地よい映像。
OP映像が自家の近くなのでびっくり。いや、モノレール500型(ラストラン前日に乗った)は近くに走ってないんだけどさ、あの地区の住人には当たり前の光景だよね。ジェットコースター気分を味わえるぞ。
本編はラブコメだけど、ヒロインが右手だけに三角関係なしと言う替わった構造。もっとも主人公らよりも、オタクの高見沢と由真こと「うるとらまりん」が一番の楽しみだったと言うのはヒミツだ(笑)。
最初はただの怪人だった。
妙な格好で馬に乗った奇天烈な男女。それだけだった。
まだ、五歳の頃。
「古代文明の遺物を用いてますね」
「え?」
いつも教育係として口うるさい侍女長が述べる。
曰く、「真空の宇宙空間を、全く宇宙服無しで飛んでいますから」である。
今の技術レベルでも、やろうと思えば可能なのだそうだが、幾ら費用が掛かるのかは分からないし、黒いベルバランを名乗る騎士の他にも、ベレー帽とマスク、レオタード姿の女性とそれをスケールダウンした様な子供が、同様に宇宙空間を疾走している。
無論、宇宙服も無しで平然と、よ。
「ルビーナ様、艦長席にお座り下さい」
この駆逐艦〝ラグパルナ〟の艦長が、フロア中央に立つあたしに要請する。
急遽、用意された船だから、貴人用の席なんか用意されていないので、一番序列の高い艦長席へ自分を移そうとする心遣いみたいね。
「結構よ。ここで大丈夫」
今、不格好にもサイズの合わない旧式宇宙服を着せられているので、衝撃を受けても大した事にはならないだろうと計算する。
「しかし、衝撃を受けると危ないので……」
「しつこ……」
ベルバラン達の観察を邪魔しないで頂戴と続けて言う前に、ルーペ侍女長の「姫様っ!」と言う叱責の言葉がして、あたしは思わず首をすくめた。
ぶかぶかの宇宙服を着たまま、ぐいっと耳を引っ張られる。そのまま壁に押しつけられ、顔を近づけて「黙りなさい」と小声が呟く。
「痛い、痛い。何するのルーペ」
「もし姫様が転んで怪我なされたら、どうします?」
「転ばないわよ」
侍女長の吊り目が鋭くこちらを射貫いた。
思わず、「ひっ」と息を呑んでしまう。
「責任を取らされて艦長は一生、日陰者として出世出来ないでしょうね。
彼には家族も居るでしょうが、連帯責任でどうなるのかは分かりませんよ。辺境へ家族ごと飛ばされるか、或いはもっと悲惨な……」
「わ、わかったわよ。艦長、案内しなさい」
ようやくルーペ・ハズキの手を振り解いて、あたしは艦長に命令した。
かなり老練に見える艦長はほっとして、あたしをブリッジ後方の艦長席に座らせた。
この席は対ショック機能が働き、一応はシールドも張れるみたいだから、この狭い艦橋内では一番安全なのだろうけど。
「私みたいに、姫様を叱れる立場の者は少ないのです」
それは教育係としての特権だった。
「あたしを叱れるなんて、理不尽だわ」
「ベガ殿下に許可は頂いております。『構わないから、びしびし躾けてくれ』と」
おやつ抜きや晩御飯抜きの刑とか、一歩間違えば、不敬罪として死刑にもなりそうな行為を、この侍女は容赦なくやってくれる。
義父は「子供は甘やかすと駄目だ。フリード星人みたいになる」とこのサディスティックな方針に賛成で、王女なのに我慢させられる場面が多いのよ。
もっとも、それも後の留学でフリード星人達を見て『あ、こう言う事か』と実感したけどね。
「ゴーレムが本艦に侵入!」
「迎撃せよ」
オペレーターの声に艦長が号令を掛ける。
さっきから映っていたウードウ魔術団の尖兵が、とうとう駆逐艦の外壁を破り、艦内へと侵入したらしい。
逃げようにも内火艇格納庫方面に敵が居るから、脱出艇を用意出来ない。
下手するとゴーレムと鉢合わせになってしまうからだ。
「時間稼ぎになれれば良いのですが……」
「イツツメ、もし艇が無事ならば、姫様を連れて格納庫へ向かいなさい」
唯一、この艦へと同行したシャーマンに侍女長が命令するわ。
マザーバーンに乗り組んだ侍女部隊は勿論、彼女だけでは無いけど、その大半はベガ殿下、つまり義父上の護衛で、王女のあたしに付けられたのはイツツメと侍女長だけだった。
他に装甲兵が一個分隊。
まぁ、危険な前線では無く、一番安全だとして後方へと留め置かれたのだから、余剰戦力は割り振れなかったのだろうとも理解する。
『衛星軌道まで追って来るとは思わなかったからね』
黒いベルバラン一味もそうだが、ゴーレムも特別な装備を必要とせず、出鱈目な能力で宇宙までやって来るのだから、古代文明の力は質(たち)が悪いわよ。
「メインスクリーンを切り替えろ」
宇宙空間の光景がサブ画面へと移り、メインスクリーンに頭がタコを思わせる怪人スダコラーと、格納庫付近に展開した乗組員が対峙するライブが映った。
構えるレーザーライフルは、銃身に盾状のシールド型照準器をセットした採用されたばかりの新型で、対人オンリーだった旧式の銃と違い、ある程度の対物(アンチマテリアル)能力も付与されていると聞いているわ。
「うわぁぁぁぁーっ」
喚声を上げながら、最初にレーザーを撃ち込んだのは駆逐艦の乗組員達。
真っ赤なルビーレーザーの光条が怪人へと集中する。
命中箇所が赤熱し、やったかと皆が思った時、「何かしたのか」と怪人スダコラーが初めて口を開いた。
「ば、馬鹿な」
「ふむ、俺を倒すには出力不足だな。あと五十挺は必要だ」
言うなりタコの頭がグルグルと高速回転を始めると、広がった八本の脚がローターの代わりとなってふわりと浮く。
呆気に取られた見ていた乗組員達だが、はっと気が付いて再びレーザーをゴーレムに発砲するのだけど、それを苦ともしないのがスダコラーだったのよ。
彼らは軍人だったけど、基本的に宇宙船のクルーだから陸戦の専門家では無いわ。
連れていた装甲兵が相手か、陸戦に長けた者でも居れば、頭部に火線を集中させたりして奴を弱体化させたかも知れない。
「姫様っ」
咄嗟に視界がルーペが抱きついた事によって塞がれたわ。その直後、「ぎゃあああっ」と絹を引き裂く断末魔の悲鳴が、一つでは無く、幾つもスクリーンの方から木霊したのよ。
「しめた。奴はこちらへ向かってきます」
イツツメの声が弾んでいるのは気のせいかしら?
ルーペは「メインスクリーンを格納庫から切り替えなさい」と命じて、あたしから離れたわ。
「あ……有難う」
多分、人々が死ぬ残酷な光景を見せたくなかった位、子供だったけど理解出来たわ。
あたしはルーペに礼を述べると、再び正面を向いた。
「装甲兵部隊。廊下で迎撃態勢!」
「あ、ベルバラン達は……」
既にスクリーンは切り替えられて、さっきまで彼らの映っていた宇宙空間だけど、その姿は何処にも無い。
目を離した僅かな時間だったけど、ベルバランの姿をロストしてしまったみたいね。
侍女長はあたしに構わず、装甲兵分隊のパワードスーツ達へ何やら命令をしている。
「姫様。多少、気分が悪くなるかも知れませんが」
そこへイツツメがやって来て、突然、あたしを抱き抱えたわ。
ルーペは「頼みましたよ。装甲兵で時間稼ぎしますから、無事に姫様を」と言った。
あたしは元々、この宇宙服が拘束衣となって身動きが取れないし、事情も分からなかったけど、ふっと強い衝撃を全身で感じたの。
エレベーターの中の浮遊感。もしくはジェットコースターで感じる落下の衝撃みたいな感覚が、何倍にもなって襲って来たのよ。
「うぇぇぇぇ」
吐き気がする。
でも、視界が突然、極彩色の空間に包まれたと思ったら、次の瞬間、あたしの視界は別の所に移っていたわ。
「大丈夫ですか」
「へい、き。ここは……」
イツツメに返事しながら、ここが見覚えのある場所だと認識する。
この〝ラグパルナ〟で最初に降り立った場所、内火艇の格納庫だ。
「振り向いてはなりませんよ」
「錆の匂いね」
まだ艦内。内蔵タンクの空気を節約する為にヘルメットのフェイスガードは閉じていなかったから、錆混じりの空気が鼻腔をくすぐっていた。
明らかに、さっき殺された者達の血の臭い。
教えられた雑学が役に立ったけど、余り嬉しくないわ。
「瞬間移動したのね」
「はい。時間がありません。直ちに内火艇へ」
瞬間移動はシャーマンの呪術の一つだ。
今みたいにやろうと思えば他人も一緒に跳べるが、その際の距離は短距離に限定されると聞く。
スダコラーが内部へ行ったので、その間にやり過ごしてあたしを脱出させるつもりだったのだろう。
「問題は内火艇が上手く動くかですが」
言いつつも、あたしを抱えて内部へと入るシャーマン。
彼女曰く、さっき到着したばかりで整備も行っていないから、どんなトラブルが発生するかが未知数なのだそうだ。
〈続く〉
約3,300文字。前章第150話からの回想シーンです。ベルバランとルビーナの閑話。ルビーナ視点の一人称となっております。
どうしてルビーナが黄色い騎士にぞっこんになったのか、と言う経緯を書く予定なんだけど、何とベルバランはまだ台詞無しの顔見せ状態。
こりゃ、長くなりそうな予感(笑)。