ベガ大王ですが、何か?   作:ないしのかみ

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今回の作業用BGMは『うる星やつら3 リメンバーマイラブ』から「Doncing In The Harem」です。
劇中であたるがミラーハウスでラムを追跡する時に流れた曲。ホバーバイクで並行世界へと転移するのだけど、あたるの煩悩で跳躍失敗してしまうのが印象的だったな。まぁ、何とかラムの所には辿り着くけど。

この作中で、うる星ワールドは「幸せの連鎖」世界(だったかな?)に居るんだって台詞が印象的だった。
つまり、ずっと彼らが二年生で時間が進まない「サ○エさん世界」なのも、その次元世界に閉じ込められていると言う訳で、それはあたるやラム達の思いで構成されているってのが、『ビューテイフルドリーマー』とは別解釈で面白かった。


164(閑話)

 最初に動いたのはスダコラーだった。

 タコの口から溶解液が飛んで、問答無用に先制攻撃よ。

 しかし、黒いベルバランはすっと身を躱しただけで、緑色の溶解液は脇を飛んで後方の壁に命中しただけだったのよ。

 

「汚いなぁ」

 

 ぐずぐずと崩れる壁を見ながら、呆れた口調でプティットが呟いたわ。

 ベルバランは「手品はそれだけなのか?」と問うて、細剣にも似た腰の剣をすらりと抜く。

 

「レディ・ガンダル。今回の企み、貴様の仕業だな?」

「ほほっ、何の事やら……」

「あの植物兵器、貴様らの物ではあるまい。黒幕は誰だ」

 

 植物兵器って、ルビーシティを滅茶苦茶にしてくれたあの怪植物よね。

 スダコラーの隣に浮かんでいる、立体映像のケバ顔のおばさんは「答えると思うのかのぅ」と憎まれ口を叩く。

 

「さっさっと片しましょう。立体映像だから、意味ないのだし」

「そう言うなプティット。一応、尋ねただけだ」

 

 そんな会話の中、ウードウ魔術団のゴーレムは身を翻してあたしの方へと向かって来たわ。

 その側で低い電磁音と共に、発射されるルビーレーザー。

 

「イツツメ!」

 

 レーザーライフルを放つ射手は侍女である。

 対人用のパルスモードでは無く、銃身の耐久力が続く限り、連続発射される対物用ビームモードだけど、スダコラーの頭部が赤熱するもその突進は停まらない。

 射点は一点に集中していて、とんがった口の部分が熱で歪んで溶解液を放てないみたいだけど、白兵戦で片を付ける気らしいわ。

 

「姫様っ」

 

 あたしは目を見開いて、何も出来なかった。

 ゴーレムの鋭い爪が付いた片腕が持ち上がり、振り下ろされる寸前にシャーマンが銃を投げつけて、あたしを庇う形で抱き付く。

 次の瞬間、視界がぶれる。

 

「あっ」

 

 再び、エレベーターに乗った時みたいな不快な感覚。

 目を開くと、イツツメがあたしの身体からずるりと崩れ落ちる姿が映る。

 レディ・ガンダルが「馬鹿者。依り代を使い物にならなくする気かえ!」と、スダコラーを叱責する声が聞こえたけど、あたしは構わずに、身代わりになったシャーマンを支えて保持するのに懸命だった。

 

「イツツメ、イツツメ」

 

 さっきの呪術は短距離の空間跳躍で距離は大した事は無く、ほんの数メートルほど離れた納庫内だったわ。

 黄色い騎士とあたしを狙ったゴーレムが、近所で白兵戦をしているのが視界の端に映ったけど、あたしは自分を庇って背中に一撃を受けた侍女の名を夢中に叫んでいた。

 

「姫様……無事ですか」

「ええ」

 

 それだけ聞くと、彼女は安堵したように微笑んで、身体が赤く光と耳障りな高音と共に消えてしまった。

 シャーマンは人造生命体なので、こうして遺体も遺さずに消えてしまうの。

 膝に力が入らなくなって、あたしは崩れ落ちる。

 

「この役立たず」

 

 あたしが呆然と座り込んでいると、小さな灰色のレオタード女がそう言った。

 エトワール・プティットは「役立たず」ともう一度暴言を口にした。

 

「侍女の言いつけを守って艇内で待機していれば、彼女が死ぬ事は無かったのよ」

「……」

「わざわざ敵に姿を晒して、目標になるなんて、あんた馬鹿?」

 

 しかし、その言葉は真実であり、あたしは何も言い返せない。

 

「止めないか」

 

 そこへウードウ魔術団のゴーレムを斬り裂いたベルバランが現れた。

 後で記録映像を見たのだけど、黒いベルバランはスダコラーを八つ裂きにして、再生する前のゴーレムのコアを破壊すると一方的に勝利していた。

 

「でも……」

「起こってしまった事は仕方ない」

 

 更に非難を続けようとしたプティットの会話を絶つ様に、黄色い騎士は横合いから口を挟んでくれた。

 あたしの堪えていた涙腺が開き、嗚咽と共に顔を塞いで「御免なさい」を連呼する。

 頭部をがっしりした手が、優しく撫でてくれる。

 

「いいんだ。失敗を失敗と認めて二度と繰り返さねば」

「ふひひひ……メロドラマじゃの。良くもまぁ、邪魔をしてくれる!」

 

 怨嗟の声を上げるのは、おばさんじゃない、レディ・ガンダルの立体映像よ。

 司政長官のガンダルならベガ星でも良く会ってたし、あたしも知らない訳では無いのだけど、このケバ顔のおばさんはまるで知らない顔だった。

 がっしりした近所のおじさん顔をしてたガンダル長官と違って、そこらの下品な若作りおばさんみたいなレディ・ガンダルは、本当に同一人物なのかと思う位、似ていないから仕方ないわ。

 

「まだ居たの。ベルバラン、こいつあたしが始末して構わない」

「今回の騒動、ウードウ魔術団単体の仕業ではあるまい?」

 

 プティットの言葉を半ば無視してベルバランが問う。

 

「ワルガスダーの手の者が、良く言うわ。

 貴様らこそ、何故、この件に介入するのじゃ。アステカイザーは何をしておる」

 

 え、ワルガスダーってあの〝悪党公団〟を名乗る正体不明の敵よね。

 黒いベルバラン一味ってワルガスダーの仲間なの?

 

「あのトライク野郎とは話が付いている。我々の活動には不介入だ。

 それよりは貴様らだ。ターゲット・ドローンを利用したり、あの怪植物を使ったのは……ブーチン殿下と手を組んだな」

 

 ブーチン・ヤーバン第二王子ですって。

 義父上の王位継承のライバルと目される方よね。

 でも、あたしは通信機のモニター越しに会った事はあるけど、直接会見した事はない御方だわ。

 母上、テロンナ母様が健在だった頃は、ルビー星にも足を運んでいたそうだけど、あたしがベガ王子の養女になってからは、全くここらを訪れない人になっていた。

 

「さてのう。まぁ、それ以外も我ら魔術団に味方する者もおるぞえ」

「何だと」

「ほほほっ、ベガ殿下は敵を作りすぎて居るからのぅ」

 

 気色の悪い笑顔を見せるそれに、細剣が一閃する。

 立体映像はぶつっと切れ、何やら、陶器で出来た小さな人形風の物体が寸断されて転がる。

 古代文明の立体映像装置なのかしら?

 

「プティット」

「時間の無駄よ。こいつが正直に答えるとは、ベルバランだって思ってないでしょ」

 

 エトワール・プティットはそう言い放つと、鞘に健を収める。 

 やれやれとばかりに、ベルバランは抱き抱えていたあたしから離れると、肩をすくめて「無駄だと思う会話でも、相手が迂闊にヒントを出してくれる時もあるのだがな」と呟いた。

 

「事実、レディ・ガンダルは訊いてもいないのに、味方陣営の事を口に出した」

「ハッタリかも知れないじゃ無い」

 

 そしてあたしの方を向き、「ベルバランに頼るだけの無能。何も出来ないお姫様。余り足を引っ張らないでね」と傷口に塩を塗り込む様な言葉を吐くと、エアロックに現れた三人目、エトワールに向かって手を振った。

 エトワールは白馬を模したロボットホースに跨がったまま、「外の軍勢は粗方片づけたわよ」報告すると、困惑した表情で「あのお姫様は無事なの」と問うて来た。

 

「無事よ」

「何があったの?」

「別に……」

 

 素っ気なく答えるプティットは、新たに登場した女騎士と入れ替わる様に乗馬するとエアロックの向こうへと消える。

 黄色い騎士は「ま、色々あってな」と苦笑すると、羽根飾りの付いた帽子を脱いで、騎士らしい礼節を持ってあたしに頭を下げる。

 

「姫。間もなく、ルーペ侍女長がやって参ります。ここからはお一人で……」

「はい」

 

 何とかベルバランに返事出来たのは、さっきの「この役立たず」の言葉に反発し、『あたしはルビー星の当主なんだ』って誇りが、涙を抑えた結果なのかも知れない。

 彼らが去り、ルーペが迎えに来るまで、あたしの心にはあの憎たらしいエトワールの劣化縮小キャラの言葉が、ずっと心に響いていたわ。   

 

 

〈続く〉 




約3,000文字。次週は正月と言う事で、一回お休みを頂きたく思います。

多分、少し時間を進めたフリード星の、留学中に何が起こったのかのお話をやっぱりルビーナ視点で語る、閑話になると思います。
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