正月っぽい曲と言う事でチョイス。雅楽の旋律風で琴の音が響く、巫女もののオープニングにふさわしい曲ですね。
もう約23年前のソフトなので、残念ながら曲名は設定されてないらしく、BGMナンバーの10番目として呼ばれてないのが惜しい所。
『戦巫女』はアリスソアト初の全年齢対象ソフトなのだけど、メーカーのせいでエロゲと勘違いされていて不幸。『奇々怪々』と並んで巫女ものゲームの嚆矢でしたね。
絵も綺麗だしストーリーも良いんだけど、声だけが落第(CVが悪い)で音声カットしてプレイしてました。修行で延々、鉄下駄を履かせて、ヒロインのちとせを虐めていた記憶が(笑)。
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王子デューク・フリードという男は、外面だけはいい男だ。
フリード星へ留学してから王宮の歓迎会で対面する前が、ルビーナにとって初遭遇だったのだが、沿い第一印象は現在(いま)に至っても変わっては居ない。
フリード星の王妃は自分の子供に徹底的に甘い為、王族として公式な場では無い場合、躾というのが成っていない我が儘放題なのである。
しかし、表面を取り繕う能力だけは一流で、表向きは貴公子然とした態度を装っている為、対外的に人気の高い王子様に見えるのだ。
確かに初対面の時はまともに見えた。だが、一歩、裏に回ると醜い本性が垣間見える。
ルビーナがヤマメを伴って、お忍びでフリード星の王宮を歩き回っている時だった。
「姫様、侍女長に見付かると……」
ヤマメは心配そうに呟く。
「ルーペならあたしが上手く丸め込んであげるわ」
「しかし、こんな所を見付かったら」
「何言ってるの。顔が知られていない今だけよ。王宮を自由に探索出来る機会なんて」
正式に開かれる歓迎パーティで正式にお披露目されたら、もう自由勝手に王宮内をうろつくなんて許可はされまい。しかし、ルビーナ付きの侍女達は、あらかじめフリード星王宮の事前調査が許されていた。
護衛などの活動を円滑にする為に、構造を把握しておく必要がある為だ。
何かがあった時、避難経路が判らなかったら困るし、要所を確認して護衛任務に必要な地理を頭に叩き込んでおかねぱならない。
「でも、姫様にこんな格好をさせたらと思うと……」
「ドレスで歩き回る訳に行かないわよ」
ルビーナの格好は侍女服だった。
どうせならとシャーマンの黒いスリングショットを希望したのだが、流石に「フリード星ではその格好は危険です!」と反対され、ヤマメの予備を借りて侍女姿に変装していたのだった。
「ルーペ侍女長と鉢合わせしたら……ああっ、生きた心地がしませんっ」
「心配ないわ。予定ではルーペ達が来るのは二時間後よ」
心配性なシャーマンの少女を笑う王女。
きちんとスケジュールを確認して先行しているのだと胸を張る。
「しかし、流石は王宮ね」
周囲を見回しながらルビーナは感心する。
施設の装備も一流なのは無論、様々な調度品、家具や花瓶から、タペストリーの様な美術品に至るまで一流品で溢れかえっている。
ルビー星と比較すると、やはり造りからして自分の星が見劣るのは否めないが、ここらは腐っても歴史がある惑星王朝の歴史的な優位と言う物なのだろう。
「あ……」
突然、声を上げたヤマメ。
「どうしたの?」
「いえ、扉が開いております」
成る程、進行方向にある一室の大きな扉が開いていた。
誰かが何かの作業をしているなら判るが、観音開き式の片側だけ開いているのは不自然だった。
普通は閉めるか、開けるにしても両方の扉が開いているものであり、如何にも中途半端な位置で、片側の扉だけオープンになっている訳はない。
「風に揺れてるわね」
風任せでぶらぶらと扉は動き、近づくと少し軋む様な音すら聞こえる。
誰かか、乱暴に扉を開けっ放しにして元に戻さなかった様な感じだが、この王宮ら勤める人々が、そんな不作法な事をするだろうか?
「姫様、気を付けて下さい。曲者かも知れません」
「曲者って……泥棒とか」
「いえ、暗殺者や間者の類いです」
その答えにはっとなる。
泥棒の犯行後より、そっちの方の可能性は確かに危険だ。しかし……。
「あ、危のうございます」
「平気よ」
敢えてルビーナは扉に近づいた。
ひと目、内部を確認する為である。
「普通、間者なら露骨に〝スパイしました〟って証拠は残さないわよ」
少なくとも、外から見て明らかに普段と違う状態を晒したりはせず、巧妙な偽装工作で表面上は異常なしに見せ掛ける筈であったから、泥棒以外なら既にこの場所からはとっくに居なくなっていると踏んだからだ。
泥棒だって、急ぎ働きでも無い限り、こうした現場は残さないだろう。
「せめて、私が先導致します」
「ん」
学友役のシャーマンの申し出に、ルビーナは短い返事をして従う。
以前だったら好奇心の赴くままに、先頭を代わるなんて事はしなかったろうが、ルビー星上空でのイツツメの件以来、こうした申し出は素直に受け入れていた。
あの憎い、エトワール・プティットの「役立たず」の言葉がフラッシュバックするからだ。
「どう?」
扉の中を確認しているヤマメに問う。
ヤマメは首を振り、「賊が侵入したと思われます」と報告する。
「あらら、酷い惨状ね」
危険は無しと判断したヤマメは、主が室内へと足を運ぶのを止めなかった。
ルビーナは先程、感嘆していたフリード星の高級な調度品が、見るも無惨に破壊されているのを目にして唖然となる。
「どう致しましょう?」
「常識的に考えたら、フリード星の警備隊なりに一報すべきだけどね」
その直後、部屋の一角からのそりと動く人影がある。
護衛侍女であるヤマメは咄嗟に反応して、主を庇う形で素早く先頭へ出て無手で武技の構えを取る。
「誰っ?!」
鋭いルビーナの誰何が飛ぶ。
「おいおい……俺を見忘れたのか」
ソファの上から身体を起こしたのは幼い男の子だった。
いや、ルビーナ達だって大して年齢は変わらないのだが、子供達は互いに姿を見詰めて暫く固まった。
「デュ、デューク・フリード殿下?」
最初に言葉を発したのはヤマメだった。
フリード星の王子は「ん……お前はシャーマンか」と問い返す。
「はい。ルビー星から留学に訪れた……」
「つー事は、ルビーナ姫の関係者か」
「は、はい」
同時にデュークはルビーナの方を確認すると、「虹彩が普通だな。ふん、ルビー星から来た田舎者め」と蔑んだ言葉を発した。
呆気に取られて見ていると「俺の学友として認可してやるが、余り調子に乗るなよ」と続けて、テーブルの上にあった菓子類を手にとって乱暴に食べ始めた。
『さ、山賊なの?』
手に取ってがばっと口に放り込んでばりばりと食い散らかす、文字通り、山賊か海賊の食べ方みたいで礼儀もへったくれも無い。
余りの不作法に何も言えずに居ると、デュークは何かを言い放つ。
「え?」
「聞こえなかったのか、異星の下層民め」
フリード星の王子は再び、口を開いた。
「俺の前から消えろ。下賤なシャーマン!」
〈続く〉
約2,500文字。
新年明けましておめでとう御座います。
予告通り、一週お休みをを挟んで『ベガ王子』再開です。
いや、暫くは『ルビーナ王女』編になりそうですが(笑)。