ベガ大王ですが、何か?   作:ないしのかみ

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今回の作業用BGMは、『バーディ大作戦』から「愛と死のパスポート」です。
探偵物のドラマなんですが、このテーマソングはクールで都会的な冷たさを歌っている様な気がするですよ。『キィハンター』から続く、探偵三部作の終焉に相応しい曲でした。この後番組が『Gメン75』で警察物になっちゃうんだけどね。

前に紹介した『アイフル大作戦』の後番組で正統派の続編なのですが、こっちの方がシリアス度が増してよりスリリングでしたね。最後は今は夫妻となってる谷隼人と松岡きっこが地雷で吹き飛ぶ壮絶な最後でしたし。
まぁ、谷夫妻が結婚したのもこれと前番組がきっかけなんだけど(笑)。



169(閑話)

 手に入れた新しい情報。

 それはフリード星の侍女長に気が付いた者が居ると言う話だった。

 

「で、そいつは誰?」

「学生です。じっとコマリエを睨んでました」

 

 コマリエ・ヴェグナーは今回の視察には公式に参加していない。

 私人として学校の事前視察にでも訪れたのは考えられるが、それでもお忍びに形の参加であろうし、公然と姿を現した訳ではない。

 

「不自然な形で隠れる様に佇んでいたのよね」

「屋上から、じっと眼下の我々を見下ろしていましたからね。しかし、良く姫様はコマリエがあそこに居るのが分かりましたね?」

 

 シャーマンでも無い限り、その気配に気付かれる事は無い程の存在感だったのだが……。

 

「勘かしら?」

 

 ヤマメの問いにあっさりと答える王女。

 

「勘ですか」

「何故か、あたしを見詰める鋭い視線を感じたのよ」

「はぁ。予知の超能力か、何かでしょうか?」

 

 母が所持していたと言う〝先見の力〟には程遠いが、義父のベガもこうした能力を持ち、過去に幾つかの危機を感じていたらしいとの話は聞いている。

 

「でも、あたしの話より、その学生について話す方が先でしょ」

「あ、はい」

 

 ヤマメは慌てて語り出した。

 それは在校生では無く、今度、この学院に入学する生徒らしい女子で、どうもルビーナと同じ留学生組であるとのことだった。

 

「正体は分かるかしら」

「いえ、まだ調べていませんからそこまでは……」

 

 するとルビーナは傍らの学生鞄を引っ掴むと、中身をごそごそとまさぐり出した。

 この鞄は入学に際して学校から渡された官給品で学内指定の革鞄なのだが、当の学生達、特にお貴族様の様な上流学生名に全く人気がなく、愛用しているのは奨学生ばかりと言う代物だった、

 割りとしっかりした造りで、高級な素材も用いられているのに勿体ないが、デザインの古めかしさから人気が無いのだろう。

 

「あった」

 

 ルビーナが引っ張り出したのは名簿である。

 今日、伝統に従ってわざわざ受け取った今時どうしたって感じの古風な紙媒体の教科書とかと一緒に渡された書籍である。

 既にクリスタル他、電子媒体が主なのにわざわざ印刷物を渡す、フリード星の古典主義に辟易していたが、こうして機器を用意出来ない車内とかでは、閲覧するのに却って好都合だった。

 

「特徴はどんな感じなの」

「ええと……ミントグリーンの髪でツーテール」

「髪型は宛てにならないから、他には?」

 

 パラパラと頁褒めくりつつ、質問を続けるルビーナ。

 スチル(写真)は入学前に撮った物だからヘアスタイルは宛てにはならないとして却下するが、髪の色はわざわざ変更する手間を考えて参考にする。

 まぁ、これも地毛だったらと言う但し書きが付きそうだが。

 

「後は、眼鏡を掛けていましたね」

「眼鏡って、そいつ、懐古趣味なのかしら」

 

 この時代、視力調整の方法は多岐に渡り、必ずしも眼鏡みたいな視力補正具には頼らなくとも良くなっている。

 但し、ファッションとして身に付ける者も存在するので廃れた訳でも無い。

 太陽も差さない真夜中に、何故かサングラスを掛けて粋がってる奴が居るのと同じである。 

 

「あ、この人物です」

 

 ヤマメが指さした先には、何処か野暮ったい少女が映っていた。

 

「ミシェール・アマツカサね」

「姫と同じ留学生ですね。出身星は惑星カタリってド辺境ですよ」

 

 一応、名前だけは知っているがヤーバン連合に臣従した独立星だった筈だ。

 近年、ベガ星連合軍に加入したがその中でも余り目立たず、その星の余り詳しい事情は両人共に皆無だった。

 

「一応、家は商家の様ですね」

「アマツカサ商事……か。聞いた事無いなぁ。ヤマメは?」

 

 ぶんぶんと首を振る様を見て、ルビーナは嘆息する。

 つまり、殆ど情報はないって事である。

 

「辺境の星とかからフリード星での学歴で箔を付けるべく、留学するのは多いですからね」

「私達の星に来てくれる方が、多分、実学じゃ上なのに」

 

 しかし、ルビー星やベガ星では数百年の歴史の重みとブランドが無い。

 いかに堕落していようが、一旦、確立されたブランドは信仰にも似た効果を発揮して何処かの名も無いが、それを実力で凌駕する学校があろうとも、一流と見做されて有り難がる者が多いのだ。

 

「とにかく帰ったら諜報部にも協力させて、至急、彼女に探りを入れます」

「ん」

 

 こうした時、自分自身で手足となる組織を持たないのを痛感する。

 ルビー星の行政、軍事、そして諜報などの長は名目上はルビーナだが、実際の運用は若さから来る経験の足り無さを理由に、代理の者が仕事を管理している。

 今の立場だと、教育係となったルーペ・ハヅキが事実上の宰相だ。

 自分が名目上の領主では無く、一刻も早く、実権を持った立場にならねば、こんな簡単な調査にも一々、外部の諜報部を頼る羽目に陥るのだ。

 

「頼んだわよ。でも、ミシェールがコマリエの事を気が付いていたのは……」

 

 偶然かもと続け様とした矢先、ヤマメは首を振った。

 

「明らかに敵意を向けていました。睨むが如く」

「そう」

 

 何故だろう。そう思った瞬間だった。

 突然、屋根のスポイラーが作動してリムジンが急停車を試みた。

 

「何事です!」

「か、壁が」

 

 高級車だけは有り、一般車両ではオミットされている慣性制御が効いている為、車内でルビーナらが衝撃を受ける事は無かったが、成る程、車窓に目を向けると壁状の物がぐんぐん成長している。

 

「護衛車両と寸断されていますね」

 

 極めて冷静に王女は分析した。

 リムジンの周囲をサークル状に土が盛り上がり、この車だけを孤立させているのだ。

 

「ウードウ魔術団かしらね。フリード星にも現れるのか……」

 

 ルビーナはうんざりとした表情を表に出した。

 

 

〈続く〉




約、2,300文字。

投稿時間が不定期になりそうなので、月曜日更新で時間は不定とします。
あと(閑話)の表記を変えようと思います。〇〇視点とかにした方が分かり易いかもと考えてます。
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