ベガ大王ですが、何か?   作:ないしのかみ

18 / 173
宇宙の王者、ガッタイガ~♪
出ました。主人公機。


18

 正面のカーテンが左右に引かれ、現れたフリード王は威厳のあるおっさんだった。

 とうに100歳を超えている筈なんだけど、若々しく見えるのはフリード星の科学力で老化防止の処置を施しているからである。

 お陰で下の方も若いままらしく、妾さんも多数居るらしい。

 

「この度は良くいらっしゃった。ヤーバン王家の方々よ」

 

 俺と姉様は前へ進み出て、王へと頭を下げて礼を取る。

 周りの臣下みたいに片膝を着いたりして必要以上に卑屈にならないのは、ヤーバン王家が対等であると示す為である。

 

「この度は歓迎有難うございます」

 

 代表として姉が答弁する。

 俺は随行してきただけの余計者だから、ここでは発言しない。

 

「うむ、これも両星の友好の為である。この場に王妃は居ないのが残念であるが、身重な身体だからの。さぁ、宴を続けようぞ」

 

 俺は『良く言う』と思いつつも神妙な顔をしてその場を引き下がる。

 パーティは再開した。

 

「ベガ、来なさい」

「はい、姉上」

 

 呼ばれたからには行かねばなるまい。

 俺は関わりたくはなかったが、呼ばれた先にはフリード王とデュークが居た。

 デュークの格好はフリード星の騎士スタイル。ガッタイガーに乗る時の青いスペーススーツ。そのヘルメット無しバージョンである。

 例の鍵、スターカーをフルーレ型にして帯剣している。

 どうやら姉上は、このフリード王の親子に俺を紹介する気なのであろう。

 

「ベガ王子。話すのは初であるな。フリード王である」

「はっ、お目にかかれて光栄です」

 

 最初は外交辞令だ。ここから奴がどんな男なのかを見極めよう。

 王は「これは何とも可憐な」と形容してくれる。

 うんうん、この姿も相手を油断させる武器だよね。俺はスカートの端を持ち、精一杯、可愛らしい仕草で礼をする。

 

「なかなか愛らしいではないか、デューク」

「いえ、これで鋭い所もある、利発な方ですよ。父上」

 

 しかし、デュークの方は笑みを浮かべながらも警戒を解いていなかった。

 目が笑っていないんだ。その上で「我が国の軍事を問うて来ましたから」と口にする。

 先程、『ガッタイガー』に関して問い質したせいだな。と直感する。

 

「おおっ、そう言えば円盤の発表であったな」

 

 フリード王は思い出した様に言って、手をパンパンと叩いた。

 

「王子。我がフリード星の最新兵器をお目にかけよう」

「噂の機体ですね」

 

 俺はすっとぼけて言うと、王は大きく頷いた。

 姉上は「まぁ、どんな物が出てくるのかしら」と興味津々。傍らに居るブラッキーも落ち着かぬ様だ。ズリルがすうっと俺に近付いて「殿下。下からせり上がってきますぞ」と警告する。

 やがて、正面のステージ。会場から見たら一段高くなった円形の台座上に、地下からエレベーターで上げられた黄色い円盤が姿を現した。

 

「ガッタイガーと言います」

 

 招待客のどよめき声を背景に、デュークが説明役を買って出た。

 赤い機首。あれが収納されているロボイザーなのだろう。を持った精悍なスタイルだ。

 長さは約30m程度。今、開発中の我がベガ軍のミニフォーとサイズは大差ないが、一品物の試作機だけあって、金に糸目を付けずにグレン合金みたいな特殊金属をふんだんに使ってあると予想される為、防御面では比較にならぬ程強いと思われる。

 ミニフォーの材質はごく一般的な物だ。白兵する為の物じゃないから、構造も航空機的だしね。

 

「新開発のエンジン搭載でパワーが凄いんじゃよ」

「新しい理論の動力ですか?」

「ははっ、まぁ、そんな所じゃ」

 

 俺は無邪気さを装って王へ質問してみたが、流石に機密らしく王に躱される。

 デュークが怖い顔で睨んでいる様な気がしたが、俺は美少女の仮面を被ったまま、その視線を無視する。ふん、鋭い奴だ。流石にあのデューク・フリードだけあるね。

 恐らく、光量子エンジンか。

 オタ知識を総動員して、俺はガッタイガーの性能を見極めた。

 こいつの最大の特徴は、分離・合体機能がある事だ。ロボイザーと言うロボットが分離して独立行動が取れる。そして、ロボイザーは実はかなり強いと俺は予想している。

 何せ、唯一の登場作『宇宙円盤大戦争』でも能力を秘めたままなのだ。

 

『ロボイザーは素手でしか戦ってないから無武装だと思う輩も居るけど、大間違いだよ』

 

 劇中では力を使う必要が無かった。或いは力を発揮する場面が訪れなかった。

 そのどちらかだろう。

 フリード星が全力を挙げて造り上げた機体だ。あの『グレンダイザー』に匹敵する超兵器の数々が内蔵されている筈なのだ。

 分離したロボットが丸腰な訳は無い。普通に考えたら、そう言う結論に至るよ。

 

『そいつを探るのが、今後の目的の一つになるな』

 

 そう思って機体を眺めていると、不意にデュークがこちらへ近づいて来た。

 

「満足したかな?」

「ええ、弟に報告できますね」

「本当は発表する気はなかったんだよ。が、君の指摘で急遽、お披露目となった」

 

 それは悔しげな口調だった。

 そして「ヤーバン人め」と小さく呟いたのが俺の勘に触った。

 

 

〈続く〉




グレン合金。
正確には『グレンダイザー』の主な材質です。『ガッタイガー』の方には詳しい設定がないんだよね。光量子エンジンについては公式設定です。

ロボイザーの方の設定はオリジナルで、今後、色々と超兵器を付加して行きたく思ってます。本文にもあったけど、劇中で武器披露してないけど無手って訳は絶対に無い。
仮にもフリード星の王子専用機、フラッグシップなんだからね。
デュークがフルーレ使ってたから、あんな感じの剣とか装備していたりとかが、あるのかも知れません。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。