えー、既にこんなに更新したのか。
でも、話はあんまり進んでない(笑)。
「それは信じるよ」
俺も解ってはいる。
そも、ズリルを見付けてベガ星の高官として受け入れたのは俺の所業だ。
本人も、まさかベガ星補佐官なんて地位が与えられるとは思っていなかったに違いないからだ。
ヨナメはほっとした表情をした。
本当に夫を愛しているのだな。と、俺は微笑ましく思う。
が、それとこれては話が別だ。フリード星に関する彼らの話を俺は問い詰める。
「ズリル。洗いざらいを話せ」
「はっ、殿下」
学生としてヨナメに遇ったのは工科大に入って直ぐであった。
彼女のことは気にはなっていたが、ある夜、他星の学生と喧嘩をして看護を受けたのが、そもそものきっかけであるらしい。
「喧嘩の原因は何だ?」
「ズリ星の事です。我が星はヤーバンの支配下に編入され、ズリ星人は劣った人間として皆に中傷されたからです」
「ズリ星は科学力に優れた星なのにな……」
俺は呟く。但し、ズリルの出身であるかの星は歪な発展をしていた。
開発優先で公害が蔓延しており、自然環境は致命的なダメージを負っていたのだ。
大気汚染を逃れ、地下都市に暮らすズリ星人を〝もぐら〟と呼ぶヤーバン人は多い。かつて緑の星であったズリ星は、今や草木一本生えぬ、不毛な惑星へと変化してしまっているのだ。
「殴られ前後不覚に陥った私を助けてくれたのが、今の妻であります」
「惚れたな」
「当たり前です」
後日、何故、助けてくれたかを問うと、ヨナメも自分も見下され、虐げられた境遇にあると話してくれた。
「ズリ星は環境が悪いがまだマシだ。それでも主権は国民にある。フリード星はそれに輪をかけて地獄であると…」
「だから、フリード星の政治体制の転覆を?
フリード星が階層社会であるらしいのは理解しているが、ヨナメ、一つ聞きたい。
ハークエとは何だ」
彼女は俯いていたが、やがて顔を上げる。
「被支配民です。正確にはハーク・テーとエータ・ヒーニンと言う二つの階級です。殿下」
「それを纏めて、ハークエか」
「ハークは労奴です。そしてエータはそれ以下の者になります」
話によるとフリード星の階級は貴族であるノーブル。自由民であるシティナー。
それに使役されるハーク。更にそれより下のエータに別れるらしい。
ギリシャ・ローマ時代のそれと似ているな。
自由民より上の階級は。所持するハークエの民を酷使して富を収奪し、被支配階級であるハークエの民は過酷な労働を課されている。
「フリード星が愛と平和な緑の星と称されるのは偽りです。
それは……自由民だけが持つ特権に過ぎません」
ヨナメは告げる。
それは数多くのハークエの民の犠牲の上で成り立っているのだと。
ズリ星の場合は開発優先で星の環境を破壊したが、それでもその理念は国民の、民の為にあった。しかし、フリード星は違う。
一部の特権階級の為に、星自体が存在している唾棄すべき政治体制を持つ星なのだ。
「では、ぼくを襲った反体制派とは、ヨナメ、君の仲間か?」
「判りません。反体制派は一枚岩ではないからです」
彼女は遠慮がちに「もしかすると、反体制派を装ったフリード貴族の差し金の可能性も…」と呟く。ありそうだな、そりゃ。
ズリルは手を叩いて「その視点はなかった。うむむ、そっち方面からも探る必要がありますな」と反応する。
「そう言えば、テロの調査は進んでいるのか?」
「ブラッキー殿が張り切っておりますからな。ガッタイガーの件も含め、ルビー星の方で何等かの圧力をかける模様です。無論、ヤーバン本星へも連絡が行っておるでしょう」
「相手の弱みに付け込んで、難癖を付けるのは外交の基本だな。よし、ぼくらも一つ乗っかろう。
ヤーバン本国に軍事費増大の要求を出す様に、ガンダルに伝えるか」
フリード星から自衛を口実に軍事予算の増額を通すのである。
無論、これはいざとなったら報復の為、ベガ軍がフリード星へ押しかけると言う名目も盛り込まれている。
基本的にベガ軍は惑星防衛軍だから、恒星間航行の出来る大型艦は数少ない。その為にそれ建造用の予算を頂きたいと申し出る訳である。
「殿下、それは……」
「喜べ、ズリル。これでマザーバーン建造の目処が立つぞ」
報復用戦力。ヤーバンならではの考えだが、これは通りそうだ。
やられたらやり返せ。舐められたら終わりだ。が、ヤーバンの思想の一つであり、軍部は喜んで賛成するだろう。
何せ、今まで俺は覇気の無い、玉無しの腰抜けだと軍のタカ派に陰口を叩かれてたからね。
「にしても、テロリストの正体は不明か」
「フリード軍が証人諸共、抹殺してしまいましたからな」
「わざとか?
しかし、民をも巻き込むなぞ、ヨナメ、どうなってるんだフリード星は」
ヨナメに問うと「我らハークエの民は〝人〟ではないからです」との答えが返ってきた。
聞けば彼らは自由民ではなく、貴族達の持ち物に過ぎないのだと言う。命令に従って労働するだけの労奴であり、人権すらも与えられぬ不可触民なのであると。
だから、殺しても罪にもならないのだとも。
〈続く〉
ズリ星の設定に関してはオリジナルです。
ズリルが何故、美しい自然環境保護に拘るのか、その理由付けとして『悲惨な母星の二の轍を踏ませたくない』との思いがあるとの理由付けです
次回、有名なベガの台詞が登場するかも知れません。
乞うご期待!