全体的に本作は、どことなく昭和テイストです。
ホロモニターやタッチパネル、グラスコクピットみたいな技術もあるんだけど、やっぱり今風では無く、『グレンダイザー』本編準拠のイメージな、メカの操縦席はレバーやスイッチ、メーター類がてんこ盛りなのがデフォな気がするんです。
だから警備ロボもロペットやアナライザーみたいな、あんな感じで(笑)
そして火星将軍ロボ。
と聞くと、『蓬莱学園』に登場の〝二代目たそペン総統〟を思い出してしまう。
少女は身を震わせて男爵に対峙した。
豚男爵はその艶めかしい姿をしげしげと眺め、「ほっほっほ」と笑っている。
「近隣の者ではあるまい。さては間者か」
「男爵、いかがなさいますか?」
取り巻きがいきり立つ。
「ふむ、ワシの大砲をぶち込もうかと思っていたが、こいつがシャーマンなら話は別じゃ。
シャーマンは暗殺者としても有能。
下手に犯したらワシの方が食いちぎれるやも知れんからのぅ」
脱いだ服を再び着ながら、男爵の目に残忍な光が宿る。
「誰の命で此処へ来た? と言っても答えぬじゃろうな。シャーマン族とはそう言う者共じゃ」
つかつかと近寄って少女の顎をぐいと持ち上げる。
「反抗的な目だのう。ビッグサイズの特製器具を用意してやろう。
凄いぞ。内部で内蔵された刃が飛び出し、お前の大切な胎内を、ズタズタのぐずぐずにするのじゃ。ミキサーにかけられたミンチ肉の様にのぅ。
処女を器具で散らし、そのまま息の根を止めてやる。おいっ」
「ははっ、道具を用意致します」
って、やばいな。道具なる物を取りに手下が屋敷の方へ来るぞ。
俺は迷う。姉上との約束にだ。
無謀な行動を起こさない事。
我々はあくまで部外者であり、彼の地の政策に干渉せぬ事。
だが、このまま放置して良いのか。俺は…。
「止めろ!」
中に入ってきた手下を出会い頭に殴り飛ばし、俺は思わず叫んでいた。
豚男爵は、「な…何者じゃあ」と目を白黒してやがる。まぁ、突然、侍女服を着て、顔半分を覆面で隠してる怪しい女が出てきたらビックリするだろうな。
「悪趣味なんだよ。さっきから」
「こやつ、わしの屋敷に。侵入者じゃ、やっつけてしまえ!」
悪党の決め台詞みたいな命令と同時に、棍棒を持った手下が殴りかかってくる。
が、動きはのろまだ。
まずテイルが、続いてヨナメが動いて手下共を無力化する。同時にブラッキーが銃の置かれた台をキックでひっくり返し、飛び道具が奴らの手に渡らぬ様にする。
シャーマン二人が飛び出して、少女を拘束している豚の手下共を倒す。
この間、僅かに十五秒程。
「ひ、ひぃぃぃ、お、おのれぇ」
豚が怒りながらも、恐怖で失禁すると言う珍しいパフォーマンスを見せる。
少女は自分を助けたのが、同じシャーマン族なのに目をぱちくりさせている。名を問われて「ハツメ」と答えたが、まだ理解が及んでいない様子であった。
「胸くそ悪いショーは止めろ」
「ハークのみならず、え、エータを助けるというのか!」
「悪いか」
「く、狂っておるぞ」
豚はあわあわと狼狽しながら「エータは作られし者に過ぎん。まして廃エータなんぞ価値の無い廃品じゃあ」と言う。
俺は「廃エータ?」とヨナメに問うが、それに答えたのは彼女では無かった。
「何だ。それも知らぬのか。ほほほっ、貴様、異星人だな?
エータの資産価値は製造後60年よ。それが過ぎれば使い物にならぬ廃品じゃ。
身体能力の低下。維持費の高騰。労働力としては赤字になる。廃棄処分じゃ」
「廃牛や廃鶏みたいに…」
「おお、良い例えじゃ。
エータなぞ人型の家畜。人造の単なる道具じゃ。生殺奪与の権利は我ら〝人〟にある」
豚男爵はわめき散らした。
「お前も使い物にならぬ道具は捨てるだろう。その前に廃品利用をして何が悪い。
ほほほっ、物を捨てる時、貴様はバラバラにして遊ばんかったか?
模型に火薬を仕込んで破裂させなかったか?
そして、人形を火あぶりにして喜ばんかったのか?」
豚は例を挙げて、自分の正当性を説いた。
俺は手を伸ばし、むんずと顔を掴むと豚の良く回る口を封じる。そして、非力な己の力とは思えぬパンチで男爵の顎にアッパーを叩き込んだ。
悲鳴と共に豚男爵の太った身体が宙に舞う。
「煩いんだよ。でも、この程度で許してやる」
無謀な行動を起こさない事。
我々はあくまで部外者であり、彼の地の政策に干渉せぬ事。
この姉上との約束を破ってしまった後悔もある。
本当は怒りの赴くまま、こいつをサンドバックにして叩きのめしたかったが、この一発で何とか怒りを抑え込み、「ハツメを保護してくれ」とシャーマン達に声を掛ける。
しかし、これは偽善かも知れない。そんな思いが心の中一杯に広がる。
こいつを殴ったって、いや、例え殺しても、今の俺にはフリード星の制度は変えられない。
行き場の無い怒りと無力感。
そんな思いを抱えながら、俺は一刻も早く、この場から去りたかった。
「ゆ、ゆるさんぞぉ」
顔の歪んだキラー男爵が立ち上がる。
懐から何かを取り出すと「スイッチオン」と叫んだ。
「ほっほほほ、あの世で後悔するが良い、警備ロボを始動させたぞよ」
機械的な音を立てて数体の人型が出現した。
脚部は無く、浮遊型だが何となくレトロなデザインだ。
手はやっとこ型。頭にはくるくる回るレーダーアンテナ。身体の各所に、何故かメーターが付いてやがる。
火星将軍みたいな昔の玩具ロボット、ほら、歩いた後、胴体が旋回して胸が開き、機関銃撃つ奴にそっくりだ。
「わし以外は皆殺しじゃあ。地獄へ行け!」
〈続く〉
エータは亜人。人造生命体です。
人間そっくりですが生産工場で製造されたり、ある方法で増えたりします。
製造過程で様々なタイプが生産されますが、製造後60年で廃棄処分になります。
生かして置いても、年間の生産額から維持費を引くとコストが見合わないからです。そう、年を経て卵を余り産まなくなった鶏。乳の出が悪い乳牛みたいな物ですね。