ベガ大王ですが、何か?   作:ないしのかみ

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フリード星の歴史が語られます。
「美味い、美味すぎるっ」は埼玉銘菓のお饅頭ですが。
ヨナメの先祖らが一万年前に住んでいた星、それは…。
「今はもう遠い貴方に、見せたい遙かな故郷♪」

ああ、勘の良い人は原作からの推察で判ってしまうよね。
ハーク・テーのテー(Ter)の意味も。
でも、巻き貝の宇宙船に乗ってここへ来たんじゃ無いよ(笑)。


30

 村を出た所で待ち構える官憲。族長派のシャーマンから身を隠すべく、俺達は他者との接触を避けながら、地下を進んでいた。 

 ハークエ地区の地下施設の下に別の地下街がある事に驚いたが、こちらは先の階層よりも古い施設であるらしい。

 ヨナメによるとこうした階層が幾重にも連なっており、下へ行く程古くなると言う。

 

「破棄されたんですね」

 

 テイルが感慨深げに言う。

 下へ行けば行く程、装飾過多な古代の形式が目立つからだ。

 

「はい。人々は新築された上階へと移って行きました。ここは数千年前の市街地です」

 

 あらかたの照明は落とされていて薄暗い。

 シャーマン村から地下に潜り、更に追跡を巻く為に三層ばかり地下へと赴いたのだけど、ここはゴーストタウンだった。と言っても荒廃している訳じゃ無い。

 むしろ逆で、通りや建物は完璧に整えられている。だが、完璧に生活臭が無いのである。言うなれば無人のモデルルームみたいな感じと言えば、判ると思う。

 一つ上の層は、荒廃していてもまだ人間、と言ってもハークエ地区の賤民達だが、の姿がちらほら見られたが、ここには人影はひとつも見当たらない。

 

「整然としてるが、何かお化けでも出そうだな」

「気を付けて下さい。お化けでは無くモンスターは出ますよ」

 

 俺の言葉にヨナメが反応する。

 え? と固まった俺に彼女は「だからモンスターを恐れ、追っ手も降りてこないからこそ、我々はここを逃走経路にしているのです」と説明する。

 

「どんなモンスターですか、ヨナメ様?」

「ああ、ハツメはまだそこまで教えられていないのですね」

 

 若いシャーマンの質問に、彼女は「既に我々ではどう作成したのかも解らない、旧時代の遺物になるわ」と答えると、「運転は慎重にブラッキー殿」と告げる。

 

「攻撃的ではありませんが、万が一、モンスターに突っ込んでしまうと一大事ですから」

「それはどんな姿をしているんだ?」

 

 興味本位で俺が尋ねる。

 宇宙生物だから、デーモン族みたいな変で恐ろしい格好をしているんだろうか。

 

「不定形生物です。決まった形の無い姿ですが、そう…」

 

 不意にヨナメが外を指さした。

 

「丁度、居ました。あいつです」

「何っ?!」

 

 そこは地表から突き出した太い柱の一つだった。

 この柱は天井となっている上の階層を支える支柱の一つであった。

 無論、幾つもの支柱があちこちから生えて上を支えていて、これが無ければ上に増築された都市その物が崩壊してしまうだろう。

 実際、俺達はその柱の一つにあったエレベーターでここまで降りて来たのである。

 その一つにまるで枝の上を這う芋虫みたいに、不定形の大きな物が取り付いて蠢いていた。

 

「ナメクジみたいね」

「言い得て妙だな。テイル」

 

 薄暗い、薄暮の様な状態で固定されている空の下、そいつは蠢動していた。

 サイズはこの車よりも大きそうだ。色は暗すぎて判別しがたいが、形はナメクジみたいな長い塊だった。

 ブラッキーが「車を停めますか?」と尋ねて来たので、俺は「ああ」と生返事をする。

 

「古代文明の遺産なのか?」

「はい。旧世代の遺物であり、このフリーデンの根幹を支える物であると記録にはあります」

 

 ヨナメは続けて「こちらから刺激を与えなければ大丈夫ですが、観察しますか?」と続けるが、俺は『君子危うきに近寄らず』との言葉が脳裏に浮かんで、「いや、まずは知ってる事の限りを聞いてからだ」と興味をぐっと押さえ込む。

 ヨナメ曰く「それはシャーマン族に残された伝承であって、どの程度正確なのかの自信は無いのですが」との前提付きであったが、俺は構わずに先を続けさせた。

 

「あれは元々、このメガロポリスを、いえ、都市宇宙船を管理維持する存在なのです」

「えっ、この都市が都市宇宙船?」

 

 こくりと肯定するヨナメ。

 一寸待て。フリーデンの規模は中心部だけでも10km四方はあるんだぞ。

 全体を考えれば50kmはある。それ全体が一つの宇宙船が土台になっていると言うのかよ。

 どっかの「俺の歌を聴け!」に登場する移民宇宙船や、惑星オネアミスから来た円盤以上じゃないか。

 

「遙か昔、およそ一万年前。フリード星人は、いえ、当時は別の名を名乗っていましたが、彼らはこの船である惑星からこの星へと移住して来たのです。

 かの星で征服したハークの民を労奴として引き連れて」

「では、惑星自体が未開発なのも……」

 

 彼女は無表情に頷く。

 

「つまり、フリード星人はこの星で発生し、長い歴史を積み重ねて文明を進化させてきた訳じゃ無く、他の惑星から唐突にやって来た異邦人な訳ね」

 

 テイルが後を継ぐ。

 ヨナメはそれを「惑星上で自然発生した文明では無く、唐突にこの船と共に現れたのだから、惑星に発展の足跡が見られないのは当然です」と肯定した。

 つまり、フリード星人は一万年もの間、この船だけの小さな世界を維持して来たのか。

 

「あれは、宇宙船のメンテナンスに使われる生体ユニットだと聞いております」

 

 この船が長い間維持され続けているのも、あのユニットが宇宙船の基本的な部分を整備し続けてるお陰だ。

 だから、これの範囲外の場所ではしばしばメンテ不足による事故が頻発しているらしい。突然、地面が陥没したり、空のパネルが不調を起こしていたり……。 

 

「にしても、そんなに長期間活動出来る物なのか。

 旧文明のと言っていたが、それじゃあれは一万年前、いや、旧文明の力をフリード星人が失った時期が何時なのか判らないけど、かなり昔の代物になるぞ」

「フリード星人がそれを失った時期は数千年前と考えられています。

 当然、残滓の様な物はあって、その一部を使役してコントロールする術は残っていますが、最早、彼らは同じ物を創り出す術を失っております」 

 

 話によると、モンスターは目に付いた有機体を食べて増殖と自己維持をするらしい。

 無論、無限に増殖する訳では無く一定時間で死滅するが、都市に発生するゴミやカビ、そして虫や鼠などの害獣はこいつに食われて、新しい個体を生み出す糧になって新陳代謝を繰り返す。

 当然、有機体には人間が含まれる。だから、間違って触れると悲惨な目に遭うとの話である。

 危険な存在だが、ある一定の範囲内、つまり宇宙船内から外へ出る事は無いので放置している。つまり、この階層までが本来の船内なので、それから上へは出現しないのだ。

 

「モンスター、あれはナノマシンの集合体みたいな物か?」

「ナノ…。ああ、微少な分子機械ですね。自らの構成物を補填して都市機能を維持させる。

 恐らくそうですが、どんな原理で動いてるのか、私では見当も付きません」 

 

 ナノ技術はヤーバンでも完全に実用化はされていない。

 コストと維持の点で問題があり、数年しか保たないので不経済だからである。

 それを数千年間、いや、もっとだろうを開発し、維持出来るフリード星の古代文明の凄さに俺は言葉を失っていた。

 

「皮肉にも、あのモンスターのせいでここから先のエリアへ降りて行く者は居ません。

 この先には膨大な遺失技術が眠っている筈ですが、生者には手の届かぬ聖域と化してしまっているのです」 

 

 

〈続く〉




都市宇宙船はマクロス級と言うより、劇場版に出たアルテイラかな?
やっぱり二千文字超。2,800文字とか、今回超えすぎだよ。
もう、「制限二千文字内外」に縛りを変更しようかな。

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『エロエロナ物語、海軍娼妓士官 -サッキュバスの館4-』を更新しました。R18ですが、興味ある18歳以上の方はご一読を。
昔懐かしい読参ゲームを主題にした『フィクショナル・トルーパーズ・オールド』も投稿しました。こちらも宜しく。
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