ベガ大王ですが、何か?   作:ないしのかみ

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クロスオーバーとして『ゲッターロボ』及び『G』の要素が出てきますが、この設定に関しては余り深くは関わらない予定です。
と言うのも、ゲッター・サーガの設定を大々的に取り入れると『人類の進化』とか、話が壮大になりすぎて、収拾が難しくなって面倒だから。
あくまでも本作は『グレンダイザー』がメインなので、乗っ取られる危険は回避したいのです。


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 テーラで敗れ、ムーへ投降したドラゴニア人。

 しかし、古代では捕虜はどう言う扱いを受けるのか、大体は想像出来るだろう。

 彼らは被支配階級としてムーの民、今で言う所の自由民の下に置かれ、ハーク、すなわち労奴として労働に駆り出される事となる。つまり、自由と権利を奪われる奴隷だ。

 これはムー人がテーラを捨てる際、ハークとして積み込んだ者達にも適用される。

 

「ベガ。実際、この星の奴隷制度みたいな物は本来の搾取と言う点から見れば、機能してないと言うのを知ってますか?」

「え……」

「基本的に都市宇宙船は、閉じられた完璧なライフ環境を持っているからです。

 食料他の自給はバイオブラントが自動生産しますし、必要な生活用品の生産や船内の維持もエータと生体ユニットが自動的に管理します。つまり、労奴が働く必要は殆どありません」

 

 姉上が語る内容に俺は背筋が凍る。

 それでは、何故、ハークの民は労奴として生かされているんだ。

 

「で、では、何故?」

「懲罰です」

 

 テロンナ姫は目を閉じると口からその言葉を絞り出した。

 曰く、「フリード星人はドラゴニアの悪行に対し、忌むべき民へ苦行を課してその罪を償わせている」と。

 先祖の罪は消えない。

 だから、子々孫々まで、贖罪させるべくハークの民を弾圧するのである。

 

「狂ってる。姉様、永遠に罪を償わせるなんて、おかしいよ!」

「フリード星人はそう思っていません。

 汚れた魂を持つ、おぞましき人間。子々孫々まで罰を与える事が、彼らハークに対する救済である。苦役を課し、苦しみの中で死んで行くが、彼らは死してようやく罪より逃れられるのだ」

 

 自由民は彼らの魂を救済する為に、過酷な生き地獄を与えねばならない。

 

「…そう信じ切っているのです」

 

 俺は悟った。こいつは物事の道理じゃない。

 これは多分に宗教的な思想だ。

 本当にフリード星人は、罪に塗れたハークを弾圧する事が善行であると信じているのだ。

 宗教的な使命に駆られている人間へ、「それはおかしい」と否定しても意味は無い。

 敬虔な宗教信者に「神なんて居ない」とか、宗教行事に「そんな行いは迷信だから止めろ」と論理的に説明したって無駄であるのと同じ事だ。

 それを否定する者は彼らにとって異端であり、相容れない存在して敵対的な関係になるだろう。

 

「そして、彼らハークは魔神に対する贄なのです」

「贄…そんな、非科学的な」

「彼らが悪神と恐れている魔神を、何故、未だに神殿で祀っているのか、分かりますか。ベガ?」

 

 俺の方を見ずに、ただ語る姉の言葉はぞっとする冷たさを伴っていた。

 夕闇迫る中、風に揺れる縦ロールを、俺は姉の背中を見続ける事しか出来ない。

 

「あの魔神は祟り神だからです。祟りを恐れ、その為に祀って供物でご機嫌を取っている。その供物が…」

「ハークなのですね」

 

 姉は頷いた。「かつてムー大陸を滅ぼした魔神に対する供物として、その原因となったドラゴニアの末裔を罰する事で、自由民達は怒りが自分達へ向かぬ様にしよう考えたのです」と。

 

「魔神に『怒りを向けないで下さい。代わりに我らは罰するべきハークを代わりに虐待しています』と!」

「そうです」

 

 俺は目の前が真っ暗になった感覚を覚えた。

 姉様は淡々と語っているが、無論、それを肯定している訳じゃ無いと信じたい。

 

「これを変えるのは容易ではないでしょう」

「でも、姉様はハークの民を解放するって……」

 

 ずっと神殿の方を見詰めていた姉が、身体の方向を変えて俺の方へ向いた。

 

「そう。私がフリード星のデュークの元に嫁ぐのは、これを改革したいが為なのですよ」

「姉上」

 

 その泣きそうな顔を見た俺は絶句していた。

 フリード星へ送られて生活する内、姉はこの歪んだ構造に気が付いたと同時に自分も、フリード星人によって忌み嫌われているのを自覚したのだ。

 異星人だから?

 異人恐怖症(ゼノフォビア)は珍しい物では無い。姉は頑張ってフリード星の文化を習い、その環境に溶け込む努力を行った。

 だが、気が付いてしまった。自分が忌み嫌われている理由は、フリード星人によると純血族では無いからだ。

 

「その純血族とは何ですか?」

「ドラゴニア人が黒幕によって遺伝子改造された類人猿だと話しましたね」

「はい」

「遺伝子改造など、人為的な操作を受けた人間を彼らは忌み嫌うのです」

 

 姉は「エータもそうですが」とも付け加える。自然環境で生まれた〝人類〟だけが至高の存在であって、選ばれた民であるとの選民思想である。

 俺は思い至った。

 ヤーバン人他の主な人類は、謎の古代種族によって遺伝子改造を受け、宇宙に撒かれた種であるとの学説がある。

 

「ま、まさか姉様も」

「ヤーバン人は既に遺伝子改造を受けていますからね」

 

 ガンダルの様に多重人格で、男女二つの精神が同居して片一方が表へ出て来る人間などは、自然界では有り得ず、古代人によって遺伝子改造を受けた影響である。

 超能力を備えた人間が輩出するのもその影響との見解もある。

 事実、シャーマン族などはその典型とも言えるだろう。

 

「彼らはそんな汚れが混じった人間が、自分達の王家に混じる事を快く思っていません。

 でも……。ベガ、フリード星人が忌み嫌う純血族以外の者達だけど、皮肉にもね」

 

 黒歴史とされる記録の中に記されていたある一文を発見し、姉様は思わず笑ってしまったそうなのだ。

 それは宇宙船を、現在のフリード星の超科学力の基を提供したアトランティス人の事である。

 

「アトランティス人は人外であったらしいのよ」

「人外って……黒幕みたいな?」

「人ではあるわね。でも、彼らは鬼だった」

 

 それは頭に角の生えた姿をした人類。

 異星から来た異形の者達。

 

「つまりフリード星人の忌み嫌う遺伝子改造人類か、或いはミュータント。

 それらの遺産を基礎にしている事を都合良く忘れて、純血族でございって威張ってるなんて滑稽だとは思わない?」

 

 姉は皮肉っぽい笑みを浮かべると、からからと笑った。

 フリード星人にはアトランティス人の血も少なからず混じっている。だから、一定の割合で産まれる子供には、角の生えた子が生まれてくる事を姉は知った。

 

「その子供の運命は、まさか、闇に葬られるのですか?」

「処分されるか、運が良くてもハーク。つまり労奴に格下げでしょうね」

 

 そして「だからこそ、ハークの扱いを是正してこの星をまともに戻す必要があるのよ」と、姉は断言した。

  

 

〈続く〉




「青く輝くテーラを穢し……♪」とかの幻聴が、ベガの耳に…。
もしかしたら、ウザーラの首が海底に安置されているのかも知れません(笑)。
え、ガルラ?
はて、何の事かな(すっとぼけ)。


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