長かったなぁ。数話でさらっと流そうと思ったんですが、そうは問屋が卸さなかった。
フリード星に関する裏話に関しては、活動報告の「『ベガ大王』に関しての異世界描写、雑談」に載せていますので、良かったらご一読下さい。
デューク・フリードと姉は一緒に育った。
だが、最初は各々が持つ常識の違いで、不仲であったそうである。
「彼は労奴の事を理解しなかったわ。まぁ当然よね」
生まれた時からハークは罪に塗れた劣った階層だと教育され、それを被虐的に扱う事こそ善行だと教えられて来たのだから。
姉の「そんなのはおかしい」との意見は、最初、全く理解されず、受け居られる事は無かった。
「でもね。理を説いて、更に黒歴史まで遡って、根気強く彼を説得したのよ」
「反発は無かったのですか?」
姉は「当然、あったわよ」と肯定する。
洗脳教育に近い状態から、理知的に物を判断させる様にするのには時間が掛かった。
姉は「誰かが、それを正しいと言っている」から、「何故?」「どうしてそうなのか」を質問し、自分で物を考えさせる様にデュークを導く。
「例えば、何もしていないのに『これは、何代前の親の罪だ』と殴られたとしら、どう思う? ってね」
自分の責任の無い過去の事まで、罪を適用させる事はおかしいのだ。
例え悪行を祖先が成したとしても、それには無関係の世代に責任はない。
「でも、それを知って彼は苦悩したわ。祖先の仕打ちとかにね」
「資料を見せたのですね」
「ええ。王族の彼も知らない物もあって驚愕していたわね」
夕闇は影を濃くして来た。星が輝き出している。
王女は「風が強くなってきたわ。中へ入りましょう」と俺に促し、ベランダから室内へと入る。
「そう言えば、デューク王子が姉上を呼び出したのは…」
「私との結婚式の予定が決まったからよ。半年後にフリード星で行われるわ」
今回の訪問も、その為の下準備に近い物であったのに相違ない。
渋るフリード星側にの尻を叩くべく、父、ヤーバン大王が行った政治的圧力の一環だろう。
「遅ればせながら、おめでとうございます。しかし……」
「何?」
「姉上は本当にデューク・フリードの事を愛しているのですか?」
それは俺の本音だった。
政治的な、王女としての義務では無く、あの男の事をどう思っているのかを。
「好きよ。彼の事は好き。だから、こんな面倒な星に嫁ぐ気でいるのよ」
ややあって、「そりゃあね。始めは嫌だったわ。周囲からの虐めもあったし、見下されたりもした。こんな星なんか滅んでしまえと思った事さえあったわ」と呟く。
最初は政略結婚の相手としか思っておらず、しかし、付き合う内らその誠実さと優しさに惹かれ、その為にフリード星を改革しようと思い立つ。
歪んでいるのだ。
フリード星人は内向的で、外へ目を向けず、小さな世界に閉じこもって満足してしまっている。
その癖、傲慢と言える程のプライドが高く、唯我独尊で、かつ井の中の蛙なのだ。
「今までは幸運だったのですよ」
「幸運?」
「そう。危機も無く、ヤーバンとの接触があった他は、ずっと孤立した状態で自分の世界に関わっているだけで済んでいたのです。でも、今の宇宙を見てご覧なさい」
コンソールを操作して、姉はパネルへ現在の宇宙勢力図を投射する。
「この中には戦闘中のガイラー星域他多数。更に正体不明の謎勢力もあります。
宇宙は戦争で満ちているのですよ。そんな中、フリード星が巻き込まれない保障なんて何処にありますか」
「だから改革を?」
その時、コンコンとノックの音が響いた。
ややあって「ブラッキーであります。姫様」との太い声がした。
「何事です?」
「デューク・フリード王子が面会されたいと申しております」
「まぁ、お通しして」
即決で姉は判断すると、スクリーンを消して身を整えた。
俺も脇に寄って彼を出迎える。
「やぁ。ベガ君も居たのか」
「ご無沙汰です」
入って来たデュークに俺は会釈した。
その顔に先程の怯えを見せた恐怖に満ちた表情は無い。
「ご成婚なさると伺いました。おめでとうございます」
「半年も先になるけどね。しかし、その間、僕もテロンナも予定が一杯になるだろう」
色々と準備もあるのだと思う。
その間、姉上にフリード星の反対派から、何かが起きないかが心配だが。
「ベガ、私はフリード星に嫁ぎます。だから、私の領地であったルビー星は空白になるわ」
「あっ、そう言えばそうですね」
「だから、父に頼んでルビー星の統治をベガ、貴方へ任せたいと思うわ」
ちょっ、俺は驚いた。
おいおい、青天の霹靂だよ。ルビー星と言えば、俺が収めるベガ星なんかより都会な星だぞ。
この決定に驚く者がもう一人。
ルビー星の武官であるブラッキーだ。彼もこの話は初耳だったのであろう。
「最初はブーチンに任せるつもりだったけど、ベガ、貴方の方が私の星を上手く収めてくれそうだからね」
「あ、でもいいんですか?」
「乱暴者のブーチンが収めたら、経済がボロボロになりそうだもの」
言えてる。奴なら星に重税を課して、とにかく戦費を搾り取りそうな気がするぞ。
呆気に取られているブラッキーに姉上は「ベガを補佐してあげてね」と伝えるが、当の本人はカクカクと顎を上下に振るだけだ。奴だったら、俺よりブーチンの配下に就きたいんだろうな。
「先程は取り乱して済まなかった」
デュークが姉上に陳謝する。
突き飛ばして逃走したんだから、かなりの罪悪感を抱いてるだろうと想像出来るな。
「いいえ」
「良き星を作りたい。でも…」
デュークフリードは迷っている様だった。
だから「僕はそれを成せるんだろうか」と不安げに呟いたのが、何処か俺の心に引っかかる。
姉はそんな彼の手を取り合い、そっと見詰める。
「さぁ、ぼくらは退散しよう」
ブラッキーに俺は声を掛け、二人を残して室内から退室する。
抱き合い、接吻を始めた異星同士の王子と王女に、ここは二人の世界にしてやるべきだと考えたからである。
外に出た時、中から色っぽい喘ぎ声まで聞こえて来て、「ああ、やっぱり」と俺はそれが正しかったのを実感する。
こうして俺のフリード星訪問は終わった。
結婚の発表が大々的に行われた後、姉も一度フリード星を離れ、ルビー星で婚姻の準備を進めている。
その間、シャーマン族に関する事とかもあったんだけど、まぁ、これは割愛しよう。
結果だけ言えば、俺はシャーマン族数千人を味方に付け、一部を、ベガ星へと連れ出す事に成功した。
ヨナメには感謝だ。
しかし、半年後、あの事件が起こるとは俺は想像もしなかったんだ。
〈続く〉
シャーマン族のお話もあったんですが、これ以上、フリード星編が伸びるのは嫌なんで省略しました。
親ヨナメ派の者達を救出し、ベガ星へ移住させるお話なんですけどね。
さて、本作は二日に一回という頻度で挙げて参りましたが、現在ストックが尽きましたので、第三章に移るまでは暫く休みを頂きたいと思います(でも、不定期連載なので唐突に投稿するかも)。