ストック無しから始まっているので、今回の様に数日から一週間程度のインターバルでの投稿になると思います。
どうぞ宜しくお願いします。
企業は惑星の基幹産業だ。
産業は大まかに一次、二次、三次産業に別れる。
一次産業とは農業や漁業。
食料生産の根幹に関わるが、ここでの企業の割合は余り大きくはない。
対して三次産業は流通や観光業等のサービス業である。
これも規模としては惑星経済を回す程ではない。
要は惑星規模で言うなら二次産業、つまり製造業が企業としてはもっとも主力になる。
つまりは鉱工業だね。
企業活動その物の規模ももちろんだけど、それを支える設備投資なんかのインフラに付随する経済を考えても、膨大な富が産み出され、経済を回すエンジンになるからだよ。
「呼び水ですと?」
「二つの星はぼくの管理下にある。しかし税制が違う。一方は高く、一方は低い」
ヤーバンの行政では企業の撤退や移転は難しい。
何処の星も、自分達の飯の種、つまり自分の所にある企業が逃げない様に囲むからである。撤退の際にはペナルティとして膨大な課金が科せられたり、生産施設の撤収を認めない等の措置が行われたりする。
まぁ、地球で言えば、中国に進出した企業みたいな事が行われている訳だ。
俺は「さて、ここで問題だ」とガンダルに言う。
ルビー星とベガ星は俺の領地となる。すなわち、領地となった際には行政的に俺の管理下に入る訳である。
「あ」
「分かったみたいだね」
そう、行政が同じなら、企業は移転して何のペナルティも科せられない。
同じ領内の場所を移転するだけだからだ。
「企業は税率の低いベガ星へとやって来るだろう。しかも、ぼくらが待ち望んでいた製造業がね」
鉱業の方はベガトロン鉱山の存在から投資は盛んであったのだが、製造業に関する企業はベガ星には申し訳程度にあるだけだ。
鉱山機械の製造なんかも他星の輸入品頼りで、補修工場が幾つかあるだけ、しかもその部品を製造する工場もベガ星にはなく、もし故障したら部品が届くまで使えないと言う、腹が立つ事態も多いのである。
だから基幹産業である製造業を誘致したい。
俺が低税率を餌にして、ベガ星へと企業を呼び込むきっかけを作ってくれたのは、テロンナ姉様のお陰である。
二つの星を支配下に収めなければ、こうした策は取れなかっただろう。
「まぁ、ルビー星の不満は高まるのは事実だろうけども、ここはベガ星の発展の為に涙を飲んで貰うしかない」
これに関しては御免としか言い様がない。
しかし、だからこそのご祝儀として一定期間、ルビー星の税率を下げるのである。
「どうでしょうか。付随してルビー星からの移民も増えると思いますからな」
「ルビー星の方は減収になるか。まぁ、これに関しては仕方ない」
元々、ルビー星は豊かな星だから、多少目減りした所で問題は無いと思っている。
ベガ王子に対しての悪感情は湧くとは思うけどな。
「ベガ星優先だ。とにかく産業活性化に繋げて、田舎惑星から格上げしてやる」
「それはそうとして、殿下。鉱山なのですが」
ああ、そう言えば、呼ばれたのは鉱山問題もあったのだっけ?
ガンダルの言によれば、新規の鉱脈が幾つか発見されたそうである。ただ、発見された鉱脈の近くに古代遺跡があって、その扱いに苦慮しているとの話だった。
「古代遺跡か」
「役人の中には無視して開発を進めたいとの声が多数を占めますが…」
浪漫と産業を天秤にかけろとの話だな。
ベガ星は若い。こう言った遺跡の歴史的価値なんかより、金勘定の方が大切と考える者も多いが、いきなり破壊して開発するのは乱暴だろうと思う。
聞けば、遺跡発見の報告を握りつぶした奴が居て問題になったそうである。
とっとと開発してしまい、後で「ああ、そう言えばそんな報告があったみたいですね。現場には届いてませんでしたが、てへぺろ」する予定だったんだろうな。
覆水盆に返らず理論で。
「興味が出てきた。ぼくが視察してみよう」
「で、殿下」
ガンダルは制止するが、俺の興味は尽きない。
フリード星での体験で、古代文明に関してかなりの関心を持ってしまったからである。
古代と言っても、恐らく、現代のヤーバン星文明に匹敵するか、或いはそれ以上のテクノロジーを持ったオーパーツが出土する可能性もあると踏んだからである。
「テイル」
「はっ」
俺は侍女長を呼んだ。
「確か前に、君の兄の話が出たよね?」
「ああ、はい。私の双子の兄ですね」
そう、色々とゴタゴタがあって聞いただけで後回しにしてたんだけど、確か古代文明を研究しているとかの話だったよね。今、それを役立たせて貰おう。
が、テイルはそれを聞いて露骨に嫌な顔をした。
「ん、兄妹喧嘩でもしているのかい?」
「いえ、そうではないのですが……。私の個人的な事なので」
しかし「主の命令は絶対です。お命じになられるならば連れて来る事は可能です」と断言した。
いや、でもお前、心底嫌な顔をして居るぞ?
「但し、私はその場に居たくありません」
「お、どうして?」
「居たくないからです。顔を見るのも嫌です。これだけは譲れません」
テイルは「それが駄目ならば、この話はなかった事に」とも言う。
俺は驚きながらも、その条件を認めざる得なかった。
〈続く〉
次回、テイルのお兄さん出現。
名前は……自分がツイン・テールのかわいい…(以下、略)。