内政方面へ舵を切ります。
俺は補佐官を呼んだ。
こいつは本国から派遣されている奴でガンダルと言う。
そう、あの『グレンダイザー』でスカルムーン師団のトップだったあのガンダル司令だ。
しかし、今はただの小物に過ぎない。
王子とは言っても隠居同然の小僧に付けられているのだ。冷や飯食いの左遷組に近かろう。
「お呼びですか、王子」
「うん、政務を片付けようと思ってね」
その答えを聞いたガンダルの顔色が変わった。
いや、顔が割れてレディ・ガンダルが飛び出してきた位だからね。
「そ、それは……。政務は下々の者にお任せ下さり。殿下はご静養を……」
「ぼくが仕事をしてはおかしいかい?」
俺、いや、ぼくは笑いながら正論を述べた。
いやー、本来のベガの一人称は「ぼく」なんだよなぁ。「俺」って言いたいけど、突然、口調が変わったら不審がられるだろうから、これは追々直して行こう。
「いや……しかし」
領主としてのベガは単なる飾りだとでも思ってたんだろう。
うん、今まではね。
帝王学の一環として領地経営やら、軍事学やらも習っていたんだけど、この病弱な身体が災いしてどれも実践する機会が無かったからな。
しかし、生憎、今の俺は本気だぜ。
「それとも、ぼくに言えない隠し事でもあるのかな。ガンダル?」
「それはありません」
「い、いいえ。ここは我らにお任せを!」
俺の問いに関して、二つの返答が発せられる。
最初の発言はガンダル。そしてもう一方は、奴の別人格であるレディ・ガンダルだ。
「お主。今、何と?」
「な、何でも無い」
ガンダルが問うと、顔がぱかっと割れて小さな人形の様なレディガンダルが現れて、まるで漫才みたいな掛け合いをする。
『グレンダイザー』でマザーバーンが撃墜前に見られた懐かしい光景だ。
あれ以降、顔を整形しちゃってこの光景が見られなくなるんだよなぁ。それにしても、あの顔の中ってどうなってるんだろう。個人的に気になるね。
「調べていたら不正があったよ。ガンダル」
俺はコンソールを操作して、壁一面のスクリーンに発見した不正の証拠を映し出した。
「ベガトロン鉱山の利益が何者かに着服されている。これの首謀者は誰かな?」
巧妙だが利益が中抜きされていた。
産出した鉱石の量が表の数値と、実際に鉱山にあった記録を付き合わせると違っているのだ。そして輸出された貨物の数値は表の数値に比べると、明らかに多い。
莫大な利益を生み出すベガトロン鉱石だけに、その数量が僅かであろうと被害は膨大な額に当たる。そして、これを実質的に管理していたのは、ベガの代理である……。
「お主、まさか…」
「くっ、馬鹿王子だと思っていたら!」
ガンダルの身体が不自然に動く。
具体的に言えば、右半身が突然銃を抜いて、それを左半身が制しようとしているのだ。二重人格者である二人が、各々独立した行動を取ろうとしている。
「やめんかっ、王子に対して」
「今、ここで亡き者にしてしまえば…」
ああ、やっぱり首謀者はレディ・ガンダルの方か。
終盤『グレンダイザー』でも、こいつはベガ大王を裏切ったからな。
俺は撃たれない様に死角からガンダルに近寄ると、右手をねじ上げてビームガンを奪い取る。
ベガだって護身術程度なら心得がある。実際に使ったのはこれが初めてだけどね。
「ガンダルっ!」
「ははっ」
ガンダルの左手が捕まえていた右手を離して、顔へ伸びる。
「ぎゃああああっ」
「うぉぉぉぉぉっ」
二種類の悲鳴。
ガンダルは自らの手でレディ・ガンダルを掴み、その小さな身体を握り潰していた。
レディ・ガンダルは顔を閉じて逃げようとしていたが、間に合わなかったみたいである。
「良くやった。ガンダル。不忠者を始末して感謝するぞ」
「はっ、ははぁー。勿体なき……お……言葉…」
痛みを堪えて平伏するガンダル。
レディも自分の一部だったから、当然、ダメージを負っており、俺は医師を呼んで彼を医務室へと去らせた。
「さて、予定通り邪魔者は始末した……。味方を集めなくてはね」
未来を確かな物にすべく、ヤーバンでは無く、ベガ星連合軍を造り上げるのだ。
まずは自軍勢力を盤石にする為に、ベガ星での勢力固めが必要になる。
「人材確保と財政確保。そして軍事力。やる事が多すぎるな……」
〈続く〉
ガンダル司令。
まだ、おっさんじゃない青年ガンダルなんだろうね。
原作では、彼は最後までベガ大王に忠実でした。で、やっぱり反乱を起こしたレディ・ガンダルを自ら抹殺してます。
さて、『膿は早めに絞り出した方が良い』との考えで、ベガはレディを斬り捨てています。
PS、
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