ベガ大王ですが、何か?   作:ないしのかみ

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大王四話目。
内政方面へ舵を切ります。


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 俺は補佐官を呼んだ。

 こいつは本国から派遣されている奴でガンダルと言う。

 そう、あの『グレンダイザー』でスカルムーン師団のトップだったあのガンダル司令だ。

 しかし、今はただの小物に過ぎない。

 王子とは言っても隠居同然の小僧に付けられているのだ。冷や飯食いの左遷組に近かろう。

 

「お呼びですか、王子」

「うん、政務を片付けようと思ってね」

 

 その答えを聞いたガンダルの顔色が変わった。

 いや、顔が割れてレディ・ガンダルが飛び出してきた位だからね。

 

「そ、それは……。政務は下々の者にお任せ下さり。殿下はご静養を……」

「ぼくが仕事をしてはおかしいかい?」

 

 俺、いや、ぼくは笑いながら正論を述べた。

 いやー、本来のベガの一人称は「ぼく」なんだよなぁ。「俺」って言いたいけど、突然、口調が変わったら不審がられるだろうから、これは追々直して行こう。

 

「いや……しかし」

 

 領主としてのベガは単なる飾りだとでも思ってたんだろう。

 うん、今まではね。

 帝王学の一環として領地経営やら、軍事学やらも習っていたんだけど、この病弱な身体が災いしてどれも実践する機会が無かったからな。

 しかし、生憎、今の俺は本気だぜ。

 

「それとも、ぼくに言えない隠し事でもあるのかな。ガンダル?」

「それはありません」

「い、いいえ。ここは我らにお任せを!」

 

 俺の問いに関して、二つの返答が発せられる。

 最初の発言はガンダル。そしてもう一方は、奴の別人格であるレディ・ガンダルだ。

 

「お主。今、何と?」

「な、何でも無い」 

 

 ガンダルが問うと、顔がぱかっと割れて小さな人形の様なレディガンダルが現れて、まるで漫才みたいな掛け合いをする。

 『グレンダイザー』でマザーバーンが撃墜前に見られた懐かしい光景だ。

 あれ以降、顔を整形しちゃってこの光景が見られなくなるんだよなぁ。それにしても、あの顔の中ってどうなってるんだろう。個人的に気になるね。

 

「調べていたら不正があったよ。ガンダル」

 

 俺はコンソールを操作して、壁一面のスクリーンに発見した不正の証拠を映し出した。

 

「ベガトロン鉱山の利益が何者かに着服されている。これの首謀者は誰かな?」

 

 巧妙だが利益が中抜きされていた。

 産出した鉱石の量が表の数値と、実際に鉱山にあった記録を付き合わせると違っているのだ。そして輸出された貨物の数値は表の数値に比べると、明らかに多い。

 莫大な利益を生み出すベガトロン鉱石だけに、その数量が僅かであろうと被害は膨大な額に当たる。そして、これを実質的に管理していたのは、ベガの代理である……。

 

「お主、まさか…」

「くっ、馬鹿王子だと思っていたら!」

 

 ガンダルの身体が不自然に動く。

 具体的に言えば、右半身が突然銃を抜いて、それを左半身が制しようとしているのだ。二重人格者である二人が、各々独立した行動を取ろうとしている。

 

「やめんかっ、王子に対して」

「今、ここで亡き者にしてしまえば…」

 

 ああ、やっぱり首謀者はレディ・ガンダルの方か。

 終盤『グレンダイザー』でも、こいつはベガ大王を裏切ったからな。

 俺は撃たれない様に死角からガンダルに近寄ると、右手をねじ上げてビームガンを奪い取る。

 ベガだって護身術程度なら心得がある。実際に使ったのはこれが初めてだけどね。

 

「ガンダルっ!」

「ははっ」

 

 ガンダルの左手が捕まえていた右手を離して、顔へ伸びる。

 

「ぎゃああああっ」

「うぉぉぉぉぉっ」

 

 二種類の悲鳴。

 ガンダルは自らの手でレディ・ガンダルを掴み、その小さな身体を握り潰していた。

 レディ・ガンダルは顔を閉じて逃げようとしていたが、間に合わなかったみたいである。

 

「良くやった。ガンダル。不忠者を始末して感謝するぞ」

「はっ、ははぁー。勿体なき……お……言葉…」

 

 痛みを堪えて平伏するガンダル。

 レディも自分の一部だったから、当然、ダメージを負っており、俺は医師を呼んで彼を医務室へと去らせた。

 

「さて、予定通り邪魔者は始末した……。味方を集めなくてはね」

 

 未来を確かな物にすべく、ヤーバンでは無く、ベガ星連合軍を造り上げるのだ。

 まずは自軍勢力を盤石にする為に、ベガ星での勢力固めが必要になる。

 

「人材確保と財政確保。そして軍事力。やる事が多すぎるな……」

 

 

〈続く〉




ガンダル司令。
まだ、おっさんじゃない青年ガンダルなんだろうね。
原作では、彼は最後までベガ大王に忠実でした。で、やっぱり反乱を起こしたレディ・ガンダルを自ら抹殺してます。

さて、『膿は早めに絞り出した方が良い』との考えで、ベガはレディを斬り捨てています。

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