ベガ大王ですが、何か?   作:ないしのかみ

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41のタイトルは「うぬ」だった(笑)。
いや、単に変換をかなキーにしたままだっただけなんだけど。


41

 当たり前だが顔立ちはテイルっぽい。

 と言うか、彼女の髪型をツインテールにした感じだけど、それだけでずいぶん印象って変わるんだな。

 大きめの灰色の瞳が唯一の違いか?

 

 奴の服装は白いミニのワンピース。

 だが、この世界の常識ではそれだけじゃ女装に分類されないんだよね。

 ややこしいが古代文明の系統を衣装も引いてるから、男がキトンとかトーガみたいな、スカート系のひらひら穿いても別に変じゃ無いんだよ。

 まぁ、リボンとかティアラとか、俺くらい可愛い系のコーデすりゃ、話は別だけどな。

 ちなみに今日の俺の衣装は、赤紫のヘソ出しのレオタードに白い巻きスカートを付けてモスリンの薄手の上着を羽織ったスタイルだ。

 ティアラはデフォ。水色の髪は三つ編みにして左右に垂らしている。

 外での活動だから足元はブーツ。一応、喉の保護用に浄化マスクも用意したけど、これは此処の環境では必要ないかと機内へ置いてきた。 

 

「成るほど、悪かった」

 

 此処は素直に非礼を詫びておくか。

 呼び出したのはこっちだしな。

 

「分かれば宜しい」

 

 ツインの奴はうんうんと頷く。

 あ、テイルが言っていたっけ「兄は傍若無人で態度が悪いですよ」って、その通りで相手が王子だろうが何だろうが、関係なさそうな態度のでかさだ。

 ハツメは不満げだったけど、ここでトラブルを拡大しても仕方があるまい。

 

「じゃ、案内しようか。もっと恐い奴の相手はしたくない」

 

 ツインの奴は俺の先頭に立った。ん、もっと恐い奴?

 こちらに構わずにずんずん進んで行く。

 

「ヨナメと比較していたけど、知り合いなのか?」

 

 ツインの背中に向かって声を掛ける。

 

「いや、テイルから聞いてるだけだ。で、腕を試してみた」

「随分、お前さんも腕が立ちそうだな」

 

 あの腕は素人じゃ無い。そいつは言える。

 

「俺はテイルの兄貴だぜ。妹くらいの腕はあるさね」

「兄だって、弟や妹よりも強いとは限らないぞ」

 

 と俺。ああ、弟の嫌な顔が目に浮かんで来た。

 あれは確実に俺よりも白兵戦では強い。肉体的に脆弱な俺では敵わない。

 

「ブーチン王子か。確かにな」

「だろう」

「そんなベガ王子が、ろくな護衛も付けずにこんな辺境に赴いたのはミスだぞ」

 

 くるりと振り向くツイン。

 俺としてはお忍びだし、大袈裟にしたくなくて大名行列を断ったのだけど、まさか…。

 

「恐い奴が有能で助かったな」

 

 ツインの奴がその言葉を発したと同時に、ベガトロンビーム砲の発砲音が鳴り響く。

 続いて爆発音。

 音のした方向に慌てて視線を向けると、一機の円盤が炎の尾を引いて墜落して行く所であった。

 戦闘コマンド。魚型をしたヤーバン軍の標準戦闘機だ。

 何処の部隊にもある何の変哲も無い機体であるが、こいつには所属部隊を示すマーキングが一切無いし、部隊毎に指定された塗装も見た事の無いパターンである。

 地上に降りた俺のミニフォーが、回転速射砲を四方にばんばん連射しながら応戦している。

 周りには他に三機ほどの戦闘コマンドが飛んでいて、射撃を躱しながらもミサイルを撃ってくる。しかし、何故か、こちらは石の狸みたいに地上から動かない。

 

「何で飛ばないんだ!」

「さてね。工作でもされていたのか、おっと、危ねえ!」

 

 敵の発射した流れ弾が一発こちらへ飛んでくると同時に、ツインの奴が俺に体当たりして地面へと伏せさせる。

 どーん、と至近弾。ぱらぱらと土塊が振ってきて、俺達は埃まみれになってしまう。

 ああ、くそっ、折角、外向けの可愛い格好してきたのに!

 

「殿下!」

 

 ハツメの声に顔を上げる。

 ツインは俺に先立って立ち上がると、「畜生。遺跡が痛むじゃねーか!」と怒気を露わにした。

 

「ハツメ、無事だったか」

「此処は危険です。安全な所へ」

 

 と言われても、安全な所ってあるのか?

 空から見りゃ、地上を這いつくばっている人間なんか射的の的だぞ。

 まだ俺達は丘の影に潜んでいるからマシだけど、白い花がいっぱいの牧歌的な野原に出たら、たちまち蜂の巣になっちまいそうだ。

 まだミニフォーが奮戦しており、地上にいてもまんべんなく撃てる背中の砲塔のお陰で応戦可能なのは助かっている。『グレンダイザー』本編みたいに前方固定式の武装しか無かったら、為す術もなくやられていたろう。

 だが、いずれにせよ、飛び立てないのならやられるのも時間の問題だな。

 

「こっちだ。あいつらがいる限り、地上に居るのは自殺行為だぜ」

 

 ツインが言うが早いが、俺の手を引っ張って走り出す。

 その先には試掘後から出土した、洞窟か何かだと思われる大きな穴が口を開いていた。

 

「走れるか?」

「なんとかね。げほっ、くそっ、マスク持ってくりゃ良かった」

 

 さっきから土埃が酷い。息を止めているのも限界で、喉がおかしくなりつつある。

 俺は自分の判断の誤りに後悔したが、先に立たずとの諺通り、今はハンカチを当てて、何とか急場を凌ぐしか無い。

 洞窟だか、隧道に飛び込むと辺りは一変する。石造りの遺跡なんだけど、様子が変なんだよ。

 

「こいつは……」

 

 咳を我慢しながら俺は目を見開く。

 入口から見れば何の変哲も無かったが、奥の方より青白い光がちらちらと輝いているんだ。

 

 

〈続く〉




刺客登場。
ベガ王子暗殺計画。
さて、ツイン・テールは海老の味…もとい、敵か味方か?

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