と言う伴奏と共に、今回、戦闘シーンばっかりです。うぉぉぉぉーっ!
遺跡の謎は次回にお預けです。
そう、入口付近は普通の石組みっぽいのだけど、奥は何かの光源で青白いんだ。
相変わらず、外は爆音やら何やらで煩いんだけど、そんな騒音すら耳に入らない程、俺はその光景に見入っていた。
「奥は生きているんだよ」
ツインが俺の手を離して呟いた。
「生きている?」
「古代文明の残滓だよ。もっとも……」
奴は天井を向いた。振動でぱらぱらと細かい破片が落ちてくる。
「外がこんな状態じゃ、これが今のまま保てるのかは分からないけどな」
ハツメが緊張しつつ、俺の隣へ出る。
護衛の役を果たそうとしているのだろうが、にしても何で俺の前では無く、横なんだ?
「お前も気が付いたか、地上部隊を投入してきたぞ」
「はい。でも、貴方も私の注意対象ですよ」
ツインとハツメの会話の直後、ビームが洞窟内に飛び込んで来た。
俺は伏せる。ハツメは槍を構え(いつの間にか、回収してきた様だ)、腰を低くして銃撃をやり過ごしている。
ちなみにツインの奴はとっとと奥へ逃げた。ある意味正解だな。
「装甲歩兵か」
灰色の重厚なアーマースーツ。宇宙服の機能とその重量を支える為にアクチュレーターのパワーアシストも受けている、を着込んだ装甲歩兵が数人、外から此処へ肉薄しているのが見えた。
ハツメが応戦しているが、耐レーザー処理をしてあるので槍に仕込まれたエネルギー火器では有効なダメージは与えられない。
あの手合いはどちらかと言えば、物理系の白兵戦武器や実体弾の方が有効なんだけど、機関砲弾みたいな大口径弾とか、ゴリラ並みの大男でなきゃ振り回せない様な、重さ100kg超の重量級の武器でもなけりゃ有効なダメージは与えられない。
「あれはヤーバン軍の正規装備だな」
防衛軍では余りにも威力過剰との理由で配備数は少ないが、外征軍では移乗戦闘班や惑星上陸部隊他に配備されている。
個人用の火器なんかは軽く弾く重装甲と、動きこそ鈍いが、スラスターによる空中機動をこなす機動性も持っており、高価で数が限られる機動歩兵(パワードスーツ)の劣化版だが、個人用のワンマンタンクみたいな物だ。
状況次第では戦車とも渡り合える代物である。
こんな物を派遣出来る敵って言えば『弟だな』と、俺は脳裏にチラリと奴の狂気に満ちた顔を思い浮かべる。
「お下がり下さい。殿下!」
焦り混じりのハツメの甲高い声。
それをしたいのは山々だが、敵の射撃で今は釘付けだ。
ツインみたいにとっとと撤退すべきだったと思うが、げほげほ咳をしている状態じゃ、ろくに動く事も出来ない。
さて、どうするか?
「この槍でも白兵戦になれば」
「まぁ待て、駄目元で試してみたい事がある」
ビーム穂槍でも突けば効くだろうけど、それでも一人と相打ちがせいぜいだ。
俺はハツメを制止すると冷静になって、装甲歩兵を見詰める。
距離は50mあるかないかって所だな。数は…三人か。
俺は息を整える。咳は今の所、小康状態だ。
「ひとつ」
アーマースーツを着た敵が突然コケた。
敵の膝関節部に念動を集中させると、動力を伝えるケーブルを幾本か引きちぎったのだ。
それだけでパワーアシストを失い、自重を支えられなくなった装甲歩兵が転ぶ。
伝説の〝獅子帝〟やら〝武姫〟なら、それこそ装甲服を握り飯みたいに丸めて潰してしまうんだろうけど、俺の持つサイコキネシスなんて、せいぜいこれが限度だ。
「ふたつ」
もがいている装甲歩兵の次に、俺はその後ろの奴を狙ってコケさせる。
装甲服はどっかの公国製MSみたいに、動力パイプが外に露出しているから狙い易くて助かる。
これが内蔵式で透視(クリアボヤンス)とか併用するんだったら危ない所だった。
今の俺に、同時にESPを発動させる様な芸当はまだ無理だからね。
「やりましたね。あとひとつです、殿下。殿下っ?」
「くそぉ……。打ち止めだ」
済まん、ハツメ。こっちの力は、もうエンプティだ。
気を失いそうになる。俺はエスパーであってもそれ程のキャパは無いんだよ。
だが残るは一体だ。これならハツメの手でも何とかなると思った瞬間、
「あっ」
「うわっ、それは反則だろう!」
何と、倒した筈の装甲服が復帰しようとしていた。
野郎、歩行を諦めてスラスターを噴かすとホバーに切り替えやがったんだよ。
稼働時間は無論短い。だけど、俺とハツメを始末するだけなら大した時間は掛からないだろう。
「必殺、戦刃旋風斬りィィッ! うぉぉぉーっ」
突然、そんな怒声が響いた途端、何か、馬鹿でかい斧が飛んで来て装甲歩兵の一人、まだ歩行が可能な奴が真っ二つになった。
斧はそいつを真っ二つにしてもまだ弧を描いて飛んでやがる。
装甲歩兵の反応は遅れた。
そりゃそうだ。俺だってこの目で見てなきゃ、悪夢かなんかにしか見えなかったしな。
その間に黄色いマントを翻した大男が、凄い速度で現れて手に持った大斧を振りかぶる。
「怪力岩石砕きぃぃぃぃっ、うぉぉぉーっ」
咄嗟に狙われた装甲歩兵はホバーを噴かして味方を盾にした。が、そんな事はお構いなしに、黄色い大男は両手持ちの大斧を振り下ろすと、装甲服を二体纏めて両断してしまった。
「嘘、ですよね……?」
信じられない様なハツメの呆けた様な声に、「と、ぼくも思いたいな」と答えるのがやっとだ。
おいおい、幾ら装甲服がエネルギー兵器に比べて、実体弾・物理系に弱いって言ったってそりゃ非常識すぎないか?
腐っても装甲は特殊合金製だぞ。投げられる様な斧であの威力が出るのかよ。
しかも真っ二つだよ。ひびが入るとかじゃなく、胴体が上下に泣き別れだ。あり得ないだろ。
「兄貴、私の分もやっちゃったの?」
「あー、すまん」
二人を真っ二つにした黄色いタイツの大男が、遅れて現れた青い衣装の女(?)に謝った。
女だと思ったのは声質が高かっただけで、もしかしたら男の娘かも知れない。
何か、俺の周辺って男の娘率が多いからな。ついでに胸もなさそうだし、第一、こいつら変な飾りの付いたマスクを被ってるから素顔が分からないんだよ。
「戦闘コマンドの方はどうなった?」
今度は真っ赤なタイツを穿いた男が現れて問う。
手には最初に敵を倒した斧が二丁握られているが、やっぱり仮面で顔を覆ってるから正体は分からない。
三人共、タイツ姿で背中にマントを付けて、手には揃えたみたいに青い斧を持っている。
ん? 斧だと。
あ、今、唐突にダイナミック系のアンテナに何か引っかかったぞ。
まさか、こいつらは真っ赤なタイツで地を疾り、届け雄叫び、地平を越える、勇者な奴らか?
「撃墜したけど、ミニフォーの方は駄目ね」
「仕方ない。今は王子達が無事な事だけでも良しとしよう」
そこまでだった。
無理をしていた俺の身体に限界が来て、奴らの会話を聞いている内に強烈な睡魔が襲って来たからだ。
会話から判断して敵ではなさそうだ。だが、何者だ?
疑問は残るが限界であった。
テロル闘人とかが現れなかった事を感謝しつつ、俺は意識を手放したんだ。
〈続く〉
と言う事で、ダイナミック系で初の特撮系登場です。
え、まさか奴らが登場するとは思いませんでしたか?
実は『ベガ大王』を考えた当初から出演予定だったんですよ。やっと出せた。
でも、秘密の伏線を含め、ネタバレになるので、これ以上は語りません(笑)。