ベガ大王ですが、何か?   作:ないしのかみ

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光量子エンジン。
本作では古代文明のオーパーツ、つまり現代(ベガ達が生きている時代)では再現不可能なテクノロジーであると解釈しています。

そうそうガッタイガーやグレンダイザーみたい主役メカが、ヤーバン軍でほいほい量産されたら設定上、戦力バランスが崩れちゃうからね。


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 次に気が付いた時は遺跡の中だった。

 

「あ、殿下」

 

 ハツメが心配そうに俺の顔を覗き込んでいる。

 

「お、気が付いたのか」

「お前は何をやっている?」

 

 その声の方を見るとツインの奴があぐらを掻いて座っており、しかも固形燃料ストーブで何かを料理してやがる。メスキットだかクッカーだかは知らないが、小さなフライパンみたいな調理用具を使って、鍋を振りながらころころとソーセージを転がしていた。

 

「お姫様だから解らないのか。これは飯を作ってるんだ」

「んなモン、見りゃ解る。それよりもあの怪人達は何処へ消えたんだ?」

 

 怪人とは斧を持った三人組の事だ。

 今、周囲を見渡す限り、奴らの姿は無い。

 

「バトルホークと名乗っていましたけど、姿を消してしまいました」

「え?」

「我々の無事を確認するといつの間にか」

 

 代わりに答えたのはハツメ。問いかけても「今の所は味方だ」だの「今に解るわよ」とだけ述べて、名乗りだけ挙げると風の様に行方を眩ませてしまったらしい。

 

「ミニフォーの方は撃破されてしまいました。不徳の致す所です」

「アラーノ中尉。敵の円盤は撃退したのか?」

 

 報告に現れたのはアラーノ中尉。ミニフォーのパイロットだ。

 地上に降りた機体に留まって応射してくれてたんだろうけど、彼が無事で良かったよ。

 

「撃墜は二機。三機は撃破しましたが自爆してしまいました」

 

 敢えて急所を外して不時着に追い込んだのだが、証拠を残さない為だろうと彼は語る。

 まぁ、後で技術部が調べれば何等かの手かがりは掴めるかもしれない。

 中尉の語る所によると、やはり俺達の機体には細工が施されており、操縦装置がロックされて飛び立てなかったそうだ。幸い、武装系は使えたので応戦したのだが、撃たれて機体は廃品になってしまった。

 

「仕方ない。救援は呼んだのかい?」

「はっ、連絡は付いております。一時間もしない内に到着予定です」

 

 取りあえず、孤立無援状態からは解放される訳か。

 俺はすたすたとツインの方へ近づいた。

 

「で、ぼくが眠ってる間に何か解った事は?」

「大して無いが、ここ程度かな?」

 

 ソーセージをひょいと掴んでぱくりと喰らって立ち上がり、青白く光る奥の方へと歩を進める。

 俺とハツメがそれに続くが、警戒しているのか中尉は入口に残っている。

 

「こいつは古代文明の生きている部分だ」

 

 発光が強くなる。奥は横穴に小さな部屋、まるでピラミッドの玄室の様な作りになっており、その壁一面に古代文字が描かれ、それらが強く輝いていたのである。

 部屋の中央部には、石棺みたいな形で光り輝く巨大なクリスタル状の八面体が寝た状態で安置されている。

 どっかの潜水艦アニメに登場したブルーウォーターを思い出させる形だ。

 表面には微細な古代文字がびっしりと浮かんでいて、輝きはその文字から放たれているらしい。

 

「青く発光しているのは謎のエネルギー。まぁ、親玉はあの宝石だな」

「謎、なのか?」

 

 ツインは「ああ」と答えて、「少なくとも今の科学じゃ解明は不可能だろうね」と続ける。

 話によるとあのクリスタルも含めて、どこにもエネルギー源が無いそうなのだ。

 じゃあ「何故、青く光ってる?」と問われても、解明不能なのだそうだ。

 

「古代の叡智に俺達が届いてないって話だよ。

 ……まぁ、一部の者達はそいつを利用してるらしいけどな」

「一部?」

「フリード星人が最近、発掘した新型エンジンはこいつと同じ物らしいぞ」

 

 光量子エンジンか!

 カッタイガー、後にグレンダイザーにも搭載される、外部から勝手にエネルギーを取り込んで半永久的に稼働する動力源だ。機械的な装置じゃ無くて、こんなオーパーツみたいな物だったのか。

 成る程、フリード星人がガッタイガーを量産出来なかった訳だよ。

 

「それとさっきの恐い奴ら。俺は王子の護衛かと思ってたんだが、違ったみたいだな」

「お前が言ってた恐い奴らとは、あいつらを指してたのか?」

 

 ツインが意外そうな顔をした。

 俺のオタ知識が正しければ、あの三人組は『バトルホーク』と言う特撮に登場するヒーローだ。

 シャスタ族なるインディアン(近頃はネイティブ・アメリカンと言い換えねばならないが)の部族から貰った、伝説の斧でそれぞれバトルホーク、ビッグホーク、レディホークと言う名の戦士に変身する。

 正義の為じゃ無くて、敵組織〝兇鬼の掟〟に誅殺された祖父の復讐の為に戦うと言うのが、ヒーローとしてかなり微妙な話だった。

 この兇鬼の掟が繰り出す怪人、テロル闘人との戦いがメインだけど、50話の予定が26話に短縮されて打ち切りになったダイナミック系でも、かなりのマイナー作品だ。

 

『まさか、この世界にあいつらが現れるとは…』

 

 いや、『マジンガーZ』や百歩譲って『ゲッターロボ』とかは登場しそうだなとは思ってたんだよ。後で思い出した『グロイザーX』から予想して、いずれにせよ巨大ロボが出る作品だからね。

 でもジャンルが全く違う、『バトルホーク』は全くの予想外だった。

 

「ああ、だから前座としてハツメを相手にしてみたんだ」

「あたしが前座!?」

 

 ハツメがショックを受けるが、ツインに「ならお前、あいつら相手に戦えるか?」と問われると肩を落としてしまう。

 うん、クイーンホークと比べてもパワーが段違いだよなぁ。ヨナメくらいのテクニシャンだったら技で何とかなりそうだけど。

 

「どんな物だか様子見にな。殺気を感じて止めたがね」

「殺気か」

「俺はまだ死にたくない。だから、あいつらが王子の部下じゃ無いと知って驚いた」

 

 味方らしいが正体不明。

 さて、俺は再び出会ったら、バトルホーク達とどう付き合うべきなのだろうか?

 

 

〈続く〉




ちなみに円盤獣なんかの円盤類は、ベガトロン反応炉を動力とする核融合エンジンで作動していると設定してます。

ちなみに車や、自家用機なんかは高効率のエネルギーパック(いわゆるバッテリー)を利用しています。だから例えワープエンジンを積んでも、出力不足でワープ出来ません。

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