ベガ大王ですが、何か?   作:ないしのかみ

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遺跡探索中です。


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「それと、気が付いたか?」

 

 ツインがにっと笑った。

 その笑顔を見て、何故、俺がこいつに対して無意識に悪感情を持っているのかの理由が分かった気がした。

 ツイン・テール。お前、俺に似過ぎてるんだよ。

 俺が敢えて一人称が『ぼく』にしているのを無視して、自分丸出しで『俺』と堂々と言ってやがるし、格好は完璧美少女なのに、あぐらを掻いてソーセージ喰らうとか、ずぼらな男そのままの行動を行っている。

 

 正直、個人的な反発に過ぎぬ僻みなんだろうけど、偽りの自分を表にしなきゃならない俺にとって、素の俺そのままの奴は、自分の鏡像を見ているみたいで羨ましいんだ。

 女々しいなとは思う。でも、あいつみたい行動がしたいとの衝動が、心の底から湧き上がってくるのは確かなんだ。

 時々、風呂上がりにパンツ一丁で枝豆摘まみながら生ビール飲みたいとか妄想したりするんだ。ベガ王子としての品性疑われるから、妄想止まりでやれねえけどな!

 

「何をだ」

「バトルホーク共の斧だよ。俺は直接見てないから、何とも言えないんだけど…」

 

 ツインはそう言いながら、青白く光る巨大なクリスタルの表面を撫でる。

 

「奴らの斧。恐らく、このクリスタルと同じ材質だよ」

「ですね。私も同じ意見です。殿下」

 

 その意見に同調するのはハツメ。

 脇に携えている小物入れから、彼女は何かを取り出した。

 

「それはヨツメの……」

「はい、形見のサークレットです」

 

 フリード星で俺を庇い、命を落としたシャーマンの遺品である。

 水色をした材質で出来ている。見た目は金属かと思ったがそうではなく、触ると仄かな暖かみを持った不思議な感触のある謎の物質だ。

 そう言えば原作じゃ、あんな色じゃなかった筈だが、バトルホーク達の斧(ゴッドホークと言うらしいね)も青かった。いや、どちらかと言えば水色かな。

 

「多分、奴らの斧も、その輪っかもこいつと同じ物質さ」

 

 更に「これは現代科学では造れない代物なんだよ」とツインは述べた。

 構成されている分子構造が謎なのだそうだ。

 

「調べたのか?」

「ここの遺跡じゃ無くて、別の惑星での出土品でな。

 だが、一定の組成じゃ無い、常に変化している物資なんてこの世に存在するのかよ。

 俺が異端学者じゃ無ければ、とっくのとうに発狂してるぞ」

 

 やれやれという感じで、ツインテールの頭を振ってお手上げポーズをするツイン。

 そして「だからシャーマン族も、こいつを利用している者達の一部に入るな」と告げた。

 

「シャーマン族はこれをどうやって入手してるんだ?」

 

 俺はハツメに質問した。

 彼女は「呪術です。詳しい事は判りませんが」と済まなそうに答える。

 

「正確には、こいつに刻まれた文字が何等かの働きをしているんだろうと思う。

 しかし、俺の研究では、まだそれが何なのか判らんし、土台になってる材質も不明だ」

 

 ツインは「悔しいがな」と呟いて、青白く光るクリスタルな巨石に背を向ける。

 確か古代文字は未だに解明されていない。考古学者に言わせると文法や文脈にまるで統一感が無く、滅茶苦茶で関連付けが出来ないのだそうだ。

 

「ある学説によると古代文明とは一つでは無く、幾つかの系統があって渾然一体としているらしいのだが、俺達には、どれがどれを指しているのかが見分けが付かない」

「ほう」

「しかし、俺はある程度分類してるがね」

 

 彼が語る所によると、オーバーテクノロジーでも物質文明寄りの方はまだ理解出来るらしい。

 原理が不明であるが、ある程度俺達の常識に沿って組み立てられているからだという。

 

「テイルから聞いたが、王子はフリード星の隠された歴史に触れたんだろう?」

「ああ、ぼくは闇の歴史、黒歴史と言ってるが」

 

 富野監督、済まないが単語を借りるぞ。

 

「面白い表現だな。俺も使わせて貰おう。ま、その中で言うならアトランティスだ」

 

 鬼がもたらしてくれたテクノロジー。

 ああ、確かに。クローンとかナノマシンとか、高度な事は高度なんだけど、原理的には俺にも理解出来る物だな。

 

「に対してムーの方は不明だ。はっきり言うと次元が違いすぎて、さっぱり理解が出来ない」

「そうなのか。ムーの方が文化的には劣っている雰囲気だけど」

「馬鹿言え」

 

 ツインが俺を罵倒すると白いミニスカワンピのまま、どかっと腰を下ろす。

 

「王子。古代には巨石文明があったって信じるか?」

 

 唐突に話を振るツイン。

 ええと、ストーンサークルとかドルメンとか、ピラミッドみたいな建造物を作ったあれかな?

 南太平洋にあったモアイとか、巨大な石貨のあるパラオだかヤップ島だかの島々。あの辺りしか思い浮かばないけど。  

 

「嘘みたいな話だけど、古代には石に念を込めて動かしたって記録があったりする」

「まさか……」

「フリード星の伝承にあった魔神。アレも石だったろ?」

 

 確かにそう言われれば、そうだ。

 ゴッドマジンガーだと思われる巨像は石であったと聞いている。

 だが、ツイン・テールよ。お前、そこまでの情報は既知なのか?

 俺のそれは姉上が必死になって調べた結果だぞ。それに関してフリード星の黒歴史とでも言える機密の壁にぶち当たったんだ。

 異端学者と卑下して言ってたけど、お前、実は凄い奴じゃないのかよ?

 

「古代人は何等かの方法で、石に力を与える技術を有していたのかい」

 

 しかし、普通に考えて単なる石が動力も無しに勝手に動くか?

 

「ああ、多分。そこで問題になるのが、この青白い物質だ」

 

 こん、と座ったまま、彼はクリスタルの表面を軽く叩いた。

 途端に「わぁぁぁぁん」と澄んだ音叉みたいな金属質の音が反響する。

 

「多分、これはムー系統の技術だ。シャーマン族が言う所の呪術、魔法文明とかは俗的すぎるから言いたくないんだけど、それだろうな」

 

 魔法文明とか言う所で、奴がちょっと顔を赤らめてしまうのが面白いぞ。

 しかし、それじゃあ、この遺跡はムーの連中が遺した物なのか?

 それを問うと、ツインは首を振って否定した。

 

「アトランティス系の遺物もある。案内しよう」

 

 彼は立ち上がると裾をはたいて歩き出した。

 

 

〈続く〉




巨石文明とは『蓬莱学園』に繋がる崑崙の…。
まぁ、本作に出るこれの元ネタは応石です。直接の関係はないけどね。

宣伝。拙作『蓬莱学園の夜桜!』も宜しく(笑)。

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