この玄室から一旦離れ、更に奥へと続く廊下を下る。
通路はかなり大きい。トレーラーみたいな大型の車も入り込めるスケールである。
「この施設、元々の目的は何だったんだろう?」
俺の疑問にツインは「倉庫。それも武器庫か何かだ」と答える。
人の生活に欠かせぬ施設。居住区みたいな物が殆ど存在しないからなのだそうだ。
だから人が常駐する様な恒久的な基地ではなく、本当に資材置き場みたいな補助的な施設なんだろうと語る。
「人が必要な時は外にバラックか何かを建てるか、乗り物の中に滞在したんだろうな。
まぁ、それでも必要だと思われるトイレは見付けたぞ。見るか?」
「遠慮しておこう」
横に開いた小部屋を指し示すが、俺は断った。
奴によると、石造りでスクワット式の便器が並んでいるんだそうだ。
しかし、古代人ってのは何で石に拘るんだろうか、陶器なり金属で部屋や便器を作れば良いのにと思うのは、俺が現代人故だろうか?
「古代文明で面白いのは、テクノロジーレベルの著しい差がある事だな」
「差?」
「はっきり言って、原始的な物と超科学が混在してる。見ろ」
奴は持っているランタンを掲げて、近くにあった燭台を照らす。
一万年前の物だから、無論朽ちているが、石造りだけあって原形は留めており、油と灯心を補充すれば、充分再使用に耐えるんじゃないかと思われる代物だ。
「まるっきり原始的な造りだ。電気やそれに相当する光源がある筈なのにな」
それらに分厚く積もる煤の跡が残っている所から、これが日常的に使用されていた物であるというのが判る。つまり単なる飾りではなく、炎を灯す実用品であった訳だ。
「さっきのトイレもそうだ。原始的に見えてハイテクだよ。おっと到着だ」
前方に石造りの大扉が見えた。
ここへ来る間にも横に幾つもの部屋があったのだが、彼はそれを素通りした。曰く「空の部屋だ。後で調べりゃ、何か分かるかも知れないが生きていない」そうだから、である。
成る程、この扉も弱々しいが、例の発光現象を伴っている。つまり〝生きて〟いるんだな。
何やら文字が表面に刻まれているが、前の玄室と違って光範囲が狭い様だ。
「この先に何か武器が安置されているらしい」
「中を見たのか?」
「脇に穴が開いてるから、そこから覗いただけだ」
顎でしゃくった先を見ると、成る程、壁の一部が崩れている。
掌くらいの穴だ。頭は突っ込めないので、覗く事しか出来ない。
ツインは「扉を開ける機構があるんだろうが、この部分はぶっ壊れている」と面白くもなさそうに語った。
何でも先程の戦闘の余波か、発掘工事の影響だかは知らないが、機能不全に陥っているらしい。
「全体的に機能が損なわれているんだ」
「確かに彫られてる文字の大半は輝いてないな」
本来なら玄室の文字群と同じ様に、全体がまばゆく発光している筈の文字達の大半は沈黙している。
俺は指し示された方の崩れた壁に近付き、懐中電灯を差し込んで中を覗く。
「砲台かな?」
照らされた光の中、光線砲の類いかそれとも別の機械かは判別しずらいが、単裝砲架に載せられた大砲みたいな奴が鎮座している。
但し、原型は残っているが、それはここから見ても朽ちていた。
「多分、アトランティスの武器だろう。概念が俺達のそれと似すぎている」
「アトランティスならナノマシンで修復がされるはずだけど……」
俺はフリーデンの地下で見た光景を思い出しつつ、疑問を述べる。
だが、ツインは「全ての施設にあれが備わってる訳じゃ有るまいし、あったとしても寿命が尽きている可能性もある」と否定した。
有機体を取り込んで自己増殖する物であるから、もし、それを食い尽くしてしまった場合、補給が続かなくて壊死するのだと言う。
「ヤーバン文明では恒星間航行が当たり前だと言って、単なる田舎の倉庫に核融合炉とワープエンジンを備え付けて、ワープ可能にしている奴はおるまい?」
「まぁ、それなら倉庫じゃなく、宇宙輸送船作った方が早そうですね」
ハツメも同意した。
俺は壁の穴から離れ、今後の事を考える。
この遺跡は貴重だ。試掘を中止して本格的な調査に当たらせたいと思うが、予算をどうするか?
軍を動員するか、いや、軍は考古学が専門じゃないから不適当かも知れない。が、遺跡の貴重さを考えれば、軍による警備は必要になってくるだろう。
先の暗殺未遂に関しても、まだ不明な点が多すぎるしな……。
大体、ここへ視察に行くとの行動を知り得る者が少ないのに、何で刺客が待ち構えていた?
『軍の内部も徹底的に洗うべきか…』
ベガ・ルビー両星の移管問題で行政や、軍組織も再編でゴタゴタの最中だ。
元々のべガ軍の内部も俺は正直、掌握しているとは言い難い状態だ。これにルビー軍が加わって、更に軍には不満分子も出ている事だろう。
軍に対する弟、ブーチンの影響は大きい。
俺よりも弟の方を推す軍人が多いのは、認めたくはないが事実である。
『ブラッキーなんか、特にそうだよな』
表向きには俺に従ってくれてはいるが、実際、心中で何を考えているのかは分からないと言って良い。フリード星でそれなりの信頼を築けた可能性もあるけど、こっちが一方的にそう思っているだけなのかも知れないから、思い込みは厳禁だ。
今の所、俺の信頼出来る味方はガンダルとズリル、ヨナメ配下のシャーマン部隊程度なのだ。
いっそ、軍の中に『グレンダイザー』原作に倣ってベガ親衛隊とか創設してしまおうかとも考えている。
まぁ。それはそれとして……。
「ツイン・テール。君をこの遺跡調査の為に雇いたいんだけど」
俺は切り出した。
性格に問題はあるが付き合ってみて、こいつが有能な学者だってのは分かったからである。
「四六時中拘束されるのは御免だね」
続けて「それに安月給じゃ働かないぞ。テイルも煩いだろうしな」と拒絶したが、ならば拘束せずに、高給で雇えば良い訳だなと俺は結論づけて、再度勧誘する。
「俺は風来坊だぞ。突然、ふらっと何処かへ行って連絡が付かなくなっても恨むなよ」
「調査か何かで必要なら、それでいい。ああ、それから報酬は歩合制だ。固定給で不在分を払う余地は今のベガ星にはないからね」
美少女に見える男の娘が「ふん」と鼻を鳴らす。
「気に入らないと、とっとと辞めるぞ」
「構わないさ。だが、やるからには途中で仕事は放り出さずに、ちゃんとこなして欲しい」
俺は、そこにだけは念を押した。
〈続く〉
渋々ながらツインの登用に成功。
でも、果たしても彼が使えるかは、乞うご期待!