今のベガに、なかなかふさわしい歌詞ですね。
そんなこんなで調査と建造は進んで行き、襲撃事件から三ヶ月が過ぎようとしていた。
襲撃犯の黒幕は予想が可能なのだけど、尻尾はなかなか掴めなかった。
全く、先手、先手を打って証拠を隠滅してくれる。
但し、このお陰で軍内部でのブーチン派と目される人物は大体把握が出来た。
「ゴーマン中尉か」
モニターに映ったスチルに映し出された男を見て呟く。
「後はバレンドス中佐です。他に数名おりますが余り影響力はなさそうです」
「ブラッキーは?」
俺は髪を掻き上げながら頬杖を付くと気怠げに質問した。
ガンダルは「意外ですが…」と前置きして、「ブラッキー准将は白でした。もっとも、まだ野心を出しておらぬ可能性もありますが、今の所は中立です」と続ける。
「何処かで聞いた名前だな」
と独り言。
まぁ、ゴーマンやバレンドスは『グレンダイザー』にも出てくる敵キャラだ。確かベガ大王の親衛隊に所属していた筈で、デューク・フリードにとってかなりの強敵だった記憶がある。
特にバレンドスは、グレートマジンガーを奪って大暴れした男だしな。
「とにかく、こいつらは弟寄りなのか」
「殿下より、ブーチン王子がルビー星を治めるべきだと公言しておりますからな」
行政管理の増大で補佐官を大幅に増やさないとならないが、今の所、ルビー星にガンダル。ベガ星にズリルを置いてそれぞれの任に当たらせている。
ガンダルをルビー星担当にしたのは、新参者のズリルにルビー星を任せるのは重いと判断したからである。
もっとも、ガンダルも田舎惑星だったベガ星から、いきなり規模が数倍のルビー星に回されてひーこらしているらしい。今日、俺か訪れたのはその陣中見舞いも兼ねている。
「軍の再編成の方は進んでいるのか?」
「テロンナ姫様も協力もあり、少しずつですが進展しております」
まだ、正式には移管前でルビー星は姉上の領地であるからね。
今、これがベガ星の行政府に統合される為の下準備を行っている最中で、軍の指揮系統再編も含め、現場とすり合わせている所なんだけど、思いの外、ルビー星側の反発が多くて手間取っている。
「しかし、素直に言う事を聞いてはくれません」
「馬鹿にされてるんだな」
まぁ、向こうから見たらベガ星の田舎者の下に行かされるって空気が強いんだろう。
分からなくもないけど、ここは素直に折れろよと思う。
「姉様の協力か。確かにあの一件は大きかった」
「鷹部隊ですな。しかし、姫様が〝ファルコ〟を良く手放しましたな」
鷹部隊、通称を〝ファルコ〟と言う、それは姉様の親衛隊だ。
ルビー軍でも精鋭揃いであり、規模は小さいが姉の危機を何度も救っているので有名だ。
「象徴でもあった精鋭部隊をぼくの指揮下に入れる事で、ルビー全軍に指揮権がぼくへ移ったのを知らしめる目的があったと見ているよ」
「ああ、成る程」
この前、ミニフォーに乗って奮戦してくれたアラーノ中尉も元鷹部隊だ。
この精鋭を上手く使って新生ベガ軍を早く整備したい所だが、反発はまだまだ多そうだ。
バレンドスやゴーマンみたいな軍の中堅に、反逆の意志がありそうな奴らが残っている限り、地盤固めを盤石にするのは難しいからだ。
「で、バレンドスとかはどうする気だ。ズリル?」
「出世コースから外すのも検討しましたが、派閥が大きすぎるので厄介なのです」
バレンドスはある機動連隊の司令官だった。
指揮下の部隊数も多く、ルビー軍でも権限はかなり大きい。
こーゆー奴の扱いを間違えると、不満の火が埋め火の様に延々と燻り続け、ある時ぱっと炎上するのが厄介なのである。
「冤罪をでっち上げるのも何だしな」
経歴や実績だのを取り寄せて検討して見たが、非の打ち所は少なくともなく、汚職とか不正に手を染めても居ないから、冤罪でもでっち上げて攻撃するしか手はなさそうだが、無論、やる気はないよ。
前例が出来てしまうと、「ああ、ベガ軍ではこの様な手を使って相手を粛正しても構わないんだ」と部下達が勝手に判断して、次々と同じ方法を踏襲する奴が出る。
で、行き過ぎたそれを取り締まろうにも「ダブスタだ。トップがやってるのを真似して何故悪い」と開き直られるから、後々面倒になる。
人事とかは、出来る限り正攻法で対処した方がいい。
「会ってみるか…」
「バレンドス中佐にですか?」
俺は頷く。
とにかく面識も無いのにどうこうするよりは、一回、本人を見てから判断した方が良いと思う。
折角、ルビー星くんだりまでやって来ているのだからね。
ズリルは渋っていたが、「では護衛を付けましょう」との条件で了承し、インターホンで外に連絡を取る。
ハツメやテイルが居るから不必要だと感じるのだが、ズリル曰く「正規軍相手では、軍人の方が舐められない」のだそうで、特に階級が物を言うらしい。
ややあって、三人の軍人が現れた。
一人はお馴染みのアラーノ中尉だが、残る二人の男女は新顔だ。
「バンダー中尉であります!」
「同じく、ハーラ少尉です」
バンダーはがっしりした男。ハーラはやや小柄だが、筋肉質の体育会系をした女だった。
どちらもまだ若い。
「殿下の護衛に就かせて頂きます」
アラーノが代表としてそう述べると、三人は一斉に敬礼した。
〈続く〉
一週間ぶりの更新です。
さて、ルビー軍に対してベガの統制は取れるのか。