ベガ大王ですが、何か?   作:ないしのかみ

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バレンドスは、ほぼ『グレンダイザー』の頃と姿は一緒です。
階級は一応、中佐にしてみました。少佐では低すぎるし、大佐ではまだ貫禄がない頃だろとしての措置です。

ちなみに新キャラ、ゴルヒ・フォックはドイツ練習帆船の名。



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 ルビー軍の軍事基地は立派だった。

 少なくとも荒野の真ん中に基地施設がでーんと構えてる田舎っぽい場所じゃ無くて、近隣に都市があるって点ではベガ軍の物とは大違いだ。

 第一印象として『これなら基地の連中の士気は上がりそうだな』だった。

 

 ベガ軍の軍事基地にだって付近に町があるが、これ程の都会じゃないからだ。

 非番になったら、街に繰り出して騒ぐのが将兵にとって何よりの娯楽。ここだったら、少なくとも遊ぶ場所には苦労すまい。

 それから考えりゃ、『グレンダイザー』のスカルムーン師団なんか最悪だろう。

 娯楽施設なんか何も無い。科学忍者五人衆と戦い、地球を三度にわたって狙った世界の悪魔のヒマラヤ基地みたいに劣悪な環境だ。

 あそこと違って月面だから、娯楽として円盤獣で近隣の登山客やスキーヤーを威かす事も出来ないしな。

 まぁ、画面に出なかっただけで慰安婦なんかが居たのかもしれないけどね。

 

 あとは施設も多い。

 基本的には似た様な物だけど、規模がでかいし、近隣に軍事メーカーがあるせいで環境も整っている。

 

「エンジンが壊れたら直ぐに修理が出来そうだな」

 

 隣の軍需工場から調達は容易そうだから。

 ベガ軍の場合、備蓄している予備部品のストックが尽きたらそれまでだ。

 軍事用の部品というのは特殊で尽きても代替は容易ではないが、ベガ星の場合他星からの輸入品なので、再注文しても時間が掛かる。

 ルビー星の場合、隣の製造工場で楽に調達が出来る利点がある。これは大きい。

 

 ミニフォーの機関部が民生品なのもこう言う理由だ。

 部品の入手をなるべく容易にして、かつ安価に上げたい辺境星の苦労が根底にあるからである。

 

「やはり都会か…」

「殿下、何を?」

 

 護衛をしてくれるハーラ少尉が尋ねて来るが、俺は「独り言だよ」とだけ答える。

 俺の車列は仰々しい。

 暗殺事件後に対する反省からなんだろうけど、先導のサイドカーにリムジン前後の戦車。更に兵員輸送車まで連ねて歩くのは趣味じゃないなぁ。

 基地の門衛も目を丸くしていたぞ。

 ガンダルの苦労も分かるけどね。

 車列の中に刺客が居ないか厳重に審査して、人員を鷹部隊に厳選するくらいだからね。

 

「ベガ殿下に敬礼!」

 

 車列が軍司令部前に停車すると、儀仗兵の群れが待ち構えていて一斉に敬礼をしてくれる。

 おまけに楽隊まで用意してくれたらしく、吹奏楽でルビー軍の軍歌『輝け、宇宙の宝石ルビー』まで演奏してくれる。こう言う大袈裟なのは趣味じゃないのだけど、仕方ない。

 

「殿下。これは……」

「言うな、ハツメ。理には叶っている」

 

 建物内に入って外部の目が無くなった所で、俺は何かを言いたそうな侍女の言葉を封じた。

 ここはルビー星であって、俺の統治下の星なのだから、現地であるルビーの曲が流れるのは不自然じゃないが、あからさまな挑発だ。

 なんで俺を、ベガ王子を迎入れる時の曲がベガ星では無く、ルビー星の曲なんだ?

 

『バレンドスの采配か…』

 

 こいつは一筋縄では行きそうもないな。

 司令部に真っ直ぐ通されると、そこには整った顔の偉丈夫が待っていた。

 

「ルビー第一機動連隊長、バレンドス中佐であります」

「ベガだ」

 

 最初は通り一遍の自己紹介からである。

 司令部内には他に幕僚達と士官が詰めていた。女性の割合が多いのはバレンドスの趣味か?

 会見場所が司令官室では無く司令部なのは、奴が考えた用心の為だろう。いざと言う時、個人ではなく、味方を侍らさないと安心出来ない心理だ。

 ま、いきなり暗殺されるという用心も分からなくはない。俺の護衛は向こうでも名の知れた精鋭ばかりなのだから。

 

「視察と伺いましたが…」

「ああ」

 

 俺はじっとバレンドスの顔を注視しながら、「護衛が多いのは勘弁してくれ。ガンダルやズリルが煩いんでね」と続けた。

 

「暗殺未遂事件ですか?」

「中佐の所にも噂は届いていたか、流石だな。機密情報だったはずなのだが…」

 

 ざわっと周囲の空気が変わる。

 カマを掛けたのだが、どうやら引っかかった様だ。

 

「殿下は中佐を首謀者として疑っているんですか!」

「やめろ、ゴルヒ!」

 

 そう喚いたのは白髪頭の若い女士官。それを制するのはバレンドス中佐である。

 

「君は?」

「あたいは第一機動旅団宣伝中隊、ゴルヒ・フォック少尉だってーの!」

 

 どことなく馬面(うまづら)な少尉が答える。

 宣伝中隊って言うと、広報とか宣撫工作とかする裏方部署だな。言葉遣いは蓮っ葉な感じだが、顔だけ見ると端正な少女だ。宣伝担当なのも頷ける。

 

「下がれ、少尉。仮にも相手は王族だぞ。それに貴様に発言を許してはおらん」

 

 おいっ、仮にもかよ!

 

「えー、だってぇ」

「だってもクソもあるか。礼儀知らずのお前が発言すると俺の立場が悪くなる。ジロマ、ワスカ!」

 

 少尉はなおも不満そうであったが、中佐の言葉と共にいつの間にか左右に現れた女性兵に腕を拘束され、じたばた腕を振り回して「わっ、何をするんだよ」や「畜生、離せぇ」とか喚きながら、あっという間に退場させられてしまった。

 

「な、なんだったのでしょう。今のは?」

 

 ハツメの疑問に苦笑しながら、俺は「さあ、ね。でもなかなか、上官思いじゃないか」と呟く。

 

「いえ……お見苦しい所を見せて申し訳ありません」

 

 バレンドスの謝罪もあったが、俺は続けて、単刀直入に「君がその首謀者との疑いは確かにある」と明言した。

 隠し立てするよりも、堂々と言った方が効果があると見ての話だ。

 無論、勝算があっての話である。ここで下手に手出しをしてきたら、それこそ即座に処罰出来るし、これからサボタージュの気配を見せたら、それを理由に解任だって可能になるとの目算だ。

 

「お疑いですか?」

「忠誠の方向性が間違っていないかと、疑わしき点はあるな」

 

 続けて「君はぼくより、それを弟の方に向けてはいないか?」と問い質す。

 

「個人的な不満点はあります。しかし、王族に刃を向ける程、腐ってはおりません」

「君は恐らく、外征軍へ行きたいのだろう」

 

 俺はそう問い詰めた。

 

 

〈続く〉




ちなみに、現在のブラッキーもまだ准将です。
まあ『グレンダイザー』のブラッキーなら、劇中でゴーマン大尉如きに地位を奪われそうになっているから、下手すると尉官。良くて少佐程度の階級だろうと思われます(ホワイター少尉よりは上らしいから、中尉かも?)。
でも『宇宙円盤大戦争』版だと、彼は明らかに大物だからね。


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