ベガ大王ですが、何か?   作:ないしのかみ

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ミニスカでジョギング王子(笑)。

ちなみに戦艦一隻に負けた大帝星はマゼラン星雲。
フランスの複葉機みたいな名の帝国は蠍座にありますよ。
この世界にはありませんけどね。
でも『宇宙の技師テッカンマン』と戦う、悪の宇宙ガス会社「悪党公団ワルガスター」とかは、もしかしたら存在したりして(笑)。


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 俺は自己鍛錬を続けていた。

 根本的にこの弱い身体を改善したいが、こればっかりは一朝一夕に行かないのがもどかしい。

 軽くジョギングするだけで息が上がる。

 呼吸器系が弱く、塵や埃の舞う環境では咳が止まらない。

 それに俺はアルビノ体質みたいだ。瞳こそ赤くは無いが、異様に肌が白いのは単に室内ばっかりにいるってのが原因ではあるまい。

 

「ふうっ」

 

 公邸の中庭で汗を拭う。

 紫外線に弱いので、余り外に出ていたら肌に良くないのだが、これまでのお姫様と称される生活を続ける訳には行かないのだ。

 俺はヤーバンの王子として天下を取らねばならない。

 

 そもそも、俺がベガ星連合軍を立ち上げるのは理由がある。

 ヤーバンの歴史を辿ってみたら、その先がどう見ても袋小路であるのを気が付いてしまったからだ。

 我がヤーバン星は宇宙に勢力を広げつつある大帝国だ。

 しかし、その実情はどうか?

 

 侵略に次ぐ侵略。

 宇宙の劣った蛮族達を教化し、ヤーバンの名の下に統一して平和をもたらす。

 どっかの宇宙戦艦一隻に負けた大帝星の総統や、フランスの複葉機みたいな名をした、角のある皇帝が治める帝国が言ってたお題目そっくりだね。

 これが国是なんだよ。

 

「実際は負の連鎖なんだよね」

 

 その国是がヤーバンを縛っている。

 俺は戦争なんかしたくない。

 どうしても戦う必要のある戦以外、百害あって一利無しだからだ。

 

 宇宙間戦争に勝利した。

 しかし、支配下に置いた星を経営しなければならない。

 住民を全てを奴隷化してこき使えとか、とんでもない短絡的な考えをする奴も居るかも知れない。だけど、奴隷にしたら富を吸い上げる効率は確実に落ちるのだ。

 

 基本、奴隷にした人民は反抗的だ。

 無論、生殺奪与はヤーバンが握っているから、彼らは表向きには従うだろう。

 でも裏でサボタージュを起こしたり、酷い時には反乱だって起きる。

 それに奴隷だって管理する人間が必要な事を忘れては困る。

 牛馬の如く苦役を与えて使い潰すイメージもあるだろうけど、冗談ではない。奴隷は富を生み出す財産だから、やたらと殺したりするのはNGだからね。

 

 ならば結局、奴隷ではなく、その星に傀儡政権を建てるか、植民地的な属領にして宣撫工作の上、ヤーバンの領民として育てて行く方が効率が良い。 

 でも、やはり経営には資本と人材を注ぎ込まねばならない。

 勝った側は、負けた側の面倒を見なければ、富は自然に湧いて出て来ないんだ。

 

 え? 面倒臭いから陽子爆弾とかで住民を全滅させるだって。

 ああ、廃墟からは何も得られないよ。

 動物も植物も育たない不毛の土地から、どうやって食料を得るんだい。インフラだって一から再建しなきゃならないんだからね。

 既存のインフラを利用するからこそ、効率良く富が生み出されるんだ。

 それに〝教化〟する相手を殺したら本末転倒だろ。

 

 まぁ、属領や保護国化したら、奴隷化植民地よりは注ぎ込む力は減るし、反乱に備える軍備なんかも減少するだろうけど、やはり、膨大な資本と人材が消費されるのには変わりない。

 さて、困った事に資本は有限だ。注ぎ込むと不足する。

 足りない分を補う為に別の星系を侵略して富を。

 更に足りなくなった分を求めて、別の星系を攻めて……の繰り返しをヤーバンは続けている。

 これじゃ、自転車操業だ。

 しかも、何時か破綻する……ね。

 

 しかし、我が国にはこれを勇気を持って止められる指導者が存在しないのだ。

 何故か?

 宇宙の全てを平定する国是のせいだ。

 うちの国民は血の気が多く、この国是を聖なる物として熱狂して受け入れている。

 うん、宗教的と言っても良い程にね。

 

「下手に大王が、今日から戦争止める。とか言ったら国民が黙っちゃいない」

 

 まず、軍が許さないだろう。そして貴族共もだ。

 いつの間にか大王は退位されて、新しい大王が帝位に就いたなんてのも珍しくない。

 実際、数代前の大王は、こうして蟄居閉門されて亡くなっているのだから。

 

「だかにらこそ既存勢力の影響を受けない、新たな力が要るんだ」

 

 独り言を呟くと、俺は乱れた息を整えた。

 大丈夫。もう、走れると判断して、俺は華奢な足を踏み出した。

 ひらひらとミニスカートが舞うが、もう気にしない事にした。だって、何処捜したって、ああ言う裾の短い服しかないんだもん。

 

 ベガ星。

 この中央から軽んじられている田舎惑星を中心に、俺は破滅を回避すべく、あのベガ星連合軍を作るのだ。

 

 

〈続く〉




ベガの服はテロンナ姫の見立てです。
着せ替え人形的に遊ばれていたみたいですね。
殆ど女の子みたいなデザインの服ばかりですが、俺と融合前のベガは「姉上が選んでくれたのだから」と喜んで、特に何も感じていませんでした。
ベガと融合した俺も、ベガに影響されたのか、女子っぽいミニスカでも構わないかと意識を変化しているようです。

その容姿から、ベガを王子と呼ばず、姫と陰口を叩く者も存在します。
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