こいつらに関して詳しく知りたいなら、活動報告の『ベガ大王ですが、何か? 55を投稿しました』も参照して下さい。
さて、ベガの影武者とは?
俺の力量を試す気か、バレンドス。
喰えない奴だけど、これは逆にチャンスだな。
奴に認められる男になれば、自然とバレンドスの勢力が丸々、この手に転がり込むって訳か。美味しいとも言えるな。
「テイル」
俺は秘書役の侍女長を呼んで、例の停戦会議の日程を聞き出す。
「マルク星の停戦会議は三日後ですが……まさか」
「ああ、出席する旨を伝えてくれ」
侍女長は猛反対する。曰く「何で敵の罠へ嵌まりに行くのか」と。
まぁ、普通はそうだよな。暗殺の危険があるのに虎口へ飛び込むのは馬鹿だろう。
「敢えて罠へ乗ってやるんだよ。その上で敵の正体を確かめてやる」
「せめて、影武者か何かを立てるのは駄目ですか?」
ま、そう来るだろうな。でも「ぼくの代わりに、影武者でも居るのかい?」と尋ねてみる。
が、意外な事に「はい」との答えが。
「え……」
ちょっ、それどう言う意味だ!?
だが、テイルはロール状になったブロンドのポニーテールを揺らしながら、それを肯定するかの様に大きく頷いた。
「当然です。貴方は王子なのですよ」
「聞いてない」
「当たり前です。知らせる必要がありませんでしたしね」
側で聞いている馬づ……、いやゴルヒが「おおっ!」と感嘆するのに対して、アラーノ中尉やハツメは特に反応を示さない。
まさか?
「君達も知っていたのか、中尉」
「お役目ですから当然です」
続けて「正確には誰なのかは知りません。しかし、姫様、テロンナ姫との護衛時にも影武者は居りました」と表情も変えずに言ってのけた。
「ゴルヒ・フォック少尉。当たり前だがこれは機密事項に当たる。口外したら命は無い者と思え!」
「りょーかい。あたしも軍人だ。その程度の事は理解してるよ」
アラーノの言に答える少尉は砕けた口調だが、それでもぴしっと敬礼した。
残念な頭の出来だけど、こうして見る限り、軍人だなと判る見事さだな。
「影武者の件は後で尋ねよう。ぼくは会議へ出席する」
「言い出すと聞きませんね。殿下は」
「まだ、両代表団へ送った部下からは連絡は無いのか。中尉」
諦め顔のテイルを横目に、俺は無茶だが問うてみた。
まだ、数時間と立ってない時点で調査中なんだろうとは思うけど、それでも情報が少しでも欲しかったからだ。
「残念ながら、バンダー、ハーラ両名からの連絡はまだです」
しかし、アラーノは当然ながら首を振る。
「仕方ないな。ゴルヒ少尉。君の知る限りの情報を話して欲しい」
俺は質問先を変えた。
馬面の女性は渋々といった調子で話し出した。
「奴らは悪党公団、ワルガスダーと名乗っているらしいね」
「なんで公団なんだ?」
「さぁ。あたいにもさっぱり。連中を捕まえて聞いてくれ」
知らないらしい。
だが、次の発言は俺を驚愕させるには充分だった。
「ルビー軍の中に裏切り者が居るだと?」
絶句するアラーノ中尉。馬面は「ああ、連中の手先になってる奴がね。あの方があたいを派遣した理由の一つでもある」と肯定する。
つまり『さぁ、危機が起こったぞ。王子の手でこの件を上手く解決してみろ。それがお前の力量を見定める判断材料になる』と言う意味か。バレンドスは俺の手腕を高みの見物という訳だ。
無論、奴も独自に動いているだろう。
もし俺の手に負えなくなった場合、最悪バレンドスの手でこの事件を解決する手段は講じているに違いない。
だが、そうしてしまったら俺の負けだ。ベガ王子は無能者としてバレンドスに舐められ、一生、格下扱いを受けてしまうだろう。
「それが誰だか調べて対処するのは、あたいではなく、殿下の仕事。
ただ、マルク紛争の裏に繋がってる奴らから推測すれば、案外、簡単に割れるんじゃないのかい」
「殿下。ならば、傭兵派遣会社と手を組んでいるとも考えられますね」
テイルに言われるまでもない。
傭兵覇権会社の大半がブーチン領内の企業と言う事は、それだけ利権に関わる闇が奴らの思惑に沿って動いていると言う事である。
だが、弟がこの件を直接津指揮をする様な事はすまい。
奴には奴の矜持があり、こんな瑣事に関して自分から動く様な暇人ではないからだ。
しかし、ブーチンに媚びを売りたい奴は山ほど居る。また、主の思惑を察して、勝手に動く部下だって多い。
これらを利用して間接的に自分の手を汚さず、目的を達成するのが奴のやり方だ。
仮に追求されても『奴らが勝手にやった事だ』として言い逃れ、責任問題にはならないのを計算している。
「ルビー星にも奴に媚びを売りたい奴は居るな」
「少し前までは、バレンドス中佐がその筆頭だと思われてましたね」
テイルの言葉に馬面が憤るが、アラーノ中尉に宥められている。
聞いてると「あの方が、バレンドス中佐だとばれているぞ」「エッ、嘘ぉ」「お前、俺がバレンドス中佐がと尋ねた時、それを受けて受け答えしていたろ。一発でばればれだ」「うわぁ、ゴルヒちゃん一生の不覚ーっ」とか、ギャグだか漫才だか判らないやりとりをしている。
「確か、もう一人居たな。そう……ゴーマン大尉だ」
今までど忘れしていたが、確かに最初に話題に上がった男である。
バレンドスが余りにも大物だったので、その影に隠れて霞んでしまっていたと言い換えるべきか。記憶を頼りにすると、確か『グレンダイザー』本編では名前の通り傲慢だが、戦士としてはデューク・フリードを追い詰めた腕を持った優秀な士官だった筈である。
「エリート風を吹かしすぎて、周囲に反感を買っていたが……」
「よくご存じですね。その通りですよ」
俺の独り言にアラーノ中尉が反応した。
良く見ると、隣のゴルヒ・フォックの馬面もうんうんと頷いている。
聞くと、やはり有能なのであるが士官仲間の間では評価が二分されているらしい。
「武闘派には受けてるよ。と言うか派閥があって、うちの様な中立派や中尉の鷹部隊みたいな穏健派には受けが悪い」
とゴルヒ。え、バレンドスの部隊って中立だったのか。
話を聞いてみると弱腰の姉に忠誠を誓っている時点で、ゴーマンら武闘派からは〝腰抜け〟との陰口が叩かれているらしい。
「本来、ルビー軍にも外征部隊があったからね」
「知ってる。第8外征師団だろう。今はブーチンに移管されている」
ルビーナ王妃。俺の母オリエが亡くなって、姉がルビーナとして星を継いだ時に煩雑な指揮を要する外征部隊を切り離し、弟のブーチン星へ所属が変更になったのである。
姉上は内政に専念しなければならなかったから、金食い虫で手間の掛かる外征師団をそっくり弟へ譲ったのだ。
バレンドスやゴーマンは、その時、ルビー星に残された人材であるが、不満が残った。
ゴーマン達武闘派にはヤーバン軍本来の蛮勇さを発揮して、外征軍で暴れ回りたいとの欲望が強すぎたのである。恐らく、鬱屈した気持ちが溜まっているのだろう。
「それが更に軟弱なぼくの統治下になる事に、不満を爆発させた口かな」
自分で言うのも何だけど、ベガ王子の世間での評判は悪い。
まず、姉や弟ら比べて殆ど知名度がない。
これは病弱で余り表へ出なかった事も関係しているから、融合後の俺は男の娘作戦で世間にアピールしている。
悪評や蔑称だった〝姫王子〟を逆に武器にして『ベガ王子は存在しますよ』と宣伝する戦略である。全くの無名よりは、存在感を出した方が良いからだ。
無論、武勇を旨とする軍部には受けは余り良くない事は知っている。が、逆に考えるのだ。
ヤーバンには〝武姫〟と言う存在が居たではないか。それの男の娘版を目指せば、このマイナスイメージをプラスへと転換させる事が可能なのではないか?
いや、まだ、実績が無いからペーパープランに過ぎないけどな。
「記録映像もあるよ。殿下」
その時、ゴルヒの声が響いた。
俺は「ほぅ、見てみたいね」と呟くと、思わず腰を上げたのだった。
〈続く〉
ゴーマン大尉がようやく出て参ります。
本人自身は未登場だけどね。
しかし、今回も約3,100文字……。
う、うーむ。