今回の作業用BGMは、『聖戦士ダンバイン』OSTから「戦火の爪あと」です。
オーラマシンが次々に出撃する戦闘場面に良く使われてましたね。
奇妙なフォルムを持つ黄色い円盤が現れる。
機体下部にある尻尾の様な突起物から、ビームが放たれて艦隊が被弾する。
中には当たり所が悪かったのか、轟沈する艦も出る。
「第3外征師団の記録、だったな」
狭い控え室から場所を移し、大型のスクリーンに映像を投影している。
「はい、二年前の記録ですね」
テイルが補足する。バレンドス中佐の情報が本当だとすれば、こいつがワルガスダーの宇宙艇と言う事になる。
今、見ているビデオは軍のライブラリからバレンドスがコピーしてきた奴で、普通は機密扱いで表には出ない記録だ。
見るのは初めてだけど、それは余りその謎の敵とやらに関心が無かったからだ。
俺の身分ならば、このレベルの機密はノープログレムで閲覧可能である。だから関心を持って丹念に機密データをほじくり出せば見付かったんだろうけど、他に問題山積みでそれをする気が無かったからな。
噂レベルで謎の敵と戦っているとの話は出ているが、それを映した記録は余りで回っていないのは、軍の威信低下を慮って公表されないからだ。
まぁ、見る限りヤーバン軍がやられるシーンだらけなので、馬鹿正直に表へ出せば、軍に対する士気や威信の面でも問題になりそうだ。
「やり方が見事だな」
「一撃離脱に徹していますね」
テイルが言う様に攻撃はヒットアンドアウェイである。
つまり、急襲したら短時間に持てる限りの火力を叩き込み、追い討ちの様な反復攻撃もせず、脇目も振らずにとっとと逃走している。
「こっちが反撃する間も与えずにとんずらか」
突然現れて、こちらの準備が整わないまま攻撃し、一方的に被害を与えて行く。
無論、応戦しようと思った時には奴らは既に宇宙の彼方だ。
「通り魔みたいですね」
先程からこんな映像が延々と続いているが、襲われる場所は違えどもパターンは皆同じだ。
「言い得て妙だな」
とにかく、この謎の敵に各地のヤーバン軍が翻弄されているのは事実である。だが、何の目的があるのか、それが分からない点が対策を難しくしている。
今まで黙っていたゴルヒが「厄介なのはさ……」と、口を開く。
曰く、普通、この手の襲撃には目的がある。陽動。通商破壊。主力部隊への痛撃等だが、奴らの行動は全く不可解なのだ。
「出現箇所や時間がランダムなんだ。まるで無差別、無目的みたいにさ」
例えば、ある星系での艦隊戦闘中に横合いから突然現れて、こちらの艦を痛打した後に去る。
当然、敵対している敵艦隊との関係を疑い、再び介入してくる時に備え、部隊が護衛を厚くして警戒していても、そこには現れず、全く無関係な場所に出現して、やはり通り魔的に襲って来る。
「後で調べたら、敵対艦隊も全く知らない無関係の第三者だった。相手も未知の存在としてワルガスダーを調査していたって事実が判明したんだよ」
とは言うものの、ヤーバン軍がワルガスダーに警戒して、宇宙の全部隊に警戒態勢を敷くなんてのは物理的に不可能だ。
戦闘中の前線部隊ならまだしも、後方の安全圏で展開中の部隊に対して、常に『臨戦態勢を取っていろ』なんて命令は無茶すぎる。
「バレンドスは良く、奴らの正体を掴めたな?」
俺は資料を持って来たゴルヒに問う。
映像は別の事件に切り替わっている。日付を信用するなら、こちらは一年前の記録で、地上の補給基地らしき施設がワルガスダーに叩かれている光景だ。
「中佐だけの力じゃないよ。中佐の情報ネットワークが広かったからさ」
各地の将校連と連絡を取り、地道に集めたデータを総合した結果なのだそうだ。
映像は先程とは別タイプの青いドーム型宇宙船がビームを放っている所だった。こちらの方がさっきの黄色よりも大型で、戦闘艇と言うよりも汎用型の強襲揚陸艇と言った風情である。
「この映像を注目してくれ。これは奴らが反復攻撃をする所を捉えた珍しいショットだ」
「殆ど反撃される心配の無い相手には、徹底的な襲撃を行うのか」
するすると四方へ突き出した艦首のハッチが開いて、宇宙船の中から例のタイプJとか言う異星人……、宇宙忍者とか言われてたよな、が飛び出して来る。
身一つでかなりの高度も物ともせず、分隊規模の宇宙忍者が着地する。
まるで空挺降下だな。
忍者と称されるだけはある身体能力だ。歩きながら胸のラウンデルからビームを発射しつつ、施設周辺を焼き払っている。
「この場所は?」
「殿下の星、ベガ星だよ」
え、知らないぞ。こんな場所とか事件は?
いや、一年前と言うと、まだ〝俺〟が〝ぼく〟だった頃だな。名ばかり領主で本当にベッドの住人だったから、知らなくても無理は無いか。
驚愕している間にも映像は進み、放置された重機類を焼き払いつつ、宇宙忍者達はプレハブ小屋然とした建物へと進む。
そこには直前に数名の男達が、攻撃を避ける様に逃げ込んでいるのが映っていた。
奴らはそれを取り囲む様に包囲し、宇宙忍者が入口の扉におもむろに手を掛けた。
「き、貴様らは誰だ!」
カメラが替わり、現場監督みたいなおっさんが勇気を奮って問い質す。
あ、さっきから違和感あったんだけど、この施設は軍用ではなく民間施設なんだな。ベガトロン鉱の試掘現場か何かだ。となるとこの映像は鉱山会社の監視カメラか?
「ワレワレハ、悪党公団〝ワルガスダー〟ダ」
歪んだ声で自己紹介する間にも、入口からは単眼の不気味な奴らが続々と入ってくる。
「あ……悪党。おいっ、自分から悪党を名乗るのか!」
目を白黒させながら、赤紫の異星人共に突っ込むおっさん。
しかし、宇宙忍者は手足を振るわせながら、近くの机に鞭状の触手を叩き付けた。
凄い膂力(りょりょく)である。「どかん」と大きな音がして簡易テーブルが真っ二つに粉砕されたのを見て、生き残りの人々が震え上がる。
宇宙忍者は「質問ニ答エヨ」と、相変わらずおかしな口調でこちらの問いを無視する。
「ここで名前が判明したんだよ。もっとも中佐曰く、〝馬鹿正直に名乗ってるとは思えん〟そうだけどね」
うん、そりゃそうだ。〝悪党公団〟って名前からして嘘臭いしな。
普通、本質がどんなに悪辣な連中でも自分から悪党とは名乗らない。でも、俺たちも悪党公団はともかく〝ワルガスダー〟と呼ばせて貰おう。新しく名前考えるのって面倒だしな。
「ここからは少し編集してある。画面を分割して外部カメラと内部カメラを同時に映している」
ゴルヒの言う通り、左右に画面が割れた。
右が宇宙忍者とおっさん達。左が外部から施設全体を映す映像に切り替わるが、画面下に小さく映る時計から、両者の時刻は連動して同じ時間を指している。
「あ。奥から何かが走って来ます」
ハツメの指摘に、外部カメラの隅でゴミの様に見えていた点か何かが、土煙を上げてこちらへ猛スピードで接近してくるのを確認する。
左画面は定点観測カメラなのだろう。出来れば別視点からの映像が見たいが、始終、一点から映した物しか提供されていない。
ほぼ同時に、宇宙忍者は「発掘兵器ヲ、ワタセ!」と命令した。
〈続く〉
ベガの影武者の話は、話の構成上、後回しになりました。
まずは〝ワルガスダー〟の事を知る方が先ですしね。