作者自身も「案外早く出たな」とびっくりです。
伏線が修正受けて、やや変更になったせいですが。
そして、遺跡から発掘された超兵器〝ヤーバン熱線ミサイル〟とは?
近づいてくる乗り物のシルエットが次第に露わとなる。
今時、珍しい三輪バイク(トライク)だ。車両の殆どがフロッサーみたいな浮遊型になってしまった昨今、こんなレトロな車両は逆に珍しいな。
「こいつに注目!」
ゴルヒが声を上げ、トライクに乗る人物を指して「バトルホークだろ」と宣言する。
自信満々、自慢げな表情だ。
だが、俺やハツメ、それ所か、テイルもアラーノ中尉も微妙な顔をしている。
「……いや、別人だ」
声を絞り出す。
確かに似ていた。全身を赤い変なスーツで身を固め、マスクを被ったその姿は、本人と直接に会った事が無い、良く知らない奴から見たら、本人か同類だと思うだろう。
「エッ、こいつは物凄く強いんだよ」
力説するゴルヒに、アラーノ中尉が指摘する。
「バトルホークは斧が武器だ。こいつはそれを持っていない」
赤い衣装を着たマスクマンは急停車してトライクを飛び降りると、外に立っていた宇宙忍者に襲いかかる。
彼の指摘した通り、こいつは素手で武器を持っていないし、頭のマスクもバトルホークよりも派手だ。耳の部分に炎を象った黄色の装飾があるし、何より額に青く輝く宝玉が物凄く目立つ。
「まさか……これも古代の……」
テイルが呻いた。
飛び降りたマスクマンは宇宙忍者のビームを躱し、ラリアットの要領で二人をいっぺんに地面へと引き摺り倒す。
あ、抱え上げて地面に打ち下ろしたぞ。パワーボムだ。
斧で全てをぶった斬るバトルホークの豪快さとは別の、正統派(ストロングスタイル)のプロレスラーみたいな戦い方だな。
やられた宇宙忍者が悲鳴を上げ、そして死体も残さずに消滅して行く。
「あ、中の奴らが気が付いたみたいですよ」
ハツメの言葉通り、右の方の画面でおっさん達を威嚇していたタイプJが外の異変に勘付いた様だ。一人を残した全員が、プレハブ入口の方へと向かう。
だが、外へ出た途端、例の怪人と遭遇してしまう。
ぬっと伸びた手に単眼を持った顔が鷲掴みされ、そのままトマトみたいに握り潰される。
「お世辞抜きに……これは強い」
それを見ていたアラーノ中尉が唸った。ゴルヒは「なっなっ、そうだろ!」と声を上げる。
これはいわゆるアイアンクローって技だな。にしても、とんでもない握力じゃないか。
「ワタセ、発掘兵器ヲ!」
「し、知らん。そんな物が何処にある」
まだプレハブ内部に残る宇宙忍者が、強い調子でおっさんを脅す。
しかし、当の本人達は心当たりがない様だ。
「い……遺跡なら発見しましたが、所長、あれではないでしょうか?」
見るに見かねたのか、横合いから助言する若い職員。
宇宙忍者の緑の単眼が輝いた。「ソレダ!」と叫んだ所へ、外の宇宙忍者を全て片付けたマスクマンか駆け込んで来た。
「クッ!」
「無駄だ。カイザースライサー!」
胸のラウンデル模様から抹茶色のビームが出るが、彼はそれをかいくぐった。
そのまま両腕に仕込まれたフィン状のカッターが一閃し、宇宙忍者の頭が胴体から別れて飛び、ぐらりと巨体が倒れて行く。
あ、素手オンリーかと思ったら、この人武器も使うのね。
「あ、有難う!」
消えて行く異星人の死体を尻目に、何とか命拾いした事務所の者達が感謝を述べるが、マスクマンは無言で皆を見回した後、「異星人に遺跡を渡してはならない」と一言だけ言うと、踵を返して外へ出て行く。
「待って下さい、貴方は?」
「古代アズテクの勇者」
そう言い残すと、彼は自分のトライクへと飛び乗った。
シンメトリーで青色をした敵宇宙船が降下してくる。宇宙忍者共の母艦だ。
それに向かって突進して行くマスクマン。
だが、敵船がビームを斉射した途端、光が大きく広がって唐突に左画面が消えてしまった。
「ここで外部カメラが破壊されたんだよ」
ゴルヒ・フォックの説明。ビームがカメラに直撃してしまったのだろう。
外の戦いの様子は映らないが右画面は生きており、窓辺で鈴なりとなって外を見ている所員達の「凄い」や、「バイクで互角に戦ってるぞ」との声は入ってくる。
やがて、腹に響く鈍い大きな爆発音と共に、所員達が歓声を上げた。どうやら、奴のトライクはワルガスダーの宇宙船に勝ったらしい。
映像はここで、唐突に途切れた。
「この前、暗殺騒動のあった試掘現場の近くですね」
「そうなのか?」
アラーノ中尉は「ええ、やや離れていますが……」と返答した。
ふむ。するとワルガスダーの狙いは俺たちが発掘した光量子エンジンや、例の兵器、えーとなんだっけ?
「ヤーバン熱線ミサイルですね」
尋ねるとテイルが答えたが、あれ?
「ミサイルじゃなかったろ。何等かのエネルギーを放つ砲みたいな形だったぞ」
「お父上……ヤーバン大王から、〝ミサイル〟と命名せよとの命令です」
そのテイルの回答に、俺はとてつもなくきな臭い物をを感じた。
白を黒と言い張るのには理由がある。わざわざ兵器に似ても似つかぬ名称を付けるのも極秘扱いだからだ。日本で言うなら、〝SS金物〟や〝ちび弾〟と言った具合にだ。
ああ〝エロ爆弾〟は正式な秘匿名じゃないぞ。単なる渾名だ。
もしかしてアレは、とてつもないヤバイ兵器だったのか。
「父上が? テイル、この話は後だ」
この話題は危ないと判断して話を切り上げる。そして「ゴルヒ・フォック少尉。この映像だけが軍の記録ではないようだけど」と話を振る。
馬面少尉は顔を上げ、「ああ、こいつは外から中佐へ持ち込まれた物だからね」と告げた。
「部外者から?」
「それも匿名でね。だから最初はやらせかと疑ってたんだけど」
裏付け調査を行った際、事実だと判明したそうだ。
ちなみにここに居た鉱山関係者は「集団幻覚でも見たのだろう」と、会社に相手にされなかったらしい。
物理的な証拠もあったのだが、マスクを被った怪人が異星人相手に大立ち回りをしたという事実を、会社側は認めたくなかったらしく、この記録も破棄処分になった筈だったのだ。
お上に報告すると、調査とか入って色々面倒になると判断されたのだろう。無かった事にして、とっとと開発したいと言う、企業の本音がだだ漏れだな。
「誰かが、それを拾い上げてバレンドスに届けた訳か」
「そいつは……確か、〝ブラックミスト〟とか名乗ってたな」
その名を聞いた途端、引っかかっていた俺の記憶が呼び覚まされた。
額に輝く宝玉。それは〝アステカの星〟だ。
『今度は〝アステカイザー〟かよ!』
心中で俺は呟いた。そう、あの怪人は『プロレスの星アステカイザー』の主人公だ。
確か『バトルホーク』と並び、『アステカイザー』は数少ないダイナミック・プロ系の特撮ヒーローである。
で〝ブラックミスト〟と言うのは、アステカイザーと敵対している悪党共の名だった筈だ。
額に輝くアステカの星が原作よりも光り輝いているので、今ひとつ、彼だと言うイメージが結びつかなかったのだ。
〈続く〉
おまけ、各種兵器解説。
SS金物:旧日本海軍の特殊潜航艇『海龍』の秘匿名称。
ちび弾:旧日本陸軍の毒ガス手榴弾の秘匿名称。
エロ爆弾:旧日本陸軍の無線誘導空対地ミサイル『イ号一型乙無線誘導弾』の渾名。
試験発射後に誘導不能になり、伊東にある温泉宿の風呂場(女湯)に飛び込んで爆発したので、この名が付いた。温泉宿の従業員が死亡。旅館も全焼。合掌。
ヤーバン熱線ミサイル:『宇宙円盤大戦争』に登場。
命中すればガッタイガーも一発だと豪語するヤーバン軍の必殺兵器。
いや、当時、どう見ても光線砲に見えるのに、なんで「ミサイルって名なんだろう?」と疑問に思った自分が居るんですが(笑)。