内政はまだ先……。まずは足場固めに忙しい。
俺はガンダルの病床を見舞っていた。
病室はレトロな俺の居室と違って(何せ、扉だって手動だしな)、近代的な造りであるが、その分だけ無機質だ。
余りにも殺風景だから、花束なんかを持参して飾り付けてやったら、ガンダルがおいおい泣いて喜んでいるの。いや、大袈裟なんだけどねぇ。
「半身が反逆者であった私に……」
「もう良い。君は僕に忠誠を尽くしてくれるなら、今までの不正を水に流そう」
ガンダルは感涙している。
そこで俺は話題を変えてみた。「ガンダル。ぼくの夢に付き合わないか?」と問うてみたのだ。
「夢……ですと?」
「君は今のヤーバンをどう思う?」
「偉大なる大王の威光が宇宙全体に広がり、あまねく世界を支配せんと陽のが昇る如く、星々を平らげ、偉大な帝国として君臨する……」
通り一遍のお題目だな。
俺は嘆息して「その大帝国を、ぼくが掌握する為にはどうしたら良いと思うか?」と尋ねた。
「それは…」
「世辞は良い」
寝台から身を起こしたガンダルは沈黙した。
俺は笑いながら「現状では難しいだろうね」と続け、中央へ打ってでるには実力不足であり、何の後ろ盾も無く、実績の無さから軍部も掌握出来ていない事実を淡々と述べた。
ガンダルは沈黙を続けたが、俺の話が途切れた際に「では……」と口を開く。
「王子はヤーバン中央へ返り咲くお気持ちがあるのですな?」
「ああ。だが、その中心はヤーバンでは無い」
俺は一旦、言葉を切ってから「それはこのベガ星だ」と告げる。
ヤーバン本星での権力掌握に関しても当然工作は続けるが、既存の勢力を墜とす事は足場が無いに等しい俺では限界がある。
それよりも、まずは自分が自由に振る舞える環境にあるベガ星の力を強め、勢力を拡大しようとの目論見である。
「この田舎惑星をですか?」
「潜在的なポテンシャルは高いぞ。ヤーバン中央は産出される放射線物質、ベガトロン鉱石にしか興味は無いみたいだけどね」
「はぁ」
「それに、今のぼくにはこの星しか無い。此処を足がかりにするより、方法が無いんだよ。
まぁ、いきなり父上に制圧軍の指揮権を寄越せってねじ込んで、軍団……いや、師団の指揮官から始めるって手もあるけど、それは殆ど却下されそうだろ」
大まかにヤーバン軍の編成は外征部隊である制圧軍と、属領を防衛する地方軍に大別される。
外征軍。まぁ、侵略専門部隊だね、は軍の花形で、未だヤーバン大王の威光に触れていない〝蛮族の住む未開な惑星〟をヤーバンに組み込む為に派遣される暴力装置だ。
対して地方軍は、田舎の軍隊と馬鹿にされるが、要するに制圧した星系の防衛部隊だ。近隣にヤーバン軍に対抗する勢力が少なくなった昨今、規模は余り大きくないのが多い。
一応、ベガ星の地方軍は俺を最高司令官としており、指揮権も持っているが、外征軍に比較すれば内容は貧弱極まりない。
「いきなり外征軍の指揮権。それは確かに……」
「だろ。実績も何も無い王子が、単に我が儘三昧に要求したと侮られるし、実際の指揮権も現場の将官が渡さないだろうね」
「ブーチン様の二の舞を踏みたくないと、お考えですな」
俺は頷いた。
弟は外征軍の指揮権を要求し、父であるヤーバン大王は経験を積ませる為にそれを認めたのであるが、余り上手く行っていない。
各戦線では勝利を重ねてはいるが、実際は優秀な幕僚達によって、何とかボロが出ない程度の実力でしか無く、事実上は将軍の玩具ではないかと俺は勘ぐっている程だ。
「前線のエピソードは伝わってくるが、道化だよ。あれは」
乾坤一擲、敵旗艦に突入し、白兵戦で無類の力を発揮したとか、キャブ付きで紹介された事があるが、敵の大将の首を掲げて笑ってるのは単なる野蛮人だろう。
大体、宇宙で火薬砲ぶっ放すスペースオペラじゃあるまいし、艦隊戦なら砲撃とか艦載機戦で勝負を付けるもんだ。UFOにソロン攻撃するのは氷河戦士だけでお腹一杯だよ。
肝心な艦隊戦はこっちが全滅寸前になって、破れかぶれで敵旗艦に突入して逆転勝利とか、単なる幸運に過ぎないだろ。
ヤーバンは蛮勇に対して高評価するから、国民的には受けが良いんだろうけど、俺だったら更迭するぞ、〝一将成って万骨枯る〟みたいな司令官。
「王子の夢、それは自身が大王へおなりになる事ですな」
「ああ。協力を頼めるかな?」
「不肖、このガンダル。殿下の為に忠義を尽くしたく思います」
うん、取りあえず片腕の一人は確保したぞ。
さて、次は奴だけど、どうやって呼び寄せようかな?
〈続く〉
どうでも良い裏設定。
宇宙で火薬砲ぶっ放すスペースオペラ。
『銀河戦国群雄伝ライ』
宇宙で普通の火薬式大砲を撃ち合い、接舷した敵艦へ移乗戦闘する凄まじい作品。どこのフラーケ族や九鬼水軍だ、おい(笑)。
『銀英伝』のローゼンリッターも真っ青だぞ。
氷河戦士。
『氷河戦士ガイスラッガー』
「ソローン」の掛け声で、UFOにラムアタックをかけて船内内部で暴れ回るサイボーグ達(含む、犬一匹)。
『銀英伝』のオフレッサーだって敵わないぞ(多分)。