作者の趣味で途中、『白獅子仮面』か『快傑ライオン丸』風になってます。
今回の作業用BGMは『宇宙刑事シャイダー』から「青き閃光」です。
渡辺さんの音楽は緊迫感が上手い(ワンパと言う人も居ますが)。格闘シーン書く時には燃えますな。
西瓜割りの西瓜みたいに、真っ赤な血が噴き出して一撃で潰れる頭。
キック一発でくの字型に折れ曲がり、数十メートル離れた壁に激突して息絶える兵士。
その間、トライクは無人のまま真っ直ぐ大使館の正面玄関をぶち破り、ミサイルやビームを発射しながら突き進む。
「きゃっ」
兵達をいとも簡単に虐殺しまくるスプラッタな光景に、テレビクルー達のくぐもった悲鳴が聞こえる。
畜生、犠牲を出さずに丸く収める作戦がパーじゃないか!
「あっ、白馬に乗った怪人が!」
その声と共に本当に白馬に乗った怪人が現れた。
俺は唖然としていた。そいつはバトルホークの赤いタイツだったのである。
白馬は甲高く嘶(いなな)きながら、ジャンプして一足飛びで大使館の高い塀を跳び越えると、バトルホークが二挺のゴッドホークを構えてアステカイザーの前に立ち塞がる。
「止めろ」
バトルホークの制止に、返り血で血塗れのアステカイザーが振り向いた。
マスクを被って居るので表情は分からない筈だが、アステカイザーの表情が鼻で笑った様に思えた。それをバトルホークも感じたのだろう。いきなり馬上から青く輝く斧を振り下ろす。
「むうっ」
ガッと、腕の所にあるブレードフィンで斧を受け止めるアステカイザー。
バトルホークは素早く斧を引き、もう片方の斧を繰り出すが、アステカイザーはくるりと身体を旋回させて事も無げにそれを躱す。
バトルホークは白馬の上から睨み付ける。
二体の古代勇者が睨み合う後ろで、大使館が大爆発を起こした。
爆煙の中から、アステカイザーの愛車、確か『マッハビートル』が無人のまま飛び出して来る。この爆発はトライク搭載の武器が、建物内部で蹂躙しまくった結果なのだろう。
「用は済んだ」
古代アズテクの勇者が呟いてやって来たトライクに飛び乗ると、バトルホークを尻目に高速でその場を離脱するが、当然、バトルホークもそのまま行かせる訳ではない。
「待てっ!」
馬首を翻すと「追うぞ!」と馬に命令して猛然と後を追う。
良く見るとこの白馬、手綱や轡(くつわ)はおろか、鞍や鐙(あぶみ)すら見当たらぬ裸馬だ。バトルホークは良くこんなムスタングを操る事が出来るな。と唸ってしまう。
「今のは……」
「ぼくにも分からないよ」
悪夢の様な数分間だった。俺はハツメの問いに、そう答えるしかなかったんだ。
◆ ◆ ◆
それから約一時間。現場は酷い有様だった。
死亡者の数は百名を超えていただろう。
ワルガスダーによって操られた者との銃撃戦も無論あるが、それよりもアステカイザーの手によって殺された者の方が多かった。
「バンダー少尉」
オストマルク側の調査へ行っていた士官が暗い顔をして、俺の前に立っていた。
ウエストマルク側と違い、その調査方法が直接的に接触したのではなく、外部からの監視と言う方法だったせいか、オストマルクの方はワルガスダーは正体を表さなかった様だ。
「ハーラ少尉はやり方を間違えました」
手っ取り早く調査しようとしたのだろう。
代表団の一人を強引に連れ去ろうとした為、宇宙忍者や流星魔人達の介入を呼んだ。
「……済みません。報告は纏めてありますので、軍病院へ行っても宜しいでしょうか?」
「構わないよ。アラーノ中尉は……」
俺は上官の行方を尋ねる。すると「先に軍病院へ行っている筈です」との答えが返って来た。
部隊の被害は凄い事になっているからな。
「ぼくも一緒に行こう。テイルは……」
「侍女長は席を外しています。呼び戻しましょうか」
ハツメが答える。そう言えば、ヤーバン熱線ミサイルの件で資料を纏めさせているんだったと思い当たる。
流石にアルクトス基地には資料は無いから、ルビー宮へ行っているんだったな。
「いや、連絡だけしてくれれば良い」
俺たちは出発した。
負傷者達が収容されたのは郊外のアルクトス基地ではなく、事件現場に近い軍病院だ。
半時間程で俺たちが到着すると、そこには意外な人物が居た。
「!……バレンドス中佐」
彼は俺を認めると臣下の礼を取った。
周りは患者が溢れ、戦場並みの慌ただしさだ。
「君がここに来るとは……」
「同じルビー軍人ですからな。ああ、それとゴルヒの奴が救援を要請したのですよ」
見ると第一機動旅団の車両が多い。俺もアレクトス基地の医療班を動員してきたが、バレンドスも同じ様に軍医達を動員してくれた様だ。
俺は素直に「助かる。ありがとう」と礼を述べる。
「ワルガスダーの奴らだけじゃないですな。あの怪人、あれは危険な存在だ」
俺は古代アズテクの勇者。そしてアステカ星出身らしい事を告げ「ぼくはあれを〝アステカイザー〟とのコードネームで呼んでいるよ」と伝えた。
序列的には本来ならいけない事なのだが、廊下を肩を並べて歩くのを許す。
「君はアステカイザーの事をどう分析する?」
質問を振る。
バレンドスは目を細め「古代の超人ですな。こちらでも分析を進めていますが……。ワルガスダーと対立しているのは知っていましたが、まさか、あんな兇行をする存在とは……」と呟く。
「そう言えば……、バトルホークという存在も居ましたな」
知っているのか。いや、ゴルヒも知っていたから、上司である彼が知っているから当たり前か。
俺はちらとバレンドスの方に視線を走らせる。
「何か知ってるのかい?」
「大した事は……。ただ、我が軍の兵達を救ってくれた事には感謝です」
「そうだな」
会話が途切れるが、情報を出し惜しみしている感がある。
やはり、情報収集能力を含めて俺を試しているのだろうと思う。
やがて、先頭を歩くバンダー少尉が一室に入る。集中治療室だ。
「……兄貴」
バンダー少尉の言葉が萎む。
そこには床に座り込み、肩を落としたアラーノ中尉が居た。
彼の前にはごろっと転がされている灰色の袋。そして中尉を後ろから抱き抱える形で、馬面、もといゴルヒ・フォック少尉が背中から手を回している。
「ゴルヒ、何があった?」
バレンドス中佐の隣を兵が、何かを担いで慌ただしく走り抜け行くが、それは死体袋だった。
アラーノ中尉の前に、灰色のそれが新たに並べられる。
「……中佐ど……の」
バレンドスに問われてゴルヒがこちらを向くが、顔が涙でぐしゃぐしゃで姿がボロボロなので驚く。服は着ているのだけど、破けた衣装を強引に形にした様な物で殆ど残骸だ。
それを隠す為か、アラーノ中尉の物らしき上着を羽織っている。
「ハーラ少尉が……。少尉が亡くなられて」
「ジロマ、ワスカ! ゴルヒの服を整えてやれ」
バレンドスは左右の従兵を呼ぶ。
白髪と茶髪の女性士官がゴルヒの手を取って部屋から連れ出そうとするが、少尉は嫌々とばかりに激しく首を振り、更に中尉の背中をきつく抱え込んで「駄目なんだよ。彼は……ゴは、あたしが支えてやらなきゃ」とか口走っている。
「アラーノ中尉……」
それでも連れ出されて行く馬面を見送って、俺は中尉に声を掛ける。
のろのろとアラーノ中尉が顔を上げると、乾いた声で「殿下、ハーラ少尉以下、部下13名が戦死しました」とだけ報告する。そして……。
「俺は……ワルガスダーも、あの怪人も許さない!」
それは決して大声ではなかったが、アラーノの言葉には呪詛にも似た響きが込められていた。
◆ ◆ ◆
〈続く〉
遂に特撮ヒーロー同士が激突です。
これにワルガスダー、そしてブラックミストの思惑も重なり、物語は混沌として来るのです。
IFに過ぎないけど、もしビッグホークとクイーンホークが居たら、バトルホークはアステカイザーを圧倒出来たかも知れません。