ベガ大王ですが、何か?   作:ないしのかみ

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今回の作業用BGMは『ホルスト・惑星』から「ジュピター」です。
昔、遙か昔、『銀河鉄道999』のラジオドラマに使われていて印象的だった思い出があったりします。大きくなってから曲名を知ったのですが、壮大で宇宙を感じる良い曲ですね。
ちなみに『寿』(「じゅ」じゃなくて「ことぶき」だよ)はこれのコピーって、ジュピター違いですね(笑)。


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「ベガ王子は帰国の途に就かれました」

 

 ルビー星の宇宙港でナレーションと共に爽やかな笑顔で手を振るベガ王子。これから専用機に乗り込んで、ベガ星へと出発するシーンだ。

 上空には母艦が待っている。荷役対象が少数な場合、大型宇宙船を直接惑星上へ降ろすより、こうしてシャトルを乗り継いだ方が経済的だからだ。

 ふーん、なかなかの美少女ぶりじゃないか。と、乱れる画面を一瞥しつつ、俺は自己満足に浸っている。

 

「王子は見捨てられたのか?」

「嫌な事を言うね」

 

 俺はガンに抗議する。ヒラメ顔のシシは「済まぬ」と、意外とあっさりと謝罪するから、それ以上、特には責めなかった。

 惑星間ニュースは所詮、ヤーバンのプロパガンダ放送に過ぎないんだけど、今、受信可能なのはこいつしかない。

 で、何か情報をと探った途端、先程のライブ映像が飛び込んで来た訳だ。

 

「こいつは影武者……なんだろうな」

 

 多分、そうだろうと思う。

 俺も良くは知らないけど、ベガの影武者が存在するのはルビー星で耳にした事がある。テイルやアラーノ中尉が言っていたなぁ、とぼんやりと思い出す。

 アステカイザー事件のお陰で、詳しく問う暇も無かったんだけどね。

 こいつらに襲われなかったら、帰国の途上で報告を受けて対応していた筈なんだ。

 

「まぁ、惑星領主が行方不明です。とか馬鹿正直には発表出来ないだろ?」

「それもそうか」

 

 ガンはあっさり納得する。

 

「それよりも、今はこの状況から如何に生き延びるかだよ」

 

 俺は嘆息しつつ、『ガンダルやズリル。それにテイル辺りは今頃、てんてこ舞いな筈だな』と、多少の罪悪感を胸に秘めながら状況を整理する。

 貨客船はハードランディングに何とか成功した。

 誘爆しなかったのは僥倖と言えるだろう。が、もう二度と宇宙を航行する事は叶わない。

 推進器の損傷が酷すぎた。推力が足りないし、下手に動かしたら爆発しかねない。かと言って、素人が修理するに技術も設備もある訳がない。

 

「もし放射能漏れが起こってたら、事だしな」

 

 機関部の被弾は、熱核ロケットの何処かが損傷している可能性が高いのだ。

 幸い、船体の方に放射能漏れはなさそうだが、かといって機関室に行ってみる気は起きない。宇宙服には放射能防護機能はあるが(宇宙空間は放射線が一杯だからな)、それでも高濃度な核汚染に耐えられるレベルかと言えば、そうじゃない。

 

「船を捨てるのでござるか?」

 

 大男、バク・ラリアードが尋ねて来る。

 壮年のこの男がこの三人のリーダー格の様だったが、俺は未だ、この三人の関係性を把握してはいない。ヒラメ顔の若いガン。それより若いチンピラ、おっと、ちび助のマグと違い、今まで見る限りはすぐに激昂する他の二人の押さえ役に見える。と言うか、余り饒舌じゃないんだけどな。

 そこに居るだけで存在感がある。と言うか。

 

「詳しくは調べなきゃ分からないけど、捨てるのは早すぎるよ」

 

 俺はさっきから船体各部にチェックを入れていた。

 結果はまだ帰って来ないが、現在の情報では幾つかの船体に損傷はあれど、気密の七割近くは保たれている。

 酷いのは後部船体一帯。機関室とその周囲だ。

 

「反重力エンジンは生きている。もっとも元々補助だから大した能力は無い」

 

 重力の有る惑星表面で活動する為に反重力エンジンを併用し、後は熱核ロケットで強引に飛び回るのがこの手の船だ。反重力エンジン単独では大気圏突破出来るレベルじゃないが、船体を浮かせる事は可能だ。

 

「補助推進器が生きてりゃ、のろのろだけど飛行も出来る」

「それは重畳」

「但し、大した高度は稼げないし、速度も出ないぞ」

 

 俺は警告した。ぬか喜びさせる訳ではないが、全てはチェックが済んで、可能ならばと言う前提だから、最悪、船を捨てる事も考えて準備をする様にと告げる。

 

「さて……ぼくの扱いについてだが、一時休戦としたいんだけど?」

「ふむ」

 

 バクが考え込む。ガンはその判断を見守るつもりなのか口出しはしない。

 いつもはぎゃんぎゃんと騒ぐ、ちび……いや、マグは今、ブリッジには居ない。

 

「……よかろう。捕虜としてではなく、客人として扱おう」

「そもそも君達の思い違いなんだけどな」

 

 そう言えばDr.ヴォルガが言っていたが、オストマルク人は単細胞で激情家が多いらしい。

 外圧から開国はしたものの、異星文化に対する反発は大きく、また、国内政治の不満を外へ向けるべく『悪い事の原因は全て外国である』と煽る勢力がいて、様々な問題が多い。

 慣習が独特で、他民族のそれを理解しようとしないのも問題であるらしい。

 要は〝自分達が正しく、他が間違っているんだ〟って奴だな。

 

 外交使節団はその中でも比較的まともなメンバーであったが、ワルガスダーによって乗っ取られて壊滅してしまった。

 そう言えば、Dr.ヴォルガはどうなったんだろう。と思いを馳せる。放り出される事は無かろうと思うんだが……。

 

「宇宙船を捨てる準備だけはしておくべきか?」

「ああ。宇宙服、サバイバルキットとかの準備。特に酸素ボンベは幾らあっても無駄にはならないからな」

 

 ガンの申し出に答える。そう、テックレベルの低い宇宙服ってのは厄介だ。

 ヤーバン標準の宇宙服なら、酸素循環装置が付いている。再生される酸素はお世辞にも美味いとは言えないが、それでも触媒の尽きる数年間は、無限に酸素を供給し続けるが、テックレベルの低い宇宙服にはそんな技術は使われていないのだ。

 だから酸素ボンベが必要になる。

 便宜上、ボンベと称しているが実際はカプセル状の物で、ベルトのホルダーに差し込む。

 単一乾電池サイズ一個に付き、大体12時間程度は持つので、21世紀の地球から見たら恐ろしく効率が良い代物であるが、それでも有限なのは変わりない。

 

「そう言えば、マグは?」

「船室で準備している筈だ」

「くれぐれも、後部には近づけるなよ」

 

 俺は警告する。被弾の影響でベガトロン放射線による汚染が有り得るからだ。

 後部や機関室のセンサー系が半分いかれているのが痛い。けど、ガイガーカウンターを携えて調べに行く気も起こらない。よって機関室は完全閉鎖。

 遠隔操作で動かす事は出来るが、もし核動力がやられてたら重放射線防護服でも着ない限り(無論、そんな物は船内には無い)、機関室に入って修理も試みられないのである。

 念の為、気密も破れている可能性考えて、後部の区画は立ち入り禁止にしたのだ。

 

「!」

 

 突然、ブザーが鳴る。バクが「何事か?」と問う。

 船内の異常を知らせる警告だ。素早くチェックすると気密が破れた警報である。

 

「空気漏れか?」

「ああ、中部船体の部屋に亀裂か何かが入っていたらしい」

 

 幸い、傷は浅そうだが、中部区画自体を閉鎖する必要が出てきた。

 俺が部屋の扉を破った事から分かるが、この宇宙船の気密は部屋毎ではない。

 普通は個室にエアロックがあって閉鎖可能なのだが、この手の廉価な船は大まかな区画毎に気密処理が纏められており、気密が破られると区画そのものを閉鎖しなければならない。

 直ぐに全部の空気が抜けて真空になる訳はないが、それでも時間の問題だ。

 

「拙い。マグの奴が中部に居るな」 

「中部に亀裂。直ちに前部に移れ!」

 

 俺は船内放送を入れてがなり立てる。だが返事はない。

 

「おいっ!」

「何をやってるんだ」

 

 仕方ない。連れて来るかと席を立つ。

 自動で区画閉鎖になるまでの危険レベルには、未だ行っていないが、何故、返事をしないのだろう。阿呆でも聞こえる位の大声で警告したんだからな。

 

「まさか、何かあったのか?」

 

 嫌な予感がする。ワルガスダーの流星魔人でもやって来たのか、と最悪の事態を想定する。

 流星魔人はテレポートするのだ。宇宙忍者よりも始末に悪いアサシンである。

 俺は中部区画を仕切るエアロックをくぐると、部屋の扉を片っ端から開けて行く。

 

「この音は……」

 

 ある部屋の扉を開けた時、ただならぬ轟音が耳に飛び込んで来た。

 

 

〈続く〉 




テイルやズリル達の出番がねぇ(笑)。
影武者登場です。まぁ、「ベガ王子がさらわれました」と馬鹿正直に報道は出来ないわな。

しかし、今回も三千文字オーバーか……。
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